こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日からアメリカで住宅を購入する場合の頭金について、俗に噂される話の本当とウソについてお伝えしています。
アメリカ不動産金融はアメリカ経済の柱の一つです。
それだけにとりわけジョージ・ブッシュ前大統領の時代(2001年~2009年)には不動産取引を優遇する政策が行われ、大いにアメリカ経済を刺激する起爆剤としても活用されていました。
また、初めて住宅を購入する人々が活用できる連邦政府主導のFHAローンなど、1929年の大恐慌後の政策の一旦として1930年代に開始されて以来、現在まで続いています。
このFHAを使えば頭金は3.5%でも可能という優遇ぶりです。
またFHAでなくとも通常のコンベンショナルローン(conventional loan)の条件に見合う収入があれば、20%以下の頭金でも融資は可能と定められています。
ただし20%以下の場合はPMI(Private Mortgage Insurance:プライベート住宅ローン信用保険)と呼ばれる、融資を受ける債務者ではなく融資する債権者に支払われる保険料が発生してしまい、これはLTV(Loan To Value:融資額の割合)が78%以下になるまで支払いが続きますので、注意が必要です。
頭金の本当のウソについて、本日も続けます。
4.頭金は20%以上入れるべきではない
前述のPMIの話に絡みますが、
「PMIがかからない、ギリギリの20%だけ頭金を入れて、それ以上は自己資金を使わない方が賢い」
そんな噂がありますが、これは真実とは程遠いものです。
頭金を無理なく20%以上入れることが可能であれば積極的にそうするべきであり、その理由は2つあります。
金利の交渉が出来る
まず何より、ローン審査を行うのは「人」だという前提を思い出してください。
この場合はローン審査を依頼するローンオフィサーのことですが、ローンオフィサーは何もマニュアルに沿って淡々と仕事をするのみならず、そこには感情を伴う判断も入ってきます。
あなたが融資依頼を判断されるローンオフィサーの立場だったとしたら、
頭金を20%入れる融資申込者
頭金を30%入れる融資申込者
頭金を40%入れる融資申込者
この中の誰により安心感を覚えるでしょうか?
もちろん、頭金が多ければ多いほどローンオフィサーの目には
「この人は大丈夫そうだな」
と映るのです。つまり、頭金が多いほどローンオフィサーに対する融資依頼者の信頼度が高まることになります。
そして、アメリカのいいところは何と言っても「交渉で事が動く」という前提がありますから、
「頭金を○○%入れますから、金利をこれよりも下げてください!」
そんな交渉は可能なのです。
返済額を減らせる
言うまでもありませんが、頭金を少しでも多くすることで融資額が減り、結果として返済額も減ることなります。
返済額が減る要素はもちろん、元金ではなく利息のことです。
例えば$250,000の物件を購入するのに頭金を20%入れた場合と30%入れた場合で比較してみます。
融資額は
頭金20% ... $200,000($250,000 × 80%)
頭金30% ... $175,000($250,000 × 70%)
で、
期間:180ヵ月(15年)、
金利:4.5%
の固定金利で分割償還としましょう。
それぞれの結果を、オンラインのローン自動計算から画面をキャプチャーしてみます。
頭金20%の場合
頭金の30%場合
このように、毎月の支払いに
$191.25($1,529.99 - $1,338.74)
の差が生じ、利息に至っては
$9,424.69($75,397.58 - $65,972.89)
と、日本円にして100万円もの差が出てくるのです。
また前述のとおり、交渉次第で金利は更に安くすることも可能ですから、いよいよ頭金を20%のみ入れる場合とそれ以上入れる場合とでは、大きな差となってきます。
。。。
これらの理由で、資金に余裕があるのなら積極的に20%以上の頭金は入れるべきなのです。
ただし、この辺りの交渉が利いてくる割合は最低でも25%、それ以上に交渉を有利にするのであれば35%は頭金を入れるようにしてください。
その辺りの割合が、交渉が利いてくる分岐点です。
5.頭金すら、ローンを組めばいい
本日の項では頭金についてお伝えさせて頂きましたが、そもそも
「頭金すら他で借用してローンを組めば大丈夫。そうすれば実質ゼロの頭金でローンを組める。」
という噂があります。
残念ながら、これは完全なウソです。
この点は融資側(ローンオフィサー)も厳しく見ており、頭金が自己資金から出ないのであれば「資金力なし(返済能力が疑わしい)」として、審査を通過できないのです。
けれども唯一、頭金が自己資金からでなくとも許される場合があります。
それは資金の出所が「Gift(ギフト:贈り物)」である場合です。
例えば家族や親族からギフトとして資金を頂き、それを頭金に使うことは許されています。
ただしこの場合でも、本当にその頭金がギフトであることを証明する
「この資金は私から○○(融資を受ける債務者)へのギフトであり、後に返済を求めるものではありません」
という類の誓約書を贈与者の署名付きで提出する必要があります。
まとめ
アメリカで住宅購入を検討される方々の為に、あるべき頭金についての本当とウソを5つのポイントに絞ってお伝えさせて頂きました。
「では結局のところ、自分は頭金を何パーセントにするべきか?」
となると、これは
購入する物件の価格
毎年の固定資産税
HOA費(ホームオーナーアソシエーション)
保険料
等の出費を予め計算し、それに対して毎月自分が支払えるローン返済額をよく検討する必要があります。
通常、自分の給与に対するローン返済額の割合は「30%以下が理想」と言われています。
前述の頭金20%の例でいえば、毎月の支払額が$1,529.99ですから、最低でも手取りで$5,100程度の収入が必要ということになります。
ぜひ、参考にしてください。
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