こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産用語についてお伝えしています。
今日は「Cooperative Ownership(協同所有)」についてです。
アメリカでの不動産購入において、一般的な所有形態としては「Fee Simple(完全所有権)」や「Condominium(分譲マンション)」がありますが、特に都市部では「Cooperative Ownership(協同所有)」というユニークな所有形態が存在します。
この協同所有は他の所有形態とは大きく異なり、購入者が不動産そのものを購入するのではなく、物件を所有する法人の株式を購入する形で間接的に所有権を得るという仕組みです。
今回は、Cooperative Ownershipとは何か、その仕組みやメリット・デメリット、具体的な運営方法、そして購入時の注意点について詳しく見ていきましょう。
Cooperative Ownership(協同所有)とは
Cooperative Ownership(協同所有)とは物件全体を所有する会社や法人(協同組合)の株式を購入し、その一部として間接的に物件を所有する形態を指します。
つまり、購入者は物件そのものの所有者ではなく、その物件を所有している協同組合の一部の「株主」として権利を得ることになります。
この形態は特に、ニューヨーク市やサンフランシスコなどの都市部で広く見られる所有形態です。
協同所有の基本的な仕組み
協同所有における購入者は、物件全体を所有する協同組合の株式を購入し、その代わりに特定のユニット(例:アパートやフロア)を占有する権利を得ます。
協同所有では通常の分譲マンション(Condominium)のように個別の所有権が存在しないため、建物全体が一つの法人によって所有され、株主としてその一部を利用できる仕組みです。
具体的な仕組みを以下にまとめてみます。
株式の購入
協同所有において購入者が取得するのは、物件そのものではなく、その物件を所有する法人の株式です。例えば、100世帯の建物があれば、その建物を所有する法人が100株の株式を発行し、各株主がそれに対応するユニットを占有する権利を持ちます。
占有権の取得
株式の購入により、購入者は建物内の特定のユニットを占有する権利を取得しますが、所有権自体は得ません。このため、法的には購入者は賃借人として扱われ、協同組合とのリース契約を結ぶ形になります。
協同組合による管理
協同所有では、協同組合が建物全体を管理します。協同組合は、建物の維持管理、修繕、共用部分の運営、そして財務管理などを行います。株主である居住者は、定期的に協同組合に対して管理費や修繕積立金を支払う義務があります。
Cooperative Ownershipのメリット
協同所有にはいくつかのメリットがあります。
特に建物全体が一体として管理されるため、居住環境や資産管理において優れたメリットを提供することが多いです。
- コミュニティの一体感
協同所有では、株主が協同組合の一員として運営に参加するため、コミュニティの一体感が生まれやすいです。協同組合の役員会などでは、居住者全員が定期的に話し合い、建物の管理や運営に関する意思決定を共同で行います。このため、コミュニティとしての結束が強く、住環境の質が維持されやすくなります。
- 入居者の選定に関する影響力
協同組合の大きな特徴の一つは、新しい入居者を選定する際に、既存の株主(居住者)が審査に参加できる点です。新しい株主を受け入れる際、協同組合は申請者の財務状況や個人情報を詳細に審査し、全体として合意が得られた場合にのみ株式の売買が認められます。この仕組みによって、入居者の質が保たれ、建物全体の居住環境が管理されやすくなります。
- 資産価値の安定
協同所有の物件は、通常の分譲マンションに比べて資産価値が安定していることが多いです。これは、協同組合が全体として物件の管理を一括して行い、個々の株主の財政状況や管理に左右されることが少ないためです。特に、都市部の高級住宅街では、協同所有物件が資産価値を維持し続ける傾向があります。
- 固定費の管理
協同所有では、管理費や修繕積立金が協同組合によって一括して徴収・管理されます。このため、建物全体の管理が効率的に行われ、個別の所有者が突然高額な修繕費を負担するリスクが低減されます。

Cooperative Ownershipのデメリット
協同所有にはメリットが多い反面、いくつかのデメリットも存在します。特に、購入手続きや物件管理の点で他の所有形態に比べて制約が多い場合があります。
- 購入手続きの複雑さ
協同所有物件を購入する際は、通常の不動産取引に比べて手続きが複雑です。協同組合は新しい株主を審査する権利を持っており、申請者の財務状況、信用履歴、職業、生活背景などを厳しくチェックします。この審査に合格しない限り、物件を購入することはできません。特に、資産や収入に関する条件が厳しい物件では、購入が難しくなる場合があります。
- 使用に対する制約
協同所有物件では、株主は物件の使用に関して多くの制約を受けます。例えば、賃貸に出す際には協同組合の許可が必要であったり、リフォームや改装に関しても協同組合の承認が求められることが一般的です。個人の自由な裁量で物件を利用できる分譲マンションとは異なり、共同体としてのルールに従わなければならない点がデメリットと感じる方もいるでしょう。
- 市場性の低さ
協同所有物件は、通常の分譲マンションに比べて市場性が低いことがあります。特に、新しい入居者の選定が厳格に行われるため、物件を売却する際に買い手を見つけるのが難しくなる場合があります。また、投資目的での購入が制限されることが多いため、将来の資産価値の上昇を期待する投資家には向いていません。
- 協同組合の財政状況によるリスク
協同組合が財政的に健全でない場合、株主全体に影響が及ぶ可能性があります。例えば、建物の維持管理に十分な資金が確保できない場合、突然の追加費用の負担や建物の老朽化による価値の低下が生じるリスクがあります。購入する際は、協同組合の財政状況や管理体制をしっかり確認することが重要です。
Cooperative Ownership(協同所有)について、明日に続けます。
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