こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
近年、住宅市場は大きな変動を見せています。約2年前、住宅ローン金利が急上昇したことにより、歴史的な高騰を続けていた住宅市場にブレーキがかかりました。
その結果販売件数は急減し、多くの人々が手の届かない価格帯に直面しています。
けれどもここ最近、住宅市場の専門家たちは供給と需要の法則が市場の現状に追いついてきているのではないかと推測から、一部では市場の調整やクラッシュの予測が出ています。
本項では住宅市場の現状を分析し、今後の動向を占ってみましょう。
全国的な価格上昇の現実
住宅ローン金利の上昇は買い手の減少を招き、販売件数の急減をもたらしました。
それにもかかわらず、全国的には住宅価格が上昇し続けています。
この現象はすでに数十年で最も手の届かない価格帯に達している住宅市場にさらなる圧力をかけていますが、なぜこのような状況が続いているのでしょうか?
一つには
「現状が崩れ始めている兆候」
であるとも言えます。
市場のデータを分析すると住宅市場が一枚岩ではないことが明らか。
ある市場は繁栄し、他の市場は衰退しています。
全米の150の主要都市のうち、24の都市ではすでに前年比でリスティング価格が下落しており、そのうち13の都市は2年前と比べても下落しています。
この下降トレンドが全米の住宅市場全体を公式な調整領域に押し込む可能性はあるでしょうか。
供給の増加と市場滞留時間の延長
まず、前年と比較して販売物件の数が最も増加し、市場に出ている期間が長くなっている住宅市場を特定し、これらの変数を2年前と比較して確認してみます。
そして住宅市場が急変する前の2019年と比較して、現在のリスティングレベルがそれを上回っている都市のみを対象にしてみると、
「供給が需要よりも速く増加すると、最終的には価格が調整される必要がある」
という現状が見えてきます。

その上で、地域ごとの詳細は下記のとおりです。
フロリダ州
まず、フロリダ州を見てみましょう。
フロリダは多くの人にとって多様な意味を持つ場所です。
リタイアメント先、バケーションの目的地、風変わりなホットスポット。
けれども現在の住宅市場の観点から見ると、均衡を失いつつある市場の代表例かもしれません。
全米の150の主要都市に該当するフロリダの15市場のうち、6市場ではすでに前年比で価格が下落しています。
具体例としては、マイアミの中央値リスティング価格は前年比で8%下落しています。
マイアミから西に位置するガルフコーストの南端にあるネープルズでは、前年同時期と比べて中央値リスティング価格が13%下落。
けれどもそのうち5市場では依然として前年比で価格が上昇している一方で、市場条件から見ると買い手の需要に応じて価格が下がる必要があるかもしれません。
Palm Bay-Melbourne-Titusvilleメトロでは、2022年5月から2024年5月にかけてアクティブリスティングの数が約1,100から3,600以上に3倍以上増加し、平均リスティング期間は約1か月から約7週間に延びています。
それにもかかわらず平方フィート当たりの中央値価格は前年比で5%上昇しており、2年前と比べて約3%上昇しているのです。
テキサス州
この考え方がテキサスでも当てはまります。
ここ数年、州の手頃な価格に惹かれて需要が増加してきました。
Corpus Christiはリストのトップに立つメトロで、平方フィート当たりの中央値価格は前年比で8%、2年前と比べて14%増加しています。
それにもかかわらず、供給の増加と市場に出ている期間の延長の圧力があります。
平均市場期間は約5週間からほぼ10週間に延びています。
売り手は『どんな価格でも出せば売れる』と考える傾向がありますが、実際は買い手はその価格にはいない場合も多いもの。
市場に出ている期間が延びると、もはや魅力的ではなくなるのです。
またMcAllenでは前年比で価格が4%上昇しており、Killeenでは価格が前年比で横ばいですが、2年前と比べて12%上昇しています。
リスティングレベルと市場に出ている期間が転換点にあるようで、Killeenではパンデミック前の約2倍の販売物件があり、2年前と比べて約4倍のリスティングレベルに達しています。
コロラド州デンバー
そしてリストの中で最も販売速度が遅くなったのはデンバーです。
2年前、平均住宅はわずか10日で売れました。
現在市場に出ている期間はほぼ3倍になり、5月には29日となりました。
けれども平方フィート当たりの価格は依然として上昇傾向にあり、前年比で2%、2年前と比べて5%増加しています。
パンデミック中に販売物件数が半減した後、現在ではパンデミック前のレベルをわずかに上回っているようです。
デンバーの歴史的に強力な市場にもかかわらず、在庫の大幅な増加により調整の瀬戸際にある可能性があります。
このことは非常に高い売り手価格の引き下げ率によって証明されており、デンバーでは、57%の住宅が価格を引き下げています。
かなりの異常値が確認されているわけです。
。。。
かくして住宅市場の動向を分析すると、地域ごとに異なるダイナミクスが見られます。
全国的には価格が上昇し続けている一方で、一部の市場ではすでに価格が下落しており、今後さらに下落する可能性があります。
特に、供給が需要を上回る市場では、価格の調整が避けられないのでは。
とはいえ、価格の調整が必ずしも市場のクラッシュを意味するわけではありません。
市場がバランスを取り戻すことで、健全な価格形成が進むことが期待されます。
住宅ローン金利の動向、地域経済の状況、供給と需要のバランスなど、さまざまな要因が市場に影響を与えます。
買い手や売り手は、これらの要因を注意深く監視し、適切な判断を下すための情報を持つことが重要なのです。
今後も住宅市場がどのように進展するかを予測するためには地域ごとの詳細なデータ分析が不可欠であり、市場の変動に柔軟に対応し、適切な戦略を立てることで買い手も売り手も有利なポジションを保つことができるのではないでしょうか。
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