昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
マルチファミリー案件の数字の見方についてお伝えしています。
数字を精査する段階で概要で良しと見た後はNOI(Net Operating Income:純収益)を深めていきますが、NOIを精査する上でのポイントはそのまま、収入と支出です。
そこで「Scheduled Gross Income(予定総収入)」が$974,208であることを突き止めましたが、昨日触れたように予定はあくまでも予定であり
「Scheduled Gross Income(予定総収入)どおりの収入はない」
とほぼ断言できます。
Scheduled Gross Income(予定総収入)はあくまでも想定される範囲内の最高値であり、最高値とはいっても実現はほぼ不可能です。
なぜなら
家賃の滞納
ターンオーバー
はほぼ確実に起こり得、特にターンオーバーに至っては住人入れ替えの修繕費用がどれだけかかるかは分かりませんから大きな変動要素となり、Scheduled Gross Income(予定総収入)を大きく変えてしまいかねないのです。
またレントロスの内訳としてはより細かくいえば
家賃の一部だけ支払われる場合
テナントとの交渉により一時的に値下げする場合
等があり、より状況は複雑になります。
そこでNOI(純収益)の中でも実際の収入を見込むにあたってはScheduled Gross Income(予定総収入)を鵜吞みにせず、これら減収の要因となる因数を加味しておく必要があるのです。
ただし、Scheduled Gross Income(予定総収入)を考察する上で減収の要因だけを見ると嬉しくはない一方で、明るい材料もあります。
それは「家賃上昇率」です。
すなわちアメリカ不動産の賃貸市場では原則として家賃は上昇していきますから、
「購入時から賃料が下がり続ける」
或いは
「購入時から家賃を全く上げられない」
ということはあり得ません。
それが起こるとすればよほどまずい市場に立地しており、その手の立地は数字精査以前に避けねばならないのです。
そこで対象案件のNOI(Net Operating Income:純収益)の理解を深める上で、今度は収入アップの要因となる家賃上昇率について見ていきましょう。
家賃はどれくらい上昇しそうか
家賃の上昇率を検証する際に、一番最初に見ておきたいのは
「その地域の家賃上昇率」
です。
家賃上昇という現象は一つの物件で完結する話ではなく、何よりも地域経済に根付いたその市場の成長率が大きく関わってきます。
すなわち対象となる地域市場が成長軌道にあり、
⇒ 雇用機会が増え続ける
⇒ 人口が増え続ける
という状態であれば、かなりの確率で家賃は上昇していくはずです。
その意味では家賃上昇を推し量る上でまず最初に見るべきは地域の家賃上昇率ということになりますが、この家賃上昇率を推し量る上では
RentCafe.com
Rentometer.com
等の賃料変化の統計を公開しているウェブサイトが役に立ちます。
これらの統計を見ることでまずは
「この地域の賃料は着実に上昇している」
「その上昇率は今の時期は毎年〇%あたりだ」
という見立てがつくのです。
ちなみにカリフォルニア州は基本的に人口の減少が見られる州ですが、人口が減少するということは住に対する需要が減るわけですから、賃貸物件への需要も減少して家賃は良くて横ばい、或いは家賃が下がってくる物件もありそうです。
事実家賃が横ばいまたは減少している地域もあるのですが、実際にはロサンゼルス地区でも家賃が着実に上昇し続けているスポットが存在しています。
そこで当物件の近所の家賃推移を見てみると、
「家賃伸び率1%」
と出ています。
1%とは可愛い数字ですが、それでも今回使用している実例の家賃は$3,000前後ですから、1%でも約$300の上昇と結構なインパクトがあるのです。
Market Rent(市場家賃)はいくらか
そして地域市場全体の家賃の推移を確認したら、次に検証したいのがMarket Rent(市場家賃)です。
Market Rent(市場家賃)とはそのまま、現在のその市場で確認できる平均家賃のことになります。
- スタジオ
- 1ベッドルーム
- 2ベッドルーム
- 3ベッドルーム
にはそれぞれ、現在の市場家賃平均があります。
そうすると平均値が分かる上では、
「この物件の〇ルームの部屋は普通に貸し出せる状態であれば、$〇〇〇の賃料は可能なはずだ」
という見立てがつくのです。
その視点で数日前に見たレントロールを今一度見て、
Current Rent(現在の家賃)
Market Rent(市場平均家賃)
を比較してみましょう。
Status | Unit Type | Unit Size | Current Rent | Scheduled Gross Income | Market Rent | Market Rent per SF | Loss-To- Lease |
Occupied | 2+2 | 1012 | $3,850 | $46,200 | $3,850 | $3.80 | $0 |
Occupied | 2+2 | 947 | $3,500 | $42,000 | $3,603 | $3.80 | $103 |
