こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
とあるご質問を頂戴しました。
ある物件の情報履歴を照会しようとしていますが、過去に調べた情報と今の情報に明らかな違いがあります。
差し押さえ情報などは履歴に残らず、支払いを済ませれば全て消えてしまうのでしょうか?
あるいは、どこか探せば出てくるものなのでしょうか?
アメリカのある物件に目をつけていたところ、
1.過去にベンチマークして物件情報をメモしてた
2.数ヵ月後に改めて調べたところ、明らかに情報が変わっていた
3.情報隠蔽のように見えるが、今となっては過去情報の証明が出来ない
とのこと。
どの情報が正しいのか、アメリカの不動産登記制度そのものがどのようになっているのか分からずお困りとのご相談です。
アメリカの不動産は全州において不動産法が完備されていることから、不動産取引自体は安心感があります。
その一方で、公に出ている情報では人的な情報操作が疑われる場合があるのは事実です。
すなわち、その物件に関わる人物(大抵はオーナー)が一般公開されている情報を操作して実情を見えなくしてしまうのですね。
とはいえ根本的に登記されている情報を改竄するようなことは出来ませんし、隠されたように見える情報の真実を掴むことは可能です。
今日は、特定の物件に関する真実の情報を調べ上げる方法についてみていきましょう。
一般サイトの情報には間違いがあり得る

まずはアメリカの不動産に関する記録の本筋を整理しておきましょう。
アメリカ不動産を統括する一番大元の政府機関は
HUD(United States Department of Housing and Urban Development:アメリカ合衆国住宅都市開発省)
です。
1965年に当時のリンドン・ジョンソン大統領により設立されたHUDは連邦政府機関であり、全州の不動産協会や郡を統括・指導しています。
大統領がアメリカ不動産に関する指令を発するときはHUDに命令が下り、HUDが詳細を全州の各郡に伝える仕組みです。
そして各州において不動産物件情報を管理する大元は各County(郡)です。
各County(郡)は複数の市を統括しており、各市の不動産情報はこのCounty(郡)に登記されています。
例えばテキサス州ヒューストン市はHarris County(ハリス郡)に所属していますからヒューストン市の物件はハリス郡にその情報が記録されており、ロサンゼルス市はそのままLos Angeles County(ロサンゼルス郡)に所属しますからロサンゼルスの不動産情報はロサンゼルス郡に記録されているわけです。
整理すると、
① HUD(アメリカ合衆国住宅都市開発省)
↑↓
② County(複数の市からなる郡)
↑↓
各市の各物件
このような関係ですね。
大切な点は、各物件に関連する権利や履歴が正確に記録されているべきは
② County(複数の市からなる郡)
だということです。
Zillow等の民間企業が運営するMLSはあくまでも広告収入モデルのビジネスであり、
・おこぼれのデータを集めて計算するアルゴリズムの為に、市場価値見積もり等は間違いが出やすい
・オーナーであると主張すれば、情報操作が可能(情報の修正・削除が出来る)
という特徴があり、あくまでも上記の本流からは外れる枝葉の情報となります。
つまり、民間MLSに記載されている情報そのものの信ぴょう性は高いとはいえないのです。
そこで、アメリカ不動産の特定の物件に関する真実の情報を掴みたい場合は
「郡の役所で直接調べる必要がある」
ということをまずは押さえておきましょう。
オンライン情報では限界がある

現代はあらゆる情報がインターネットで検索できる便利な時代です。
アメリカ不動産にしても、ひと昔前までは日本や世界のどこかからアメリカ不動産の情報にアクセスできることは考えらえませんでした。
アメリカ国内ですら、売りに出ている物件情報は
・新聞広告
・専門雑誌広告
・チラシ
・ダイレクトメール
等の紙媒体が主な情報源であり、今のように
・登記情報一部
・過去の取引価格履歴
・過去の固定資産税履歴
等の細かい情報まで世界中からアクセスして閲覧できることは考えられませんでした。
今ではアメリカ不動産情報はインターネットを介して世界中に開示されており、このことがアメリカ不動産の信頼性と流動性を高める大きな要因になっていることは論を待ちません。
とはいえ、そうはいっても今の時代はオンラインでアクセスできる情報には限界があります。
前述のようにアメリカの不動産物件に関する大元の情報はその物件が所属する郡の当局で記録されており、上記でいう
② County(複数の市からなる郡)
ここにある情報は
・所有者の変更
・抵当の記録
・紛争の記録
と、ありとあらゆる情報が記録されています。
何と離婚裁判の判決による資産分与方法まで実名で記録が残されているものです。
けれども、これらの情報はオンライン上からアクセスできる分には限度があります。
厳密には各郡により運営方針が違い、例えばメンフィス市の管轄郡となるシェルビー郡の場合は登記情報は当然のこと、上記のような離婚裁判の判決まで個人名を含めてネット上でアクセスが可能です。
「この物件には抵当権がついていたか」
「その抵当権はいつ外れたのか」
そのような過去の経緯と事実を全てオンライン上で確認することが出来ます。
そうかと思えば、別の郡ではネット上では全部を見ることが出来ずに深い情報は役所に出向く必要があり、かつ情報を引き出すのに有料という郡もあります。
そこで冒頭のご質問、
ある物件の情報履歴を照会しようとしていますが、過去に調べた情報と今の情報に明らかな違いがあります。
差し押さえ情報などは履歴に残らず、支払いを済ませれば全て消えてしまうのでしょうか?
あるいは、どこか探せば出てくるものなのでしょうか?
このご質問のお答えとしては
① 差し押さえ情報などは履歴に残らず、支払いを済ませれば全て消えてしまうのでしょうか?
少なくとも、郡の当局の記録では履歴が残されています。
② あるいは、どこか探せば出てくるものなのでしょうか?
管轄郡の役所には確実にあります。(ネットからのアクセスでは限界がある場合が多いです)
となります。
このように管轄郡の当局にある情報が最も確実である理由は、不動産に関する事務手続きそのものが当局で行われるからです。
・不動産売買が行われた時の権利譲渡
・リモデリングする際の設計図
・物件完成後の当局認可結果
等、ありとあらゆる記録の大元が郡に登録されています。
あくまでも一般MLSサイトに記載されている情報は枝葉と捉え、正確な情報は常に管轄郡の当局に記録されており、かつ多くの場合は全ての情報を引き出すには当局に出向かねばならないことを覚えておきましょう。
とはいえ、その登記情報そのものの詳細が役所のミスで間違っていることがあり、修正を依頼する必要があることもしばしばなのですが。。
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