こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
「アメリカ不動産において、賃貸中の物件は売却できますか」
そんなご質問を頂戴することがありますが、答えはもちろんイエスです。
物件はあくまでもオーナー(賃貸人)のものであり、物件を所有する権利において
「賃貸中であれば、物件を売却してはならない」
という決まりは一切ありません。
通常はテナントが入ったままの物件であれば、そのまま賃貸物件としての売買取引となり、テナント側からすれば「オーナーチェンジ」ということになります。
そこで今回はテナントの目線から、
「アメリカで賃貸物件に住む借主が、貸主による物件売却に直面した場合の権利と注意点」
についてみていきましょう。
特に借主が知っておくべき基本的なルールや、トラブルを避けるための実践的なアドバイスを交えてみていきます。
借主はすぐに退去しなければならないのか?
まず最初に、貸主が物件を売却するからといって借主が即座に退去させられるわけではない、という点を把握しておきましょう。
以下の2つの契約形態によって対応が異なります。
- 固定期間のリース契約
固定期間の契約(例えば1年契約など)の場合、物件の売却後も新しいオーナーはその契約内容を引き継ぐ義務があります。
つまり契約期間中であれば、退去を求められることはありません。
- 月ごとの賃貸契約
月ごとの契約の場合、多くの州では貸主が少なくとも30日前に退去通知を出す必要があります。
ただし、一部の地域ではこれが60日以上であることもあるため、州ごとの法律を確認するようにしてください。
かくして借主としては契約形態をよく理解しておくことが安心して生活を続ける鍵となります。
売却後の契約条件が変わる可能性は?
物件を購入した新しいオーナーが契約条件を変更したいと考えることもありますが、それが固定期間のリース契約であれば変更は契約満了後まで行えません。
その一方で、月ごとの契約では新オーナーとの間で新たな条件が提示されることがあります。
こうした場合、借主としては次の選択肢を検討する必要があります。
- 新しい契約条件に合意する
新しい条件が受け入れられるものであれば、契約を更新して住み続けることができます。
- 退去して別の物件を探す
条件が合わない場合、通知期間内に新しい住居を見つける必要があります。
これらの選択を迫られる際、借主が冷静に判断できるよう、事前に物件探しの準備をしておくことが有効です。
契約書内の「売却によるリース終了条項」の確認が重要
契約書には、貸主が物件を売却する場合にリースが終了する旨の条項が含まれていることがあります。
これが「売却によるリース終了条項」であり、特に固定期間の契約においても例外的に早期退去を求められるケースとなります。
例えば、契約に「売却後30日以内に退去」と明記されている場合、物件の売却に伴い借主は30日以内に退去する必要があります。
このような条項が含まれているかどうかは、契約書を読み返すことで確認可能です。
また、契約締結時にこうした条項に交渉を持ち込むこともできます。
例えば、
「売却後60日間の猶予期間を設ける」
など、より借主に有利な条件を付け加えることを検討することが考えられます。

移転補償(Tenant Relocation Allowance)は期待できるか
一部の州や地域では、貸主が借主に対し引っ越し費用を補償する義務を負う場合があります。
特に大規模な改築やコンドミニアムへの転換を目的に物件を売却するケースで、こうした補償が適用されることがあります。
けれどもこのようなケースは例外的であり、全ての借主が補償を受けられるわけではありません。
移転補償が適用される条件については、やはり自分が最初に結んだ賃貸契約を見直すところから開始し、その後に管理会社に問い合わせるのが得策です。
退去時の敷金の扱いについて
敷金(セキュリティデポジット)は、退去時に貸主から返還されるべきものです。
新しいオーナーが物件を購入した場合でも敷金返還義務は物件に紐づくため、オーナーが代わっても返還義務が引き継がれます。
退去後に敷金をスムーズに受け取るためには、以下の点に注意しましょう。
- 退去前の状態確認
入居時と退去時の物件の状態を写真や書面で記録しておきましょう。
- 退去通知書の提出
退去日を明記した通知書を提出し、新しい住所を知らせておくことも重要です。
- 貸主との円滑なやりとり
退去時に貸主との間で物件の状態確認を行い、敷金返還のプロセスを明確にすることがトラブルを防ぐ鍵です。
。。。
貸主が物件を売却するという予期せぬ状況に直面するのはテナントとしては不安が伴いますが、借主には法律で守られた権利があります。
上記に書いたように、テナントとしては最初に交わした賃貸契約内容を正しく理解することが第一歩です。
そして売却が決まった場合には新オーナーとの対話を積極的に行い、退去通知や条件変更について早めに確認するのが得策だと思います。
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