昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日までは「影の供給」についてお伝えしました。
「今は発動していないけれども、供給が増えると分かりきっている因数」
これを影の供給といい、時期は正確には分からないものの確実に未来に起こり得る供給の因数をいいます。
このことは机上論ではなく、市場で差し押さえ物件を専門的に扱うベテランリアルターも目の前に迫る大波の兆候をハッキリと確認していることは昨日ご紹介したとおりです。
大まかには
モーゲージ・フォーベアランス
エヴィクションモラトリアム
のいずれか、もしくはこの両方が失効となる時に市場にかなりの数の物件が出てくることになります。
そして差し押さえ物件数の増加とは全く別の理由で供給が増える要因になるのは
「人口の流出」
です。
その地域市場から外に人が流れ出ていくということは、その市場で売りに出される物件数が増えてくることになります。
- 税金が高い
- 生活費が高い
といった日々の生活そのものの支出が高額な地域から生活費が安い地域へと人々が流れていくのは自然といえます。
このような生活費がかからない地域へと引越すトレンドは2019年までもありましたが、昨年2020年からコロナウイルスの流れにより加速している経緯がありました。
そしてコロナウイルスが収束した後は、ほぼ間違いなく引越しをする人々が増えることが見込まれているのです。
このような、今は姿を現してはいないけれども確実に近い将来の供給増につながるだろう影の供給にはよく注目しておく必要があります。
それではこの影の供給が実際に表に出てきた暁には、市場にはどれくらいのインパクトが予想されるのでしょうか。
この点は「影の供給」の正反対となる因数、「影の需要」と合わせて考察してみる必要があります。
本日も続けます。
影の需要を捉える
「今は発動していないけれども、需要が高まると分かりきっている因数」
これを影の需要(Shadow Demand)と呼びます。
物事には常に二面性があるように、ここまでにお伝えした影の供給があるならその裏には正反対の影の需要が必ず存在するものです。
これら
① 影の需要(Shadow Demand)
② 影の供給(Shadow Supply)
が起こる順番はおそらく
②が最初に表に出てくる ⇛ ①と②が同時に起こる ⇛ ①が強まる
になるだろうと予想します(あくまでも個人的な予想です)。
その時間軸は正確に分からないものの、数年単位で上の順番に流れていくのではないでしょうか。
そして①で影の供給が表立ってくる時、あたかも大波が押し寄せるかのようにアメリカ不動産市場には次々と物件が出てきます。
たった今の段階で見えている数字は昨年12月の時点の
90日間以上の債務不履行 … 2,146,000件
という数字です。
ちなみに厳密にいえば、この「シリアス(危険)」とされる未払い90日以上の件数は確実に減少しつつあります。
ということは、以前
の中で、本当は必要ないのにモーゲージ支払いを滞らせている人々がいる可能性について触れていましたが、ケアーズ法から10カ月ほど経つ今ではなんちゃって組みも減少しているだろう予想がつきます。
そこで昨月12月を基準に考えると、もう少し厳密には
- 債務不履行が30日以上
- すでに差し押さえ状態
のいずれかにある物件の総数は3,429,000件です。
減少傾向にあるとはいえ、それでも340万件以上という数字はかなり大きなものがあります。
これだけの数が市場に出てきた場合、どのようなインパクトが考えられるのでしょうか。
一つの目安になるのは、例の2008年以降の不動産価格大暴落の時期です。
あとの時にどれだけの数の物件が市場に出たかと言えば、当時のCNNニュースに記載されている内容を引っ張ってくると
Foreclosures up a record 81% in 2008
ここには
There were more than 3.1 million foreclosure filings issued during 2008, which means that one of every 54 households received a notice last year.
(佐藤意訳)
2008年には310万件以上の物件が差し押さえとなり、この数は54件に1件が差し押さえの通知を受け取ったことになる。
とあります。
そこで現在の3,429,000件の中から実際にはどれだけの物件数が市場に出てくるかは不明ですが、当時の全米平均としては不動産価格は
このように推移しました。
上記グラフは2008年9月のリーマンショックから連鎖した世界金融危機の影響も受けた結果のものです。
そうすると、今回も上記の如くに価格が下がることになるのでしょうか。
個人的にはその可能性は低いと考えおり、その理由が「影の需要(Shadow Demand)」です。
影の需要と呼べるものは今の時点で見えている素因数の一つには
「2008年とは比較にならない需要の増加」
があります。
実際に米国では2019年までも深刻な供給不足の状態にあり、物件を購入しようにもなかなか手が出せない層が多くなっていました。
それが今では歴史的な低金利の時期にありますから、仮に影の供給が表に出てきて価格が下がる場合、待ってましたとばかりに2008年とは比較にならない需要が随分と供給を吸収していくことが予想されます。
2008年当時の場合、実質ゼロ金利が断行されたのは厳密にはリーマンショック以降です。
けれども今回の場合はすでにゼロ金利を実施しており、この空前の低金利を動機に人々が物件購入に動くことはすでに証明されています。
たった今は供給数が極端に少ないために価格が上がる結果となっていますが、仮に2008年当時のレベルで物件が市場に出てきたとしても、当時以上の需要が供給を吸収していく可能性は高いと思われるのです。
そしてこれに留まらず、その時を待ち続ける別の影の需要は他にもあります。
明日に続けます。
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