こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産用語の中でも「Eminent Domain(収用権)」についてお伝えしています。
事が発生した場合の対策と所有者の権利から、本日も続けます。
Eminent Domainの対策と所有者の権利
Eminent Domainの通知を受けた場合、所有者にはいくつかの対策を講じる権利があります。
ここでは、収用に対する所有者の対応策について簡単にみていきましょう。
- 異議を申し立てる権利
所有者は、収用や補償額に対して異議を申し立てる権利を有しています。
収用が適正でないと感じる場合や、補償額が不十分だと考える場合は、弁護士を通じて異議を申し立てることが可能です。
この手続きは時間がかかることもありますが、正当な権利を主張するための重要なステップです。
- 専門家の助言を受ける
Eminent Domainに直面した場合、不動産弁護士や評価士の助言を受けることが非常に重要です。
専門家は収用に関する法律や補償額の適正性について専門的な知識を持っており、所有者が不利な立場に立たないようにサポートしてくれます。
不動産弁護士は所有者の権利を守り、収用に関する交渉を有利に進めるための重要な役割を果たします。
また評価士は提示された補償額が市場価値に見合っているかどうかを確認し、必要であれば異議を申し立てるための証拠を提供してくれます。
- 交渉による補償額の引き上げ
補償額が不適正だと感じた場合は、政府や地方自治体と交渉を行い、適正な価格を求めることが可能です。
この交渉は、弁護士や不動産の専門家の助言を基に進めることが重要です。
多くの場合、提示された初回の補償額は交渉の余地があるため、所有者としては自分の権利を主張し、できるだけ有利な条件を引き出すことが求められます。
- 代替地の提供を求める
一部のケースでは、金銭的な補償に加えて、代替地の提供を求めることもできます。
特に収用によって事業用の土地を失ったり、自宅を手放さなければならない場合、代替地が提供されることで新しい土地で事業や生活を再建することができます。
このような交渉は難しい場合もありますが、所有者としての選択肢として考慮する価値があります。
- 裁判所での異議申し立て
交渉が決裂した場合や、政府が所有者の権利を侵害していると感じた場合、裁判所での異議申し立てが最終手段となります。
裁判を通じて、収用の正当性や補償額が適正かどうかが審理されます。
このプロセスは時間と費用がかかるため、弁護士の助言を受けて慎重に進める必要があります。
けれども場合によっては、所有者に有利な判決が下され、より高い補償を得られることがあります。
Eminent Domainに関連する法律
Eminent Domainはアメリカ合衆国憲法修正第5条の
「テーキング条項」(Taking Clause)
に基づいて行使されます。
この条項には、
「私有財産は公共のため、適正な補償を伴わなければ収用されない」
と明記されています。
これにより、政府は公共の利益のために収用を行うことができるものの、適正な補償が所有者に提供されなければならないことが保障されているわけです。
また、連邦および州法によってもEminent Domainの行使は規定されており、各州には収用に関する独自のルールが存在します。
例えば一部の州では補償額が市場価値に基づくだけでなく、移転に伴う追加費用や事業の中断による損失も考慮される場合があります。
これにより、所有者が不当に損害を被ることを防ぐための法的枠組みが整えられています。

Eminent Domainにおける最新の動向
近年、Eminent Domainに関する議論は活発化しています。
特に民間企業がインフラ整備を行う際に、公共の利益を主張して私有財産を収用するケースが増えており、その正当性が問われることがあります。
例えば大規模なショッピングモールや商業施設を建設するためにEminent Domainを行使する場合、果たしてそれが本当に公共の利益になるのかどうかが問題視されています。
また、エネルギーインフラの整備、特にパイプラインの建設に関連する収用が大きな注目を集めています。
これらのプロジェクトでは広大な土地が必要となるため、多くの土地所有者がEminent Domainの対象となることがあり、その正当性や補償額についての法廷闘争が頻繁に発生しています。
いずれにせよ、Eminent Domainは公共の利益のために私有財産を収用する強力な権利ですが、所有者としてもその権利に対して適切な対応を取ることが可能です。
以下のポイントを押さえておくことで、Eminent Domainの通知を受けた場合でも、適切に対応することができると思います。
通知を受けたらすぐに対応する
Eminent Domainの通知を受けた場合、できるだけ早く弁護士や不動産専門家に相談することが重要です。時間をかけずに行動を起こすことで、交渉の余地を広げることができます。
補償額が適正かを確認する
提示された補償額が市場価格に基づいているかどうかを確認し、納得できない場合は異議を申し立てることが可能です。評価士を雇って、公正な価格を調査してもらうことが有効です。
裁判所での異議申し立ても選択肢として考慮する
最終的には、法的な措置を取ることも選択肢の一つです。弁護士と協力し、裁判所で公正な判断を求めることができます。
感情面でのサポート
財産を手放すことは、単なる金銭的な問題ではなく、感情的な側面も大きく関わります。家族の思い出が詰まった土地や建物を失うことは大きなストレスとなりますので、感情的なサポートを求めることも必要です。
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かくして、Eminent Domain(収用権)は不動産取引や所有権において避けては通れない重要な概念です。
公共の利益のために私有財産が収用されることがありますが、適正な補償が提供されることが保障されています。
けれども所有者にとっては財産を手放すこと自体が非常に大きな問題であり、補償額や交渉の過程で多くの課題が発生することがあります。
Eminent Domainの通知を受けた場合、早期に専門家の助言を受け、自分の権利を守るために適切な対応を取ることが重要です。
また感情的な面でもサポートを受けながら、冷静に対応することで、最良の結果を得ることができるのではないでしょうか。
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