Occupied | 1+1 | 689 | $2,800 | $33,600 | $2,800 | $4.06 | $0 |
Vacant | 1+1 | 704 | $2,850 | $34,200 | $2,850 | $4.05 | $0 |
Vacant | 1+1 | 704 | $2,850 | $34,200 | $2,850 | $4.05 | $0 |
Occupied | 2+2 | 885 | $3,350 | $40,200 | $3,367 | $3.80 | $17 |
Occupied | 2+2 (A) | 854 | $615 | $7,380 | $615 | $0.72 | $0 |
Occupied | 1+1 | 674 | $2,815 | $33,780 | $2,815 | $4.18 | $0 |
Occupied | 1+1 | 674 | $2,815 | $33,780 | $2,815 | $4.18 | $0 |
Occupied | 1+1 | 856 | $2,875 | $34,500 | $2,975 | $3.48 | $100 |
Occupied | 2+2 | 1012 | $3,900 | $46,800 | $4,048 | $4.00 | $148 |
Occupied | 2+2 | 947 | $3,500 | $42,000 | $3,603 | $3.80 | $103 |
Occupied | 1+1 (A) | 689 | $547 | $6,564 | $547 | $0.79 | $0 |
Occupied | 1+1 | 704 | $2,950 | $35,400 | $2,950 | $4.19 | $0 |
Occupied | 1+1 | 704 | $2,950 | $35,400 | $2,950 | $4.19 | $0 |
Occupied | 2+2 | 885 | $3,925 | $47,100 | $3,925 | $4.44 | $0 |
Occupied | 2+2 | 854 | $3,600 | $43,200 | $3,788 | $4.44 | $188 |
Occupied | 1+1 | 674 | $2,800 | $33,600 | $2,824 | $4.19 | $24 |
Occupied | 1+1 | 674 | $2,700 | $32,400 | $2,824 | $4.19 | $124 |
Occupied | 1+1 | 856 | $3,000 | $36,000 | $3,000 | $3.50 | $0 |
Occupied | 2+2 | 1012 | $4,175 | $50,100 | $4,175 | $4.13 | $0 |
Occupied | 2+2 | 947 | $3,820 | $45,840 | $3,907 | $4.13 | $87 |
Occupied | 1+1 | 689 | $3,100 | $37,200 | $3,100 | $4.50 | $0 |
Occupied | 1+1 | 704 | $3,100 | $37,200 | $3,167 | $4.50 | $67 |
Occupied | 1+1 | 704 | $3,100 | $37,200 | $3,167 | $4.50 | $67 |
Occupied | 2+2 | 885 | $4,150 | $49,800 | $4,150 | $4.69 | $0 |
Occupied | 2+2 | 854 | $3,800 | $45,600 | $4,005 | $4.69 | $205 |
Occupied | 1+1 | 674 | $2,900 | $34,800 | $3,033 | $4.50 | $133 |
Occupied | 1+1 (A) | 674 | $547 | $6,564 | $547 | $0.81 | $0 |
Vacant | 1+1 | 856 | $3,200 | $38,400 | $3,200 | $3.74 | $0 |
# of Units Occupied | Percentage of Total | Rentable SF | Average Unit Rent | SGI | Market SGI | Market Rent/SF | Loss To Lease |
27 | 90% | 23,997 | $3,218 | $1,081,008 | $1,097,392 | $3.81 | $1,365 |
上記を見て気づくことはありませんでしょうか。
どうやら、本案件は
Current Rent(現在の家賃)
Market Rent(市場平均家賃)
の2つはほぼ同じであり、平均家賃よりも若干低い戸が見られる程度です。
ちなみにこの物件はほぼ新築と同様の状態となり、平均よりも少し上の賃料を目指しても良いくらいです。
そうするとこの物件の家賃の伸び率の見立てとしては
「物件そのものの賃貸力としては、ほぼ天井にきている」
「これからの家賃の伸び率は、ほぼ市場と同様の伸び率に留まる可能性が高い」
ということが分かります。
明日に続けます。
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