こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカの不動産権は総じて
Free Hold Estate(不動産権の自由保持)
と呼ばれ、その下に大きく分けて
Fee Simple Estate(不動産完全所有権)
Life Estate(生涯不動産権)
の二種類があること、そして昨日はLife Estate(生涯不動産権)の中でも
Conventional Life Estate(意思的生涯不動産権)
として分類される
Pur Autre Vie(生涯不動産権譲渡)
Remainder and Reversion(残余権と復帰権)
について深堀してお伝えさせて頂きました。
本日はLife Estate(生涯不動産権)のもう一つの概念であるLegal Life Estate( 法的生涯不動産権)について引き続きお伝えさせて頂きます。
Legal Life Estate(法的生涯不動産権)
Legal Life Estate(法的生涯不動産権)は
Pur Autre Vie(生涯不動産権譲渡)
Remainder and Reversion(残余権と復帰権)
といった不動産所有者自身が制定した権利ではなく州法により定められる不動産権であり、ある特定の出来事が発生した際に自動的に法的効力が施行されることになります。
アメリカ国内のいくつかの州では
- Dower(寡婦産 )
- Curtesy(寡夫産)
- Homestead(家産)
これら3つをLegal Life Estate(法的生涯不動産権)として定めています。
Dower(寡婦産)とCurtesy(寡夫産)
Dower(寡婦産)とは不動産権をもつ配偶者が無くなった後で不動産権を持っていなかった配偶者が受諾できる相続権の中でも、亡夫の遺産のうち未亡人の受け継ぐ分のことをいいます。
これに対し、Curtesy(寡夫産)とは不動産権をもつ配偶者が無くなった後で不動産権を持っていなかった配偶者が受諾できる相続権の中でも、亡妻の遺産のうち未亡人の受け継ぐ分のことです。
(州によってはこの呼び方が全く逆になります)
それらの州法では典型的にDower(寡婦産)とCurtesy(寡夫産)の定義を
「不動産権を持たない配偶者は相手方の死亡時に、仮にその相手方の遺書内で相続権を指名されていなかったとしても不動産権の半分あるいは三分の一を相続できる。」
と定めています。
この場合、対象不動産の権利書は生き残った配偶者へのLife Estate(生涯不動産権)としての法的効力がなくなるまではその権利書に純粋な譲渡権がないことになり(生涯不動産権が引っ付いている)、生き残る側の配偶者は常にこの不動産から発生する利益を享受できるわけです。
逆に言えば、生き残る側の配偶者が相続で得られるべき対価(通常はお金)を獲得したことが証明された場合には、この生き残った配偶者は不動産権を手放す手続きができることになります。
例えば不動産権を持つ夫が他界して遺書に不動産相続人を子供たちのみに指名していた場合、もし残された妻が不動産権を所有していなかったとしても遺書に関わらず不動産権の半分あるいは三分の一は相続されることになるのです。
子供たちがその不動産の所有権を完全に所有して家を売却して整理したい、という場合は妻に相応の対価を渡して不動産権を放棄してもらう必要があることになります。
(再婚のケースにありがちなパターン)
ちなみに、Community property(コミュニティ プロパティー:夫婦共有財産)を採用している州ではこのDower(寡婦産)とCurtesy(寡夫産)のルールは適用されていません。
(カリフォルニア州とテキサス州は共にコミュニティ プロパティー法を採用する州です)
Homestead(家産)
Homestead(家産)は家族が暮らす主な家として使われる不動産に適用されるLegal Life Estate(法的生涯不動産権)です。
その効力として入居者の入居期間中は「大抵の債権者からの借金取り立てに対しその入居する家は差し押さえにはできない」ルールとなります。例えばクレジットカードで何万ドルも借金があるAさんがその借金返済が滞る場合でも、クレジットカード会社としてはその取り立て対象としてAさんが暮らす家を差し押さえることはできません。
またこれに派生するHomestead exemption law(家産免除法)を採用する州では、家族が住居として占有する不動産の土地の一部や物件の価値をクレジットカード使用額やローン借用額といった借金に充てることも許されているのです。ただし、不動産に課せられる固定資産税は免除対象とはなりません。
そして通常はHomestead(家産)を成立させるためには一家の長(独身でも可)が家族が主な住居として占有する不動産の所有者あるいは賃貸人であるという事実があれば十分ですが、いくつかの州ではHomestead(家産)を成立させるためには自分が暮らすあるいは賃貸している物件に対してHomestead(家産)を登録することが義務付けられています。また、Homestead(家産)は一家に対し一つの物件のみがその対象となります。
結局のところこのHomestead(家産)権は何の役に立つのでしょうか?前述のように債権者に対し差し押さえの対象にならないというのは共通ですが、多くの州では物件が差し押さえらえて競売がかけられたような時にHomestead exemption(家産免除)がほとんど適用できない一方で、いくつかの州では家産全体が守られる(派生する権利を損なわない)場合もあるのです。
これらの州では例えば競売が行われた際に住宅ローンや税金未納等のいかなる家に関する借金もその売却額から支払われ、次に家族はHomestead exemption(家産免除)に基づいた額を売却額から受け取ることが出来、そして最後に残された売却額は住宅関連以外の借金に充てる、ということも可能になります。
まとめ
アメリカで不動産投資をされる方のほとんどは相続権についてはさほど気にする必要はないと思いますが、アメリカで暮らして家を所有される方には大いに関係が出てきます。
とりわけ子孫もアメリカで暮らし続けるとなれば子孫の間で余計な争いが起こらないような配慮も必要になってきますから、可能であれば弁護士に相談の上しっかりと遺書を残されるのが得策です。
Legal Life Estate(法的生涯不動産権)が定めるように不動産所有者本人の遺書の力を超えるものもありそこは州法に従うしかないのですが、大切な資産を遺恨なく子孫に引き継いでいくためにもある程度の知識を備え、弁護士とよく相談して将来に備えておきましょう。
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