昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日はモーゲージ申請が急増しつつある傾向についてお伝えしましたが、それを反映してかカリフォルニア州の住宅所有率が13年ぶりの高水準に達したようです。
このニュースそのものは一見、州内の住宅市場に明るい兆しが見えたかのように思えますが、その背後には複雑な課題がありそうです。
米国政府そのものが過去、米国市民に家を持たせるように様々な施策を打ち出してきました。
その是非は横に、少なくとも
「家を持てることは豊かでよいことだ」
という前提に様々な施策が実施されてきたのです。
その意味では住宅所有率が上がるのは良いことかもしれませんが、特に昨今の経済状況かでは、その反動ともいえる現象も伴います。
このあたりを深堀して視野を広めてみましょう。
住宅所有率の上昇の要因
まず、カリフォルニア州の住宅所有率が上昇した主な要因として考えられるのは、経済の回復と低金利環境です。
過去数年にわたり連邦準備制度(Fed)は低金利政策を維持し、住宅ローンの金利が歴史的な低水準にとどまりました。
これにより、多くの人々が住宅購入に踏み切ることができました。
さらに、コロナ禍によるリモートワークの普及も大きな要因です。
リモートワークが一般的になることで都市部から郊外や地方への移住が進み、住宅需要が広がりました。
特にカリフォルニア州では高騰する家賃に対する不満が高まっており、住宅購入への意欲が強まったと言えます(バカ高い家賃を支払い続けるのなら、所有してモーゲージを支払った方がいい、という論)。
けれどもこの所有率の上昇には「カッチ」があります。
「カッチ」とは一見して有利に見える事象の背後に潜む不都合な条件や問題点を指す言葉です。
率直に、今の状況下では住宅市場の活況が全ての住民に恩恵をもたらしているわけではありません。
特に中低所得層や若年層にとっては、依然として住宅購入が難しい状況が続いているのです。
その一つの大きな要因は言わずもがな、住宅価格の高騰です。
住宅需要の増加と供給の不足が相まって、住宅価格は上昇の一途をたどっています。
具体的には、カリフォルニア州の住宅所有率は2023年第1四半期には52.4%であったのに対し、2024年第1四半期には54.1%に上昇しました。
けれども同期間の住宅価格中央値は約7%上昇しており、特に新規参入者にとっては依然として厳しい状況が続いています。
また、カリフォルニア州では住宅建設の規制が厳しく、新規住宅の供給が追いついていないことも問題です。
これにより既存の中古住宅価格がさらに高騰し、手が届かない状況が続いています。
グラフから読み解く住宅市場の動向
そこでカリフォルニアの物件所有率の変化を示すグラフを見てみましょう。
このグラフによると2011年には住宅所有率が50.1%であり、その後低迷が続きました。
けれども2020年以降、住宅所有率は緩やかに上昇し始め、2024年には54.1%に達しています。
この間の上昇率は約8%であり、特に2022年から2023年にかけての上昇が顕著です。
要するに、
「物件を持てる世帯と持てない世帯の差が顕著」
になってきたことが分かります。
このような状況を打破するためには、ここからますますカリフォルニア州政府や地方自治体が積極的に対策を講じる必要がありそうです。
何よりも住宅供給の増加が急務であり、住宅建設の規制を緩和し、より多くの住宅が建設されるよう支援することが求められます。
また、低所得層向けの住宅支援策も強化する必要があります。
住宅購入支援プログラム
低金利の住宅ローンの提供
補助金の支給
などが考えられますが、現行のものに改善を加え、より幅広い層が住宅を所有する機会を得る上では必須の施策です。
さらにリモートワークの普及に伴い、地方への移住を支援する政策も重要です。
地方自治体が魅力的な住宅プログラムを提供して都市部からの移住を促進することで、地方の活性化と都市部の過密緩和が期待されます。
どうしても人々は便利な場所に集まる傾向は避けられませんが、人口密度は物件価格の上昇に寄与することになりますから、人口密度を下げる施策が有効なのです。
結果として、カリフォルニア州の住宅市場がどのように変化するかは多くの要因に左右されますが、経済状況の変化、政策の動向、そして社会的なトレンドが物件価格に影響を与えそうです。
また、ここから注目なのが、テクノロジーの進化も住宅市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。
例えばスマートホーム技術の普及やエネルギー効率の高い住宅の増加が、住宅市場の需要を刺激するかもしれません。
さらに、サステナビリティへの関心が高まる中で、エコフレンドリーな住宅の需要が増加することも考えられます。
このあたりが進むと住宅市場はより多様化し、さまざまなニーズに対応できるようになるのではないでしょうか。
今回カリフォルニア州の住宅所有率が13年ぶりの高水準に達したことは、確かに喜ばしいニュースです。
けれども前述のように、その裏には依然として多くの課題が存在し、特に住宅価格の高騰や供給不足が深刻な問題となっており中低所得層や若年層にとっては厳しい状況が続いています。
この状況を改善する上では、やはり政府や地方自治体が積極的に対策を講じ、よりインクルーシブな住宅市場を実現する必要があると思うのです。
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