こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
昨日からSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)についてお伝えしています。
Deed(ディード、不動産権譲渡証書)には様々な種類がありますが、その中でも法的保証範囲が最も広いのがWarranty Deed(ワランティ・ディード)です。
そしてSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)というとなにか特別な、Warranty Deed(ワランティ・ディード)よりも上位のような印象をもってしまいますが実際にはその逆です。
定義をおさらいすると、
Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)
・Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)は売主(物件をこのスペシャル・ワランティ・ディードで譲渡する現オーナー)が所有していた期間に発生した諸問題(所有権や抵当権に関するトラブル)にのみ保証する
・Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)が保証する範囲は端的に二つの項目のみ:①譲渡人(売主)が該当物件を所有しており、販売できる権利を有すること、②譲渡人(売主)の所有期間には何ら所有権に関わる問題はなかったこと(問題は残されていないこと)
・Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)はその物件の建築当初からの歴史全体については保証しないこと
となります。
要は、Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)の法的効力はWarranty Deed(ワランティ・ディード)と比較するとごく限定的であり、その為に
Limited Warranty Deed(リミテッド・ワランティ・ディード)
Covenant Deed(カバナント・ディード、ここでのカバナントは「特約条項」の意)
とも呼ばれています。
もう少し言えば、南カリフォルニアのようないくつかの地域市場で頻繁に使われている
Grant Deed(グラント・ディード)
と同義です。
今日は別の例え使い、Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)に対する理解を深めてみましょう。
過去を隠したいオーナー

あなたがアメリカで夢のマイホームを手に入れたとします。
素晴らしい環境が周りに整う、文句のつけようがな立地です。
ちょうど今のような冬場の時期で、価格的にも然るべき市場価値よりも随分安めに購入することが出来たとします。
ところがあなたは署名した際に気づきませんでしたが、購入契約書に記載されてあったのは
「不動産権譲渡証書の形式は"Special Warranty Deed"とする」
というもの。
通常のWarranty Deed(ワランティ・ディード)ではなく、あえて売主が不動産権譲渡証書の形式をSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)としたのには次のような事情がありました。
この売主が対象の物件を購入したのは今から1年前。
現在のオーナー(売主)が1年前に物件を購入した際、その時は買主の立場であった現在のオーナーは物件購入時にその時の売主(現オーナーに売却した人物)が数年間固定資産税を滞納していたことに気づかなかったのです。
相当な額を前オーナーが滞納していたことに気づいたのは自分がオーナーとなってからで、郡の当局が物件に対する過去の固定資産税が支払われない場合は差し押さえる準備をしていることが分かりました。
いわゆる、固定資産税滞納からLien(リーエン:留置権、抵当)がかけられている物件だったのです。
途方に暮れていた現在のオーナー(売主)は別の事情もあり、前のオーナーの負の遺産である固定資産税滞納分のことは隠したまま、物件を売却することにしました。
そこで売主が選んだのは「Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)で物件を譲渡する」ことだったのです。
Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)を使えば、売主の責任は自分が物件を所有していた時期に限定されてきます。
すなわち、売主の前のオーナーが残した負の遺産である固定資産税滞納に対しては責任が生じないのです。
またSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)を使うのであれば、法的には売主は自分より前のオーナーが固定資産税を滞納していた事実を購入者(あなた)に知らせる義務はありません。
そうすると、その後の固定資産税滞納分についてはSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)にサインをしたあなたに責任がかかってくるのです。
タイトル調査は必ず行う

やや生々しい事例ですが、このようなことは実際にあり得ます。
正直なところ、誰だって自分が上記事例の売主の立場になれば
「なんで自分が過去のオーナーの残した固定資産税を払わなきゃいけないんだ。。しれっとSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)を使って、次のオーナーにパスしよう。。」
そんな誘惑に駆られてしまうのではないでしょうか。
この場合当局からの差し押さえを逃れようと思えばその方法はただ一つ、過去の固定資産税を支払うしかないのです。
そして上記のような例でなくとも、誰だって自分がオーナーであった期間よりも過去の出来事に関しては責任を持ちたくないものではないでしょうか。
だからこそ南カリフォルニアではSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)と同義のGrant Deed(グラント・ディード)で不動産権譲渡が行われるのは一般的ですし、言い換えれば南カリフォルニア市場では
「私の所有期間には何も負の遺産は発生しませんでしたし、ローンも精算しましたよー。私は責任を果たしましたから、次のあなたは自分の所有期間に対して自分で責任を持ってくださいね。」
そんなニュアンスで所有権というバトンをオーナーからオーナーへと引継ぎ続けているわけです。
(*大抵の方々はGrant Deedの意義も分からないまま取引に臨んでいらっしゃるのが実情ではあります)
本年私(佐藤)がデベロッパーと取引した際に出てきたSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)も
「うちのデベロッパーが開発する前の土地の使用については責任を持ちません」
という姿勢の現れですが、私(佐藤)がデベロッパーの立場だったとしても同じようにSpecial Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)を使うと思います。
いずれにせよ、だからこそ契約期間中にタイトル会社をしてタイトル(不動産権)調査を行うことは必須なのです。
そこで不動産権に瑕疵が見つからなければほとんどの場合は問題ありませんが、
Grant Deed(グラント・ディード)
Special Warranty Deed(スペシャル・ワランティ・ディード)
これらの法的保証能力は前オーナーである売主の所有期間に限られるという、ごく限定的なものであることを覚えておきましょう。
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