昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本年2022年はアメリカ不動産市場が大きく変化した年でした。
アメリカ不動産市場の周期で一言でいうと本年は
「買い手市場に変化した年」
といえます。
例えば先日、南カリフォルニアで物件を探している中東出身のお客様がMLSで探した物件情報のリンクを送ってきました。
見たところ価格は80万ドルほどで、非常に綺麗にリモデリングがなされています。
街から少し離れた小高い山の中腹にある70年代から開発されてきた地域で、一体には小綺麗な物件が並んでいます。
このお客様は4人家族で小学校に通う子供たちが2人いるのですが、典型的なパターンとして両親が物件を選ぶ基準の第一優先は
「子供が通うことになる学校のレベルはどうか」
です。
私立に通わせるのであれば学区はそれほど気にする必要はないわけですが、多くの家庭では
「自宅最寄りの学校に通わねばならない」
ということになりますから
購入物件のロケーション = 学区
となり、結果として少しでも良い教育を受けさせたいと願う親にとっては学区が引っ越し先の大きな要因になるのです。
そしてこの時も案の定、お客様が送ってきたリンク先の物件は
「グレードの高い公立小学校近くに位置する物件」
でした。
「物件価格が適切かを見てほしい」
とのことでしたのでシステムを走らせて物件価値を分析してみると非常に興味深い結果が。
1棟に4戸以下となる住居用物件の場合その市場価値は
「周辺の類似物件の間近の販売実績との比較」
である略してComps(Comparison Analysis Approach:コンプス、比較接近法)と呼ばれる手法で市場価値を推し量るのが通常です。
そこでこのComps(コンプス)をかけてみたところ、
「過去3か月以内に売れた近辺の類似物件の価格は1ミリオン超えだった」
ということが分かったのです。
すなわちお客様が送ってきたリンク先の美しくリモデリングされた物件もほんの数か月前までは
「ミリオン超えの物件」
で売れたはずだったことになりますが、市場に出されている価格は80万ドルほど。
さらにはシステムで算出したところこの物件の現在の適正価格は90万ドルほどで、すなわち売主は
「市場価値よりも約10万ドルほど安く市場に出している」
ということが分かったのです。
価格が転げ落ちる
ここにキャピタルゲイン市場の恐ろしさの一つがあります。
当ブログでもたびたびご紹介する通り、私(佐藤)はアメリカ不動産市場を
キャピタルゲイン市場
ハイブリッド市場
キャッシュフロー市場
の3つに分けて観察を続けています。
キャピタルゲイン市場とは
カリフォルニア海岸都市
ニューヨーク都市部
ラスベガス
フロリダ州都市部
のように世界中の人々に認知されており、それ故に甚だしい人口増加から物件価格が大きく上昇していく傾向がある市場のことです。
これらの地域では過去の90年代から加速した不動産バブル期、あるいは今回のパンデミック以降の資産バブル期には価格が大きく上昇した経緯があります。
けれども不自然な力で膨らんだものはその押し上げる(押し広げる)力が失われたのであればそこからは急速に萎んでいくことは自明の理。
すなわち本年初頭までの
実質ゼロ金利によるモーゲージ低金利 X 供給不足
の掛け算で破竹の勢いで伸びてきた価格は過去に繰り返し指摘してきたように「価格調整の時期」 に入ったわけです。
ちなみに正しい認識をもって改めておきたいと思いますが、
「価格暴落」
「価格調整」
この2つはどちらも価格が下向くことを意味しますがその本質は全く違います。
前者の価格暴落とは人々がパニックになり投げ売りに近い状態、或いは差し押さえ物件の急激な増加で価格の下げに歯止めがかからない状態です。
これに対し後者の価格調整とは経済サイクルの中では規模の大小を問わずに常に発生しており、今回の場合は
「パンデミック以降の不自然な資産バブルで押し上げられた価格が適正価格に戻っていく」
ことを指します。
そこで現在アメリカ不動産市場各地に見え始めたのは後者の価格調整であり、決して暴落のレベルではありません。
そうすると
「価格はどこまで下がるのか?」
といえば、普通に考えれば
「パンデミック以前の価値あるいはそれを多少上回る価値」
あたりに落ち着く公算が最も高いのではないでしょうか。
そこで冒頭のお客様に対しても
「今の適正値は約90万ドルだから、それよりもかなり安いですよ」
「フルオファー(売り出し価格そのままの満額)でもよいと思います」
「ただし過去の統計と照らし合わせてみるとここから来年或いは再来年に向けて、80万ドル以下に下がる可能性もありますよ」
ということはお伝えしておいたのです。
かくして今のカリフォルニア市場ではこの例のように
⇒ 数か月前まではかなり高い価格だった
⇒ 今はかなり市場価値が下がっている
⇒ けれども売主はさらに低い価格で売りに出している
というパターンを頻繁に目にするようになりました。
なぜこのような売り方をする売主が増えているのかといえば、
「たった今の適正価格では売れない」
「適正価格で出すだけ時間の無駄で、市場に売れ残るほうがリスクが高い」
「先回りしてさらに安く売りに出し、なんとか売り抜けたい」
と考えるからです。
昨今の資産バブルでカリフォルニアのような典型的なキャピタルゲイン市場では極めて高いレベルで価格が上昇し続けてきた結果、多くの家主はたっぷりとエクイティを手にしたわけですから
「40万ドルほど価値が上昇した」
「20万ドルほど値下げして売り抜け、最終的に20万ドルを利確したい」
という式で進めたほうが賢いわけです。
そして実を言えば、この判断が決して間違ってはいない統計が出されています。
2022年11月の時点で
「今が物件の買い時と考えているアメリカ人就労人口は16%のみ」
という調査結果が発表されているのです。
明日に続けます。
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