こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
太古の昔から、人は集落を形成して暮らしてきました。
人々が集まってコミュニティーを成し、共存することで生命の存続を図ってきたのです。
ところが人が集まるコミュニティーにしても、大昔と現代社会では明らかな違いがあります。
その一つは、日常で耳に聞こえてくる「騒音」のレベルが全く違うということ。
大昔にはあり得なかった騒音が、現代では都会であるほど日常的に聞こえてきますね。
その為、一般的には「騒音公害」として知られるレベルになると人が集まるコミュニティーの中では問題となってきます。
とはいえ、そもそも「騒音公害」とは何を意味するのでしょうか?
外で聞こえる消防車のサイレン
犬の吼え声
公道から聞こえてくる車の音
私(佐藤)は鈍感な方なのでこのどれも全く気になりませんが、人によってはたまに聞こえる消防車のサイレン程度はよいとしても、ご近所の吼え続ける犬の声には我慢できないという人もいるかもしれません。
いずれにせよ、この個人の尺度そのものが騒音の尺度となり得るでしょうし、現代社会では人の集まるコミュニティーで暮らす以上は完全に騒音から離れることはまず不可能です。
そして、この騒音というものは物件の価値に影響してくるものなのでしょうか。
今日はこの点を深堀してみましょう。
そもそも騒音公害とは?
騒音公害の定義としては、いくつかの要素が混ざっています。
基本的にはあなた自身が「うるさいなー」と思うレベルの音量が公害なのですが、社会通念で通じる騒音レベルはあなたのみならず、一般の人々が誰でも「うるさいなー」と感じる音量です。
そして公害レベルを測る基準はそのまま、「どれだけの音量であるか」が一般的な騒音レベルの尺度と考えられています。
例えば、ニューヨーク市のマンハッタンはアメリカの中で最も騒音の激しい街です。
街中を歩いていると、まず車のクラクションが聞こえない時間はないですからね(本当です)。
電車でマンハッタンに入って駅の入り口から外に出た途端にクラクションが聞こえ始め、このクラクションはマンハッタンを出るまで聞こえ続けます。
そして、そんなニューヨーク市には「ニューヨーク市の騒音規定ガイド」というものがあります。
この規定によると、
「いかなる建物の中、あるいは公道から15フィートの距離において10デシベル以上の音量が確認できる場合を騒音とする」
と定義されています。
もっぱら、大都会のニューヨーク市のこの基準は農牧地とは全く違った基準です。
近所の騒音レベルを計ってみる
そこで、デシベルという単位は音量を測るのに役には立ちますが、家の周りの騒音レベルを測定するのにもっと正確な方法があります。
通常、人の心理として自宅で暮らしているときには昼間よりも夕方、或いは夜の音を気にするものです。
すなわち、自分が住宅を購入する際に気をつけたいのは昼間の音もさることながら夕方や夜の音です。
物件を購入した後で「夜はこんなにうるさい場所だったのか。。」と嘆いても後の始末ですから、自分にとって公害といえるレベルでないかを事前に把握しておく必要があります。
実際に住宅購入者の中にも音に対して神経質な方はたくさんいらっしゃいますので、「この家の中で、一日を通してどれくらいの騒音がするのかを知りたい」というご希望がある場合は、滅多に使うことはありませんが「デシベル測量器」をスマホやデスクトップパソコンにつないで、
https://www.noisemeters.com/apps/ldn-calculator.asp
このサイトを使って音を測量します。
ここまでするとスパイになったような気分ですが。。
またここまでせずとも、一般的な騒音レベルであればアメリカ合衆国運輸省が出している「全国運輸騒音マップ」にも騒音レベルの統計が公開されていますので参考になります。
全国運輸騒音マップ
https://maps.bts.dot.gov/arcgis/apps/webappviewer/index.html?id=a303ff5924c9474790464cc0e9d5c9fb
このページを開いた時に色分けがされていますが、
赤 ... 掃除機の音レベル(60~80デシベル)
紫 ... 旧式ケトルの沸騰音レベル(80デシベル以上)
です。
拡大して見てみると、フリーウェイは概ね紫になっていますね。
このサイトを見れば、自分が物件を購入したい地域がどの程度の騒音レベルであるかが一発で分かります。
ちなみにテキサス州ヒューストンの場合は
こんな感じです。
80デシベル以上の紫が確認できる地域は空港の近くです。やはり空港の近くだと、常に騒音が聞こえてきますね。
騒音の物件価格への影響
そこでこれらの騒音が物件価値に影響するかしないかというと、当然ながら影響してきます。
マンハッタンのど真ん中の一等地、ブロードウェイシアター、タイムズスクエアー、市長オフィスがあるような場所では騒音の真っただ中でも半端ない住宅価格ですが、人は通常は静かな立地にある物件を好む為、騒音に囲まれている立地では物件価値が下がるものなのです。
そしてどこの地域の騒音でも自然と物件価格に反映されるということはありませんが、継続的に騒音のする場所では明らかに物件価格に影響することが数字に現れています。
例えば空港の近くにある物件の場合、空港からの騒音がない隣町の同等の物件と比較すると平均で20%も価値が下がる統計があるです。
より細かい統計としては、騒音の影響で売主が物件価格をディスカウントする平均割合は
空港から半径2マイルの範囲 ... 13.2%の根引き
鉄道の横 ... 12.3%の値引き
フリーウェイの横 ... 11.3%の値引き
となっており、また公道からの車が継続的に聞こえる家の場合であれば、1デシベルあたり$34.61のコストがかかる(価格が下がる)という統計が出ています。
結局のところリスティングに掲載されている物件価格は「売主の言い値」であり、実際にいくらで購入するかは売主との交渉になります。
その交渉の結果が最終的な売却額になるわけですが、上記のようにこれらの定期的に騒音がする立地の物件では売主による値引きはほぼ確実に行われており、「騒音の影響で物件価格(価値)が下がる」という結果になっているのです。
かくして、騒音公害は確実に物件価格に影響しますので、あなたが物件を購入する際には希望物件の騒音レベルを前述のサイト上からでも事前によく確認するとよいと思います。
そして現場で騒音レベルを確認したときに
- 感覚的に騒音である
- 数字でも騒音である
ということであれば、まず間違いなく物件価格値引きの交渉カードに使えますから、物件選びの際には騒音レベルも検討事項に含めるようにしましょう。
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