こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産市場各地で見え始めた負のスパイラルについてお伝えしています。
「負のスパイラル」
というと聞こえがネガティブですが、不動産物件を含むいかなる投資においても
「安く購入する」
ことが原則である以上は
価格が下がる負のスパイラル = 投資家にとっての好機
です。
投資に限らず、どんな買い物でも極力安く済ませるに越したことはありません。
年末に旬の明太子や蟹も卸値で購入した方がお得でしょうし、物件も同様に安く購入した方がよいに決まっています。
先日はメルマガでテキサス州の戸建て物件を3件、市場に出されている販売価格をして
⇒ $334,900が$265,000で購入可能
⇒ $267,500が$200,000で購入可能
⇒ $299,900が$225,000で購入可能
という案件をお流ししたところ、それぞれが瞬く間に契約に入ってしまいました。
$334,900で出されている物件が$265,000で購入できるのならその方がよいに決まっていますし、しかもそれぞれが
- 築5年
- 築10年
といった新古品のレベルで購入できるのです。
昨年までは資産バブルの勢いでとてもこれらの値段では購入できなかったはずですが、市場価格はあくまでも
「需要と供給のバランス」
という市場原理主義で決まる宿命にあります。
今の市場では需要がかなり引っ込んでいるため、是が非でも売りぬきたい物件オーナーにとってはかなり不利な売却を迫られているのです。
かくして
負のスパイラル = 安く購入するチャンス
と言える中で、この先はどのように推移していくのでしょうか。
大手金融関係者の中には
「アメリカ不動産平均価格は2024年ないし2025年までは下がり続ける」
という声もあれば、反対に
「FRB(連邦準備制度理事会)の方針に合わせて市場は一服し始めており、それほど安くはならない。むしろ2023年から平均価格は上昇するだろう」
と見る専門家もいます。
その実体を捉えるべく、各要素を見ていきましょう。
在庫数は減少を続けている

「価格は下がり続ける」
「いや、価格はここから上がる」
この正反対の意見はそれぞれが市場を見るときの需要と供給に影響する因数に起因しており、そのキーワードの一つとなるのがInventory(在庫数)
です。
昨年までのパンデミック以降の資産バブルの流れを見るとき、不動産市場において
「歴史的な低金利だ」
「物件を購入するのは今だ」
という買い手側にとっての好機が再び訪れたことは間違いありません。
好機に需要が一気に急増した結果、価格を押し上げたのです。
けれどもその急増する需要に隠れて見えにくかったものの、実際のところアメリカ不動産市場の物件供給数はパンデミック以前より減少を続けている事実があります。
本年2022年こそ供給数は多少増えたものの、2022年10月の在庫数をパンデミック以前の3年前の在庫数と比較するとなんとアメリカ不動産市場の物件在庫は38%も減少しているのです。
パンデミック下では急増する需要に大きく焦点が当てられていましたが実際は
「供給数も激減していた」
わけで、この需要と供給の対局的な乖離が余計に価格を押し上げたていたことになります。
本年も昨年比でも在庫数は24%も減少しており、
「2022年を通して多少在庫は増えたものの、昨年比では大きく減少」
という結果。
ちなみにこの原因はほぼ間違いなく、
「低金利をつかんだホームオーナーが物件を手放したくない」
ことが大きく影響していると思われます。
パンデミック下の歴史的な低金利を享受した方法は
- 新規を購入する
- 保有物件をリファイナンスする
のどちらかしかありません。
新規購入の場合は1年そこらで手放す理由はほとんどないわけですが、
「過去に6%で組んだモーゲージを今回3%でリファイナンスすることができた」
という場合はどうでしょうか。
この場合は今の時点で物件を売却するとせっかく低金利でつかんだモーゲージを手放してしまうことになります。
その損をしたくない心理的が結果として市場に出てくる物件数を減らし、ここ数年で極端なまでに市場に出てくる物件数が減少したことになります。
新築プロジェクトにも急ブレーキ

またここも予想された点が現実化していますが、
「新築プロジェクト開始数が激減」
している事実も見逃せません。
常日頃から全米各地のデベロッパーとやりとりをする中で
「来年以降はプロジェクト数そのものを減らす(減らさざるを得ない)」
ということは聞いていましたが、実際に数字として新築物件プロジェクト数が急激に減少しつつあります。
新築物件の変化の兆候は
- 新築建築許可数
- 工事開始数
に見ることができますが、本年2022年10月からこれら許可数と開始数が極端に減少し始めているのです。
建築工事が順調に進む場合は新築は
4か月~6か月
ほどで完成に至りますので、この10月の動きはほぼ間違いなく
「2023年に完成する新築総数が減少」
することに直結してくると思います。
そうするとたった今のベクトルとしては
「需要が急激に減少している」
一方で
⇒ せっかく掴んだ低金利を手放したくない
⇒ 先の新築総数も減少
この影響がより甚大になるだろう2023年以降では
「急激に減少した供給が、さらに減少してくる」
ことが予想され、結果として
「2023年からの価格は極端に下がることはない」
という予想につながっているわけです。
需要と供給バランスの観察について、明日に続けます。
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