こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
たった今のアメリカ不動産市場を観察する上では
「過去の不動産バブル崩壊の如く、価格が劇的に下がり始める」
という可能性は低いものと見ています。
けれども気になるのは
Affordability(アフォーダビリティ:値ごろ感)
の要素です。
米消費者物価は
昨年12月 … 前年比7%
本年1月 … 前年比7.5%
と1月は更に物価上昇が顕著になっており、昨年暮れに発表された
「12月は約40年ぶりの物価高」
が実際は
「年末商戦に絡んだ影響ではなかった」
ことがはっきりと証明されています。
正真正銘、今の米国はハイパーインフレの序章が始まっているようも思われ、普段の生活の中でも
「最近の物価高はひどい」
との声があちこちから聞かれます。
米国外からは
「でも、米国はインフレが激しかったとしても、給与も上がるから大丈夫でしょう」
との声も聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。
Bureau of Economic Analysis(アメリカ合衆国商務省経済分析局)
の統計によると、最新の統計で
2021年第3四半期~第4四半期
の個人所得の変化は下記の分布図のようになっています。

同期間の各州の変化が一目瞭然ですが、読み取れるのは
- 個人所得の伸びは南部の方が堅調
- カリフォルニア州やニューヨーク州を始めとする大都市では2%台の伸びにとどまる
- 所得がマイナスに触れた州もある
といったポイントです。
そして最も大切なポイントとしては
「現在の物価上昇率に追い付いている州は一つもない」
という事実。
あくまでも平均値とはいえ、現在の米国の物価上昇に対してはほとんどの人々の給与が追い付いていないことになります。
すなわちここでいう米国不動産市場に対しての
Affordability(アフォーダビリティ:値ごろ感)
とは
「自分の給与に対して物件は購入できるか」
という個人の感覚であり、
⇒ 物件価格は上昇し続けている
⇒ 物価も上昇し続けている
⇒ けれども給与は追い付かない
というパターンでは、やがて
「高値の解法は高値にあり」
の理論のとおり、
⇒ 高値すぎて買いにくくなる
⇒ 購入者数が減少する
⇒ 価格が高止まり、或いは下がり始める
という形に変化してくる可能性があります。
少なくともたった今は
「今の価格では家を買いたくても買えないよ」
「日頃の生活を考えると、モーゲージ返済は自信がない」
そんな層が増えているだろうことは間違いなく、とりわけカリフォルニア州やニューヨーク州といった
「生活コストが上昇し続けるのに、給与の伸びはイマイチ」
という地域ではこの傾向が強いはずです。
これらの「大都市圏ながら給与がイマイチ伸びない州」ではそれでなくとも物件価格が高いわけですから、
Affordability(アフォーダビリティ:値ごろ感)
についてはより深刻な影響が出てくるように思います。
そしてこのあたりは各州政府としても
「所得が中レベル以下の世帯でも物件が購入できるように」
とあらゆる対策を検討・実施がなされています。
現状を鑑み、これらの中でカリフォルニア州の場合の救済策を見ていきましょう。
ここでご紹介するのは以前から存在する救済策ですが、今の時期に物件購入を試みたいけれども所得的に難しい世帯の方々が活用を検討出来る支援策です。
物件購入支援策:カリフォルニア州の場合

全米に見られる傾向ですが、連邦・州政府が物件購入にあたり最も力を入れて推進しているのが
「物件を初めて購入する世帯の支援」
です。
カリフォルニア州の場合はこの役割を
California Housing Finance Agency(カリフォルニア州住宅金融支援機構)
が担っています(以下CalHFA)。
CalHFAは1975年に設立された機構で、通常の基準では物件購入が叶わない世帯を支援し続けてきた経緯があります。
とはいえ住宅購入にあたりCalHFAそのものが融資を行うわけではなく、CalHFAには予め認定された融資元機関が登録されており
1.CalHFAが申請者を審査
2.CalHFAが認定融資機関とつなぐ
3.認定融資機関が残りの審査を行う
という流れで
「銀行・モーゲージ会社からの通常融資では物件購入が難しい」
とされる世帯でも物件購入が可能となり得る道を開いているわけです。
実際に
「物件購入と賃貸、どちらがいいか」
とは全ての賃貸世帯が悩むところですが、
「物件購入は自分の資産にもなる」
「いっても、物件価格は上昇基調にある」
「その一方で自分が暮らす家賃も上昇し続けている」
「それならば物件を購入した方がよい」
そんな風に結論付ける世帯も多いのです。
そこで通常であれば
「自分の所得ではまず物件購入は難しいな」
と思える世帯でも、CalHFAの仕組みを活用して物件購入の道が開けることになります。
ここはカリフォルニア州の例ですが、他州においても同様の仕組みで世帯収入に一定のラインを引き、それ以下の所得にある世帯が物件を購入出来るような仕組みは存在しています。
今回はカリフォルニア州居住の方々に向けた救済策の紹介となりますが、知識として現在のCalHFAが実施している
「初めて物件を購入する世帯」
に向けた支援プログラムの概要をさらっと見ておきましょう。
明日に続けます。
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