こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
一ヶ月程前、
の項でバイデン政権による税制改革法案について触れていました。
パンデミック下に発進したバイデン新政権ですが、報道でよく耳にする
「就任後最初の100日間」
の中で政策を次々と打ち出す中の税制改革として
「富裕層を意識した増税案」
がありました。
この件に対して当ブログでは
- 4前の大型減税を見直し法人税を21%から28%まで引き上げる法案
- 年収$400,000以上の個人に対する増税
そしてとりわけ
- 年間$1,000,000以上の所得がある個人にはキャピタルゲイン課税に増税
- ほとんどの不動産投資家は「1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)」を使って物件を交換し続けていくと思われる
この部分を取り上げ、
⇛ 結果として不動産投資家に対してはほとんど意味がない
という趣旨でお伝えしています。
けれどもこの増税案について、実は私(佐藤)の法案全体に対する認識不足があったのです。
「年間$1,000,000以上の所得がある個人にはキャピタルゲイン課税に増税」
ここばかり注目して
「ほとんどの不動産投資家は『1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)』を使って物件を交換し続けていくと思われる」
「なので効果はほとんどない」
と述べていますがこの認識は完全に不足しており、実はそれ以上に重要な内容として
「1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)制度そのものを部分的に終了させる」
という法案が含まれていました。
ここに情報不足をお詫び申し上げますと同時に、改めて追加で重要な法案について網羅していきたいと思います。
不動産業界に大きく影響する税制改正案
バイデン政権による今回の税制改正案について、改めてアメリカ不動産業界に大きく影響する法案を並べてみます。
メインになるのは3つ、
キャピタルゲイン課税に対する増税
1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)制度の部分的終了
Stepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)制度の部分的終了
です。
前回は1番目のキャピタルゲイン関連のみを取り上げていましたが、ここに2番目と3番目を加えてお伝えします。
本項では概要をさらっと掴み、詳細については明日から細かく確認していきましょう。
キャピタルゲイン課税に対する増税

キャピタルゲイン課税に対する増税は
「年間$1,000,000以上の所得がある個人」
を対象としているとのこと。
キャピタルゲインが発生し得る資産としては
- 株
- 債権
- 自宅用物件
- バケーションホーム
- 賃貸用物件
- 宝石類
- 高級家具
- コレクション(切手、スタンプ、絵画等)
- 高級車
- ボート
- 自家用飛行機
等があります。
上記の中には今回の増税案には含まれない資産もあるようですが、概ね資産家の場合はこれらの資産に対するキャピタルゲイン課税を増税するというのが今回の法案です。
そこで私(佐藤)は、
「1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)がある以上、不動産業界にはさほど影響がないのでは」
とお伝えしていたのでした。
ところがです。
1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)制度の部分的終了

今回の法案には
「1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)制度そのものの部分的終了」
が含まれていました。。
1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)は「Like-kind exchange (同種交換)」とも呼ばれ、所有する不動産物件を新しい物件と交換していくことが出来る制度です。
原則として
「売却する物件の価値と同等、もしくはそれ以上の価値がある物件と交換すること」
と定められており、例えば賃貸物件を所有する投資家であればより価値の高い物件に交換していくことが出来ます。
この制度には
「物件の築年数は同じもしくはそれ以上の古い物件であること」
などという築年に対する制限はありませんから、
「物件が随分古くなった。更に価値の高、築年数の浅い物件と交換しよう。」
ということも出来るのです。
そして交換する際には
「本来は売却時に支払われるべきキャピタルゲインは繰り延べ(次の物件に持ち越)される」
というのが1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)の基本ルールでした。
今回の税制改正案では
「 1031 Exchange(テンサーティーワン エクスチェンジ)そのものは引き続き実行可能」
「しかしながらキャピタルゲインが$500,000を超える部分は課税対象」」
とされており、この法案が可決されるとアメリカ不動産業界には相当なインパクトをもたらすことになるはずです。
Stepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)制度の部分的終了

そして今回の税制改正案の中でもおそらく最もインパクが大きいだろう極めつけは、
「Stepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)制度の部分的終了」
です。
このStepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)については聞き慣れない方々も多いと思いますので、本シリーズでは後日詳細を見ていきたいと思います。
ここではごく簡単にポイントをかい摘んでお伝えすると、これまでは資産の相続について例を挙げると
1.父が資産を購入した(ここで価値のベースが決まる)
2.20年後、価値が上昇した資産を残して他界した(ベースに対してキャピタルゲインが発生している)
3.相続人が価値が上昇した資産を相続
4.価値のベースは「3」の相続した時点の価値に上方修正される(ステップドアップ ベイシス)
このような流れがありました。
それが、今回の法案では「4」に相当する「Stepped-Up Basis(ステップドアップ ベイシス)制度」そのものを部分的に終了させるというのです。
これがどのようなインパクトになるか、簡単に想像出来るのではないでしょうか。
これら法案について、より詳細を見ていきましょう。
明日に続けます。
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