こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
マルチファミリー(複数世帯住宅)物件を見定める為の5つのステップ
- 家賃収入の事実確認
- 支出の事実確認
- 純収益の算出
- キャップレートと評価額の算出
- ローン支払いと利益(あるいは自己資本配当率)の計算
についてお伝えしています。
最初の今日は家賃収入の事実確認についてです。
家賃収入を事実確認してみる
不動産投資活動においてあなたの最も大切な収入は家賃収入です。
このシリーズでお伝えしているマルチファミリー(複数世帯住宅)物件の場合は駐車場収入やコインランドリー収入など、家賃以外からも収入を期待できる一面はありますが、それでも依然として家賃が主な収入になることは変わりありません。
その為、いかなる不動産投資物件であってもこの家賃収入に関しては最も重要視して精査する必要があります。
ここで言う精査とは単に売主から伝えられる家賃収入を鵜呑みにするのではなく、売主がプロフォーマ(仮送り状、見積り)もしくは口頭で現在の家賃収入を伝えてきたとしても、その数字が本当かどうかの「事実確認が必要」という意味です。
ハッキリ言ってしまえば、家主のことは信用はしても信頼してはいけないのです。
仮に自分の住居用物件であれば、その物件をローンを組んで購入する場合は銀行側はローンの担保としてあなたの資産を確認しますが、このような不動産投資目的の賃貸物件であれば、ローンを組んで購入する場合は銀行側が確認するのはあなた個人の資産ではなく、物件そのものから入るであろう将来の家賃収入を担保として見ます。
そのため、あなた自身がその家賃収入を事前に調べていなかったとしても、銀行に融資を依頼する以上はその審査過程で必ず銀行側に「家賃収入見込みの資料をご用意ください」と言われることになりますので、いずれにせよ自分で家賃収入情報は入手する必要があります。
そして何よりも、この家賃収入という変数こそ、今あなたが不動産投資対象としているマルチファミリー(複数世帯住宅)物件に対してこれ以上時間を費やすべきか否かを教えてくれるものなのです。
ここで話を先に進める前に、家賃収入に関するいくつかの語彙を整理しておきます。
どのような賃貸物件にも言えることですが、およそ家賃収入関しては実質収入(Actual income)、実質見込み収入(Actual potential imcome)、そして潜在見込み収入(Future potential income)の3種類があります。
実質収入(Actual income)
その物件が過去12ヵ月に生み出した実際の収入合計
実質見込み収入(Actual potential imcome)
その物件が過去12ヵ月に
- 全戸が100%埋まっていた場合
- 家賃以外も含む全ての収入口から100%収入のあった場合
の合計
潜在見込み収入(Future potential income)
今日の賃貸市場を加味した時に
- 全戸が100%埋まると仮定した場合
- 家賃以外も含む全ての収入口から100%収入があると仮定した場合
の合計
基本的に、ほとんどの不動産投資用の物件所有者は「潜在見込み収入(Future potential income)」の数字をもって物件を売ろうとしてくるものです。
けれど実際にはあなたが物件を購入する際の金額は「実質収入(Actual income)」を基にするべき。
実質収入(Actual income)こそが、対象とする物件がこれまで実際に上げてきた収入であり、そしてあなたが最も凝視するべき数字。そしてこの実質収入(Actual income)での物件購入は「卸売(Wholesale:ホールセール)」とも呼べるものなのです。
反対に、もしこれが売主の言い値どおり「潜在見込み収入(Future potential income)」で物件を購入してしまったら、それは「小売価格(Retail:リテール)」での物件購入ともいえるもの。
卸値で買うのと小売価格で買うのとどちらがいいかと言えば、それは考えるまでもなく卸値の方ですから、投資家としては何としてもこの小売価格での物件購入は避けなくてはなりません。
つまり、不動産投資における「正しい買い物」とは「卸値での買い物」なのです。
もしあなたが物件を卸値で購入することが出来れば、当然ながら購入価格が安いわけですから融資を受ける金額も少なくなり、かつその物件からのリターン収益を最大限のものにすることが出来るはずなのです。
この、不動産投資における「卸値」と「小売価格」の違いをきちんと理解した上で、売主やブローカーから受け取る数字をよく吟味する必要があります。
つまり、冒頭にお伝えしたように受け取った数字を決して鵜呑みにするのではなく、「事実確認」することが極めて大切なのです。
通常は不動産投資物件を検討する際に、あなたが目にするのはとても綺麗にデザインされた魅力的な宣伝パンフレット。
そこには現状の物件を最高に綺麗に見せる写真がズラリと並べられており、下には期待できる収入(前述の潜在見込み収入の数字のはず)がズラリと並べられ、パッと見で飛びついて買いたい衝動にかられるもの。
ただし、そこであなたは一歩立ち止まって
「でも、この数字は本当だろうか?」
と疑問を持つべきなのです。
単にそこにある数字を信じてはいけません。事実、かなりの確率でパンフレットに書かれている数字は(潜在的には可能性ある範囲で)誇張された数字であるはずなのです。
。。。
ここまで読んで、
「佐藤は疑い深い人なんだな」
と思われる前に、とあるセールスパンフレットの下に実際に書かれてあった但し書きの原文を抜粋し、その下に日本語訳を付けてみます。
This brokerage company makes no warranty or representation about the content of this brochure. it is your responsibility to independently confirm its accuracy and competencies. Any projections, opinions, assumptions or estimates used are for example only and do not represent the current or future performance of the property.
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この仲介会社はこのパンフレット内容を保証もしくは代表するものではありません。その内容の正確さと適正さを単独で確認することはあなたの責任となります。いかなる計画、意見、仮定、もしくは見積もりはあくまで参考例であり、物件の現在もしくは将来のパフォーマンスを表すものではありません。
いかがでしょうか。
この免責事項は暗に
「このパンフレットに記載されている全ての数字の確認を自己責任で行ってくださいね。」
と明確に伝えており、投資家としてパンフレットに記載されている数字の事実確認を怠るのであれば、単位それは「自己責任ですよ」ということを明言しているわけです。
明日に続けます。
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