こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産市場を横一列に並べ、
平均家賃の低い市場
前年伸び率が20%以上の市場
人口の多い都市トップ5
の条件で絞り込んできました。
順位 | 州 | 市 | 人口 | 平均家賃2022 | 平均家賃2021 | 前年比(%) | ドル単位差額 |
37 | テネシー州 | メンフィス | 651,073 | $1,190 | $969 | 22.88% | $222 |
73 | オハイオ州 | シンシナティ | 303,940 | $1,410 | $1,088 | 29.59% | $322 |
54 | ノースカロライナ州 | グリーンズボロ | 296,710 | $1,274 | $900 | 41.47% | $373 |
20 | アラバマ州 | モンゴメリー | 198,525 | $991 | $690 | 43.63% | $301 |
35 | アーカンソー州 | リトルロック | 197,312 | $1,159 | $913 | 27.00% | $246 |
平均家賃の安い市場としては全米で37位ですが、上記3つの条件で絞り込むと1位です。
テネシー州メンフィスの特徴
メンフィスはテネシー州の最大都市であり、ミシシッピ川沿いの南西部に位置しています。
市の設立は1819年と古く、興味深いことにその地名は古代エジプトの首都にちなんで名付けられています。
現在の人口は統計のごとく約65万人で、中西部の主要な文化、経済、交通の中心地のひとつです。
音楽と文化の面ではメンフィスはブルース、ソウル、ロックンロールの発祥地として世界的に有名であり、ビール・ストリートは、多くの著名なミュージシャンが演奏したことで知られ、エルヴィス・プレスリーの故郷であるグレイスランドは、年間を通じて多くの観光客が訪れる名所です。
ちなみに、メンフィスは公民権運動の歴史でも重要な役割を果たした土地でもあります。
1968年にマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺された場所としても知られており、その地に建てられた国立公民権博物館は訪れる人々に公民権運動の歴史を伝えるものです。
経済面では、メンフィスは運送業や物流が盛んで、フェデックスの本社も位置しています。
同時にバイオ医学、製薬、医療機器の分野でも研究開発が進んでおり、その中心地となっているセント・ジュード子ども病院は世界的に有名です。
結果として
大学の教授や研究者
学生
達による賃貸需要が高く、この流れが当地に不動産価格や賃貸価格に影響してきた一面もあります。
コロナ禍では特に生活費の安さから人口流入が目立つ傾向にあったようです。
余談ですが、食文化としてはメンフィスは伝統的な南部料理や、独自のバーベキュースタイルで知られています。
特にメンフィススタイルバーベキューはドライラブやウェットラブのリブが特徴で、世界中から人々が集まるバーベキュー・コンテストが開催されることでも有名です。
かくしてアメリカ国内ではテネシー州メンフィスはそれなりに知られた地方都市であり、人々の興味を示す土地柄であることは間違いありません。
人口の変化
そんなメンフィスですが、人口の変化を
World Population
のサイト上で見てみましょう。

たった今は62万人を超える人口ですが、興味深いことに、ここから先の人口は減少すると予想されています。
近年はパンデミック以降にメンフィスへの人口流入は大きく増加していました。
これが理由で、当地の物件価値も大きく値上がりを続けていたのです。
当時に当地の家賃を統計上で見ると、その変化は
2021年 $969
2022年 $1,190
と、$222の変化が確認できます。
実に平均で22.88%の増加となり、一年の変化としてはかなり大きなものです。
そして当地の詳細に目を向けると、投資物件の意味でも最も利したのは中間層の物件でした。
もともとメンフィスの物件価格は非常に安く、中間層の物件でも10ドル台前半で手に入れられたのです。
それが今では10ドル台後半、或いは20万ドル台にまで上昇しています。
ただし、もしもここから先の人口推移がWorld Populationの通りに進むのであれば、当地の物件価値も頭打ちになる可能性がありそうです。
同時に物件価値としてはパンデミックに乗じて急上昇してきましたが、おそらく今あたりの価格で高止まりする物件が多いのではないでしょうか。
また同市の強みはなんといっても雇用機会の多さにあり、
アマゾン
ナイキ
フェデックス
等を始めとする名だたる企業が腰を据え、現地の雇用機会に大きく貢献しています。
今回の家賃上昇5都市の中で最大の人口を誇る当地は、住に対する需要が激減していくことは考えにくく、家賃価格も低水準にある以上は仮に人口が減少し始めたとしても今のレベルで正常な上昇率に落ち着てくるように思います。
事実、絞り込まれた今回の5つの都市の中でも家賃の伸び率は最も低い22.88%です。
おそらく本年2023年、或いは2024年に出てくる前年比ではこのレベルの家賃の伸びはないと思いますが、平均$1,190という安さは魅力的なままです。
そこで私(佐藤)自身はメンフィス市場はキャッシュフロー市場として位置付けていますが、ここからキャッシュフロー市場を体現する物件はこれまでの中間層レベルの物件よりも、もう少し安い物件に焦点を当てていく必要があるのではないでしょうか。
このレベルになるとそれなりの投資経験が必要になるかと思いますが、それでもキャッシュフローを目的とする不動産投資の意味では十分に利する市場であり続けることは間違いないと思います。