こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産用語についてお伝えしています。
今日は「Eminent Domain(収用権)」です。
不動産に関わる取引や所有権の中で、収用権という概念もまたとても重要で、特に公共事業やインフラ整備に関連する場面で頻繁に登場します。
この権利は不動産所有者にとって非常にインパクトの大きいものであり、所有している土地が突然公的な目的のために強制的に収用されるという状況に直面することがあるため、しっかりと理解しておくことが必要があります。
今回は、Eminent Domain(収用権)の定義や仕組み、どのように適用されるのか、そして具体的な事例や対応策について詳しく見ていきましょう。
Eminent Domain(収用権)とは
Eminent Domain(収用権)とは、政府や地方自治体が公共の利益のために、私有財産を強制的に収用する権利を指します。
この権利はアメリカ合衆国憲法修正第5条によって規定されており、政府が公共の目的のために私有地を収用する際には、「適正な補償」を所有者に提供しなければならないという要件が定められています。
具体的には、道路や公共施設の建設、鉄道や高速道路、学校、病院、公共公園などの公共事業のために、個人の所有する土地や財産が必要になる場合に政府がこの権利を行使します。
日本でも公道の整備で周辺の家々が影響を受ける等で、馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
Eminent Domainのプロセス
Eminent Domainのプロセスは、通常、次の手順で進行します。
- 公共の目的の決定
最初に、政府または地方自治体が特定の公共事業を行うために私有財産が必要であることを決定します。
この公共の目的は、公共の福祉や安全、インフラの改善、環境保護などが含まれます。
- 収用される財産の特定
次に必要な土地や財産が特定され、その所有者に対して通知が送られます。
この時点で所有者には政府から正式な通知が届き、どの土地が収用されるのか、どのような目的で使用されるのかが明示されます。
- 補償の提示
政府は収用される土地や財産に対して適正な補償額を提示します。
この補償額は一般的には市場価格を基準に計算されますが、補償が妥当でないと感じた場合、所有者は異議を申し立てることができます。
- 交渉と合意
所有者と政府との間で補償額に関する交渉が行われ、合意に達すれば、取引は進行します。
けれども、交渉が決裂した場合には、裁判所が介入して最終的な判断を下します。
- 裁判所の判断と収用の実施
最終的に裁判所が政府の収用権の正当性と補償額を評価し、収用が正当であると判断した場合、所有者は補償を受け取ることとなり土地は政府の所有となります。

Eminent Domainの事例
Eminent Domainの具体的な事例を挙げてみましょう。
事例1: 高速道路建設のための収用
ある都市で高速道路を拡張する計画が立てられ、沿線の土地が収用されることになりました。
Fさんは、収用対象の土地を所有しており、その土地には彼の住居も含まれていました。
政府から正式に通知があり、Fさんには補償額として市場価格が提示されました。
Fさんはその額に納得できず、弁護士を通じて異議を申し立てました。
最終的に裁判所での審理の結果、補償額がわずかに増額され、Fさんは家を引き渡すこととなりました。
このように補償額に不満がある場合でも、適切な手続きを経て異議を申し立てることが可能です。
事例2: 公共公園のための収用
Gさんの家族は代々広大な農地を所有していましたが、都市の拡大に伴いその農地が公共公園として整備されることが決まりました。
政府はその土地を収用するため、Gさんに補償額を提示しました。
Gさんは家族の歴史が詰まった土地を手放すことに抵抗がありましたが、最終的には補償を受け入れ、土地を政府に譲渡しました。
このようなケースでは感情的な要因も絡むことが多く、所有者にとっては難しい決断を迫られることがあります。
Eminent Domainのメリットとデメリット
Eminent Domainには、公共の利益を促進するという重要な役割がありますが、一方で私有財産を強制的に収用するという点で所有者にとっては負の側面も存在します。
ここでは、Eminent Domainのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
公共の利益を促進
Eminent Domainによって、公共の道路、学校、病院などが建設され、社会全体の利益が向上します。これにより、インフラが改善され、地域住民にとっての生活の質が向上することが期待されます。
インフラの整備
特に都市の拡大や公共事業の拡充において、私有財産を適切に収用することで、インフラの整備が円滑に進みます。これにより、交通の利便性が向上し、経済活動が活発になることが期待されます。
環境保護
Eminent Domainを利用して、自然保護区や公園を整備することも可能です。これにより、都市開発の中でも自然環境を保護し、次世代に引き継ぐことができます。
デメリット
私有財産の喪失
Eminent Domainによって、所有者は自分の財産を強制的に手放さなければならないことがあります。感情的な結びつきや生活の拠点としての財産を失うことは、所有者にとって大きな打撃となります。
補償の問題
提示される補償額が市場価格に基づくとはいえ、所有者が納得できない場合も多々あります。裁判を通じて異議を申し立てることはできますが、長期的な法的手続きが必要となり、時間とコストがかかることがあります。
地域社会への影響
Eminent Domainによって、一部の地域社会が分断されたり、移転を余儀なくされることがあります。特に小規模なコミュニティでは収用によって住民が離散し、地域の連帯感が失われることもあります。
Eminent Domain(収用権)について、明日に続けます。
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