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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日はアメリカ不動産金融のお金の流れについてお伝えさせて頂きました。
モーゲージを組んで物件を購入したいアメリカ国民が各金融機関から融資を受けられる体制を保つ為には
民間金融機関 ↔ ファニー・メイ / フレディマック ↔ 投資家
この関係性は今のアメリカ不動産金融ではなくてはならないものです。
ファニー・メイとフレディマックはもともとアメリカ政府の政策で設立された機関であり、その後に民営化がなされたものの10年前の不動産価格大暴落の混乱の中でアメリア政府がテコ入れをし、現在も政府管轄の下にあります。
アメリカ不動産業界をアメリカ国内の景気刺激策として使いたいアメリカ政府にとっては、ファニー・メイやフレディマックを使って介入する余地を残してあるわけです。
そしてファニー・メイとフレディマックの重要な役割はモーゲージ債権と引き換えに潤沢な資金を民間金融機関に流し続けることだけではありません。
それと同様に、もしくはそれ以上に重要なのは「事実上、アメリカ不動産ローン審査の基準を定める権限をもっていること」です。
どういうことかといえば、民間金融機関としてはモーゲージの融資事業を継続したいのであればファニー・メイやフレディマックにモーゲージ債権を売って、その対価として資金をもらい続けるしかありません。
そしてここがポイントですが、民間金融機関がモーゲージ債権を引き受けてもらう為には「ファニー・メイやフレディマックが定める審査基準を満たしていること」が条件なのです。
これはつまり、全ての民間金融機関はファニー・メイやフレディマック(事実上、アメリカ政府)が定める審査基準を踏襲しなくてはならない、ということです。
審査基準が緩み始めている
もちろんこれ自体は決して悪いことではありません。
民間金融機関の審査基準を一斉に引き締めたり、あるいは緩めたりと融資審査基準をコントロール出来ることは「ローン返済率をコントロール出来る」ことと同義なのです。
つまり、
審査基準が厳しくなる → 高い返済能力を持つ人々しか融資を受けられない
審査基準が甘くなる → 返済能力の低い人々も融資を受けることが出来る
このような関係が出てきます。
そしてこれはそのまま、あの10年前のサブプライム問題を引き起こした根本の原因でもありました。
あの時は審査基準がかなり甘くなっており、通常のプライム基準に満たないはずの人々ですらサブプライム基準として下のランクで審査を通過することが出来たのです。
しかもサブプライムローンでありながらフルローンが可能であったという有様。
そしてサブプライムは変動金利が基本でしたから、各金融機関が一斉に金利を引き上げた後はなし崩し的にサブプライムが総崩れとなり、不動産価格暴落に歯止めがかからなくなったのです。
そこであの時は民営化されていたファニー・メイとフレディマックに政府が直接介入し、混乱を収めようと努めたのでした。
それからは政府主導により審査基準が見直され、サブプライム基準ではまず審査が通らないように引き締めがなされていたのです。
そして近年までこの厳しい審査基準は保たれ、アメリカ不動産市場は当時の水準にまでようやく息を吹き返してきました。
ところがです。。
喉元過ぎればでありませんが、近年この審査基準が再び甘くなり始めているのです。
43%ルールを破ることが状態化
もう少し具体的にいきましょう。
ファニー・メイとフレディマックの審査基準は「Debt-to-Income Ratio(総収入に対する借金の割合)」が基本となっています。
これは「一ヶ月の総収入に対する返済義務のある借金の割合」のことですが、例えば
月の総収入:$6,000
返済義務のある借金総額:$2,000
である場合、
33.3%($2,000 / $6,000)
となります。
そしてここが大切ですが、このDebt-to-Income Ratioは「最大でも43%をMaxとする」というのが通常の基準でした。
例えばFHAローンという政府主導のローンでもこの43%基準が採用されています。
ところがここ近年、この43%ルールを破ることが状態化しているのです。
上記の例でいえば
$2,580($6,000 × 43%)
までが借金返済総額で許された最大合計でした。
この43%が現在は45%〜50%の割合が許されるケースが多発しており、実にアメリカ全体のモーゲージの約30%が43%を超える割合になっています。
そして更に気になるのはそのスピードです。
この43%以上の割合が許されてローン審査を通過した融資案件は、2015年からほぼ倍増しているというのです。
つまり、2015年までは43%を超えるモーゲージが15%程度だったものが、この4年間でほぼ倍増したことになります。
もちろんサブプライムと呼ぶにはやや大げさな水準ではあるものの、それにしてもアメリカ政府主導のはずのファニー・メイやフレディマックの審査基準が甘くなり始めていることは気になります。
「歴史は繰り返す」とはいうものの、まさか10年前の打撃を忘れたわけではないアメリカ政府がなぜ審査基準を甘くし始めているのでしょうか。
実はそこには、「アメリカ不動産価格の上昇が止まらない」ことから派生する「自宅を持てない人々が増えている」という事実に対するアメリカ政府の懸念があります。
審査基準をやや甘くすることで住宅を所有できる人々を増やして、不動産売買を活性化させる狙いがあるのです。
この微妙なさじ加減が必要な具合はどこかFRBの金利政策にも似たものがありますね。
アメリカ政府自身も同じ過ちを繰り返さないように心がけてはいるはずですが、同時に不動産売買の流れをもっと潤滑にして国内経済を活性化させたい思惑がそこに見え隠れします。
このまま基準がどんどん甘くなり、気がついたら投資家の手に渡る債権の中に再び不良債権がミンチ肉のように混じっていた、という事態にならなければいいのですが。。
この民間金融機関の審査基準、引いては不動産担保証券(Mortgage-backed securities)については、引き続き注視しておく必要がありそうです。
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