こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産用語についてお伝えしています。
今日は「Easement(地役権)」についてです。
不動産取引において「Easement(地役権)」という用語は、あまり馴染みがないかもしれません。
けれどもEasementは不動産の権利に関わる非常に重要な概念で、特に土地の所有権や利用に大きな影響を与えることになります。
本項ではEasement(地役権)とは何か、どのような種類があり具体的にどのように活用されるのか、また、Easementが不動産取引にどのように影響するのかを詳しく見ていきましょう。
Easement(地役権)とは
Easement(地役権)とは、ある土地の所有者が他人の土地を一定の目的で利用する権利を指します。
この「他人の土地の一部を使用する権利」はたとえその土地の所有者が別人であっても、特定の目的のためにその土地を使用することが許可される場合に成立するものです。
例えば隣接する土地に入るための通路として他人の土地を通過する権利が典型的なEasementの例です。
この権利は不動産の所有権に付随する形で存在することが多く、場合によっては土地の売却や譲渡が行われてもEasementはそのまま維持されます。
Easementの種類
Easementにはいくつかの異なる種類があり、それぞれの権利は特定の状況や目的に応じて適用されます。
ここでは代表的なEasementの例をみていきましょう。
- 通行権(Easement of Access)
通行権とは、ある土地を通過する権利です。
最も一般的なEasementであり、例えば自分の家が他人の土地に囲まれている場合はその土地を通って公道にアクセスするための権利がこれに該当します。
これがなければ道路に出られない場合もあり、非常に重要な権利です。
- ユーティリティー権(Utility Easement)
ユーティリティー権は公共サービスのための設備を設置・維持するために使用される土地に対する権利です。
例えば電線やガス管、水道管、下水管などが敷設されている土地には、これらのインフラを設置するためのEasementが設定されることがあります。
これにより、公共サービス提供者が設備を維持・修理するために私有地にアクセスする権利が保障されます。
- 保存Easement(Conservation Easement)
保存Easementとは、自然環境や文化的な資源を保護するために設定される権利です。
これにより特定の土地は開発されず、自然環境の保護や歴史的建造物の保存が保証されます。
保存Easementは環境保護団体や政府機関によって設定されることが多く、土地の所有者はその土地を保護する義務を負います。
- 相続的Easement(Easement Appurtenant)
相続的Easementは、特定の土地に対して恒久的に設定されるEasementです。
例えばある土地に通行権が設定されている場合、その土地が売却されたとしても、通行権は新しい所有者に引き継がれます。
これはEasementが土地に付随するものであり、特定の所有者に依存しないことを意味します。
- 個人的Easement(Easement in Gross)
個人的Easementは、特定の人物に対して設定されるEasementです。
例えば、ある人物が他人の土地を通過する権利を持っている場合、そのEasementはその人にのみ付与され、土地の所有者が変わってもEasementは消滅します。
このEasementは個人に対して一時的に与えられる場合が多いです。

Easementが不動産取引に与える影響
Easementは不動産取引に大きな影響を与えることがあります。
不動産の所有権や使用方法に制約が課されるため、買主や売主にとっては注意が必要です。具体的にどのような影響があるか、いくつかのポイントをみていきましょう。
- 土地の利用制限
Easementが設定されている土地は、そのEasementの目的に従って利用が制限されることがあります。
例えばユーティリティーEasementが設定されている土地では、その部分に建物を建てることができなかったり、自由に土地を使用できない場合があります。
買主は購入する土地にEasementが設定されているかどうかを確認し、それがどのような制約をもたらすかを理解する必要があります。
- 所有権の制限
Easementが設定されている土地は、完全な所有権が移転しない場合があります。例えば、通行権が設定されている土地では、その権利が継続する限り、他人が土地を通行することを拒否することはできません。これにより、土地の所有者はその土地を自由に使用する権利が制約されることになります。
- 物件の価値に影響
Easementが設定されていることは、物件の価値にも影響を与えることがあります。
Easementが設定されている土地は、その制約のために市場価格が下がることがあります。
特にユーティリティーEasementや保存Easementなど土地の利用を制限するEasementがある場合、その影響は大きくなります。
- 法律上のトラブルの可能性
Easementが設定されている土地では、その権利を巡って法律上のトラブルが発生することもあります。
例えば、通行権を巡って近隣住民との争いが起こることや、ユーティリティー会社との間で設備の維持管理に関する問題が発生することがあります。
不動産取引の際にはEasementに関する権利と義務をしっかりと理解し、将来的なトラブルを避けるための対策を講じることが重要です。
Easement(地役権)について、明日に続けます。
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