こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
リアルタイムのケーススタディとして、タンパ市場のエクイティ投資案件を深掘りしています。
市場の成長が間違いないと判断する場合に限りMemorandum(メモランダム)をしてその情報詳細を深く調べていくべきですが、最初にざっくりと見ていくべきは見込みリターンです。
最初のページに
Equity Raise (エクイティ調達) $25.2M
Purchase Price (購入価格) $62.5M
Purchase Price:Per Unit (単位あたり購入価格) ~ $305K
Total Cash Flow from Initial Equity Investment (初期エクイティ投資からの総キャッシュフロー) ~ $24.9M
Preferred Annual Return (優先年間リターン) 7.00%
Projected Net Annual Return (予想純年間リターン) 14.1%
Projected Net Equity Multiple (予想純エクイティ乗数) 1.99x
Projected Hold (予想保有期間) 5-7 years
これらの情報があり、リターンそのものの大局は投下した資金に対して
「年間7%のキャッシュフローを受け取ることができ、エグジットまでに投資金額が2倍近くになって返ってくる」
とされています。
ここで間違いなく捉えておきたいのは、「2倍近くになって返ってくる」という意味は
「約束の年に受け取るキャッシュフローとは別に、初期の投資金額が2倍近くなって返ってくる」
という意味ではなく、
「約束の年に受け取るキャッシュフローの累積と売却後に手にするキャピタルゲインを合わせて加味すると、初期の投資金額が2倍近くなる」
という意味です。
ここから数字をより深く見ていきます。
借金の数字を確認
本案件の借金に目をやると、

このように融資を受ける額は$40,625,000となっています。
40ミリオン、、日本円にして今のレートで60億の借金とは、なかなかスケールの大きい案件であることが分かります。
ちなみに度々
LP(Limited Partner、リミテッドパートナー)
GP(General Partner、ゼネラルパートナー)
について触れていますが、一般投資家のLP達は自分が投資した金額にのみ責任を負う立場ですが、主催であるGPたちはその運用そのものに全責任を負っています。
すなわち40ミリオンの借金に対して責任を負っているわけで、普通に考えれば心臓にかなり多くの毛が生えていなければ、これだけの借金に手を出そうとは思わないはずです。
そう考えるとLPとして出資する場合はその責任は出資額の範囲のみですから、遥かにGPよりもリスクが少なくことになります。
そしてこの借金はLTV(Loan To Value、物件価値に対する借金の割合)で言うと65.0%と、この規模の案件にしてはそれなりに大きい割合です。
この規模になると融資を組む際にはGPの実績も大きく問われることになり、その意味では65.0%も融資を組めるのであれば、それなりに信頼と実績のあるGPだと言えることになります。
そして気になる金利は4.91%と、昨今のモーゲージ金利と比べると遥かに低いようです。
「Amortized 30」とありますから、その返済は割賦償還30年固定金利であることが分かります。
その返済額は元金と利息を合わせて年間に$2,590,257となるようです。
そしてDSCRは1.22xと書いてありますが、DSCRはDebt Service Coverage Ratioの略で、日本語的にいえば
「借金返済額に対する純収入の割合」
のことです。
単純に考えて
家賃収入 - 各支出
この年間の結果がNOI(Net Operation Income、年間純収入)ということになります。
このNOIこそが借金に充てられるお金なわけで、当然ながらNOIは年間の借金返済総額を十分に返せる額でなくてはなりません。
式としては
NOI / 年間借金返済総額
で、この数字が1.22ということは、この案件は十分に借金を返済できる見込みがあるということになります。
。。。
上記のように
「本案件はどれくらいの借金をするのか」
「どれくらい返せる見込みなのか」
を予め理解しておくことは重要です。
一番のキモになる数字は最後に示したDSCRで、健全に借金を返済出来る見込みの案件か否かは、この数字を見て一発で分かるのです。
このDSCRの数字は確実に1以上でなくてはならず、数字が大きいほど安心感があることになります。
ちなみに融資する側とすれば1.2あたりが程よい按配と考える傾向があり、その意味ではこの案件もこのDSCRをもってLTVが65%にもなる融資を判断している、ということも言えるのです。
そしてこのプロジェクトそのものは7年でエグジットする前提になっており、出資する投資家としてはその間に総額で出資額の2倍近いリターンを得られる、という見立てになっています。
ここから、リターンのより具体的な数字について見ていきましょう。
明日に続けます。