こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
投資案件を数字でざっくりと判断する方法についてお伝えしています。
不動産投資案件の精査そのものについては
「自己資金を有効活用してリターンを最大化する」
「リターンの最大化の為に数字で分析を行い、最も効率の良い投資案件を探す」
そんな風に解釈する向きが一般的にはあります。
事実それは間違っていませんし、不動産投資の場合は本シリーズでおさらいしているように
- 家賃収入
- 物件価値の上昇
- 利息合計の計上による節税
- 減価償却費の計上による節税
等の複数のイールドポイントがありますから、それらを総合的に検証して自分の目的に照らし合わせて最終的に判断していくことになります。
特に不動産投資の場合は短期リターンというよりも
「だるまさんが転んだ」
式で長期に渡り徐々に徐々に、けれども
「気が付けばそこにいる(目標に近づいている)」
という風に、自分自身も気づかないうちに(だるまの自分が)目標に近づいていけるという非常に底堅いインパクトのある投資です。
ちなみに私(佐藤)の場合、投資案件を精査する際は
「数字で分析を行い、最も効率の良い投資案件を探す」
という目的ももちろんあるのですが、それ以前に、或いはそれ以上に大切な目的があります。
それは
「リスクを極小化させること」
です。
このことは不動産投資以外にも言えるかもしれませんが、自己資金を効率よく活用してリターンを最大化させていく行為に対して
「少しでも多くリターンを取る」
と考えるのは人の心理ですし、それ自体は何ら間違っていないと思います。
けれどもあえて断ずるなら、私(佐藤)にとってリターン以上に大切なのは
「リスクを極小化すること」
ことです。
言い換えると、
「数字で精査してリターンを追い求めることで、着実にリターンは大きくなる」
のも事実かもしれませんが、それ以上に
「リスク極小化を追い求める中で、自然とリターンは大きくなる」
ことの方が健全と考えています。
「前だけみながら走り続ける」
というよりも
「前方を3割、足元7割で見ながら走り続ける」
という方が転ぶ確率は格段に低くなるでしょうし、
「リスク極小化に神経を使う中で、自然とリターンが指数関数的に増えていく」
方が健全なように思うのです。
その意味では数字精査を行うことは必須ですが、同時に本シリーズでざっくりと数字を見ていく意味は
「限られた時間を効率よく使う」
と同時に
「リスクを極小化する」
ことにあります。
そんなリスク極小化の視点も含め、3つ目の指標を見ていきましょう。
Capitalization Rate(キャピタリゼーション・レート:還元利回り)

キャップレートは有名な指標ですので改めて語るまでもないところですが、本シリーズで触れる一番の意義は
「不動産投資案件を精査する上で、キャップレートは3番目に使うことがベスト」
というところにあります。
昨日までは
GRM(Gross Rent Multiplier:グロス・レント・マルチプライヤー)
1%ルール
の順番にきましたが、これは精査時に使う指標の順番そのまんまです。
① GRM指標をパス ⇒ 1%ルールで検証
② 1%ルールをパス ⇒ キャップレートで検証
という具合に進め、3番目でようやくキャップレートがくる順番が理想です。
「GRM指標をパスしなければこの案件は見送り」
「次の1%ルールをパスしなければこの案件は見送り」
「キャップレートをパスしなければこの案件は見送り」
という具合に進めることで、
より無駄をなくして
より早い段階で
より的確に
判断していくわけです。
そこでキャップレートの段階まで到達したら、ここではキャップレートと呼ばれる
Capitalization Rate(キャピタリゼーション・レート:還元利回り)
で投資対象物件を数字で見ていきます。
キャップレートは日本語で還元利回りと訳される上で、意味はそのまんま
「収益に対する利回り」
を見る指標です。
不動産資産を所有する際に
「家賃収入が入った」
「経費が発生した」
「年間の純収益は$〇〇〇〇だった」
という時、
「不動産資産価値から還元される純収益の利回りの割合」
これがキャップレートです。
すっかりお馴染みですが、その公式は
Capitalization Rate = Net Operating Income / Current Market Value
キャップレート = 年間純収益 / 現在の物件価値
になります。
ちなみにキャップレートという指標の特異性を語る上で先に強調しておきますが、
GRM指標
1%ルール
と同様に
「キャップレートは単体では意味をなさない」
という特徴があります。
キャップレートそのものは従来商業物件市場において
- 商業物件同士を比較する
- 地域市場を比較する
という時に使われてきました。
物件の数字を取り上げてキャップレートを算出したところでその単体の数字そのものには意味はなく、他の物件や他の市場と比較する際に使って始めて有効に活かすことが出来るものです。
例えば昨日の例で
物件B価格:$180,000、月間家賃:$1,850
この物件Bの年間支出が$ 6,500だったとします。
そうすると
NOI(年間純収益) = (($1,850 X 12ヵ月) - $6,500) = $15,700
ですから、これを物件価値の$180,000で割ることで
8.7% = $15,700 / $180,000
となり、
「この物件資産に対する還元利回りは8.7%だ」
となるわけです。
そして今度は別物件のキャップレートを算出し、これまでと同様に
物件ごとに比較する
他の地域市場と比較する
という具合に見てみることで、
「この不動産資産から還元される利回りは大きい(小さい)」
という判断を下し、投資対象とするべきか否かを判断していくことになります。
ここまでくると、その物件を投資対象とするべきか否かがかなりの精度で見えているはずです。
数字でざっくりと投資判断を行う方法について、明日に続けます。