こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
強制退去のパターンでもおそらく最も難しい、家族を強制退去させるアプローチについてお伝えしています。
リース契約のない家族やゲストを退去させる際には、法的手続きに加えて、感情的な要素や家族間の複雑な関係も絡むことがあります。
ありますというより、120%、他人以上に感情的な要素が加わってくることになります。
その関係性が近ければ近いほど、いざ強制退去を行うには難しいものがあるのではないでしょうか。
もっぱら、親族や知り合いを強制退去にせねばならないレベルであれば、そこには相応の理由があったことになります。
その意味では余計な個人的感情移入は必要ないかもしれませんが、とはいえ、どうしても人情が入り込んでしまうのが近しい人々への強制退去通告なのです。
そこでポイントはあくまでも
「勘定抜きに、法的にプロセスを進めていく」
ことになりますが、法的なプロセスを進める中で、家族間の感情的な要素や関係性をどのように配慮するかが大切なポイントになります。
二回目の今日はこの点を分かりやすく、仮のストーリーでお伝えしてみたいと思います。
知人を強制退去の例:ジョンソンさん
ある日、ジョンソンさん(仮名)は頭を抱えていました。
数年前に娘の友人であるケビン君(仮名)を家に住まわせることにしたのですが、彼が一向に自立する気配を見せず、むしろ家での生活が当然になってしまったのです。
このような
「娘(息子)のパートナーが転がり込む」
というのはよくあるパターンです。
ケビン君は当初、数ヶ月だけ住むと言っていましたが、気づけば3年が経過していました。
仕事も安定せず、生活費の一部を負担することもありません。
「娘のパートナーだから」
「彼もいいやつだから」
と自分を納得させていたジョンソンさんですが、ついに限界が。
ジョンソンさんは何度か
「そろそろ独立する時期だ」
と話しましたが、ケビン君は
「もう少しだけ時間をください」
と同じセリフを言い続けるばかりでした。
ついにはジョンソンさん自身の生活に影響が出始め、家族会議の結果、ケビン君に退去をお願いすること。
このような状況に陥ったとき、人は感情的になりがちですが、冷静に対処することが重要です。
特に娘など、パートナーとの関係そのものは良好なのであれば、とても冷静ではいられないでしょう。
またジョンソンさんにしても、ある意味、愛する娘ほど手ごわい相手はいません。
そこでジョンソンさんのケースを例に、具体的な手順を確認していきましょう。
まず、最初に行うべきことは退去してほしい意思を伝えることです。
ジョンソンさんは、ケビン君に具体的な退去期限を設け、
「この日までに新しい住まいを見つけてほしい」
と伝えました。
この一番最初のステップは口頭でもかまいません。
けれどもケビン君が動き出す気配がなかったため、ジョンソンさんは次のステップに進む必要がありました。

次に行うべきは、正式な退去通知を送ることです。
この通知には、以下のような内容を記載します。
- 退去期限:通常は州の法律に基づき3日から30日の間で設定されます。
- 退去理由:例えば、「家賃未払い」や「居住契約が存在しない」などが挙げられます。
- 条件を満たせば退去を回避できるかどうか:たとえば、「未払い分を支払えば退去しなくてよい」など、選択肢を明示します。
ジョンソンさんは地元の弁護士に相談し、ケビン君に対して法的に有効な退去通知を作成しました。
通知は書面で行い、ケビン君に直接手渡すか、証明郵便(暮らす建物が別の場合)で送付しました。
ここは極めて大切な場面ですが、口頭で伝えてもダメな場合、必ず専門家の指導のもとに文書での行動に移る必要があります。
書面に落とし込まれた段階で他人行儀な対応となりますので、感情的には複雑ですが、ここで踏み度留まるか否かが分岐点です。
そして通知後、それでもケビン君が退去しない場合、次のステップは裁判所に訴訟を起こす必要があります。
これは「不法占拠審理(Unlawful Detainer Hearing)」と呼ばれるもので、裁判官が退去命令を出すべきかどうかを判断することになり、裁判では以下のポイントが重要視されます。
- 通知が適切に行われたか(なので文書は絶対)
- 退去理由が正当か
- 被告が通知に従わなかった事実があるか
裁判所がジョンソンさんの訴えを認めた場合、退去命令(Order of Eviction)と占有権返還令(Writ of Possession)が発行されます。
そしてこの時点でケビン君がまだ退去しない場合、ジョンソンさんは地元の保安官に強制退去を依頼する必要があります。
端的に書きましたが、このようなプロセスは誰だって踏みたくないものです。
またこうした法的手続きは費用や時間がかかるだけでなく、家族間の関係にさらなる悪影響を及ぼす可能性すらあります。
そこで感情的にも被害を最小限にするべく、次のようなトラブル回避策を事前に検討することが有効だと思います。
- 法的アドバイスを事前に受ける
弁護士や法律相談所に相談し、手続きについて正確に理解しておくことが重要です。
- 第三者の介入を活用する
家族間の感情的な対立を防ぐために、調停者や家族カウンセラーを交える必要もあるかもしれません。
- 退去に対するインセンティブを提供する
甘い対応かもしれませんが、たとえば引っ越し費用を一部負担することで、より感情的にもおさえかつ退去を早めてもらえる可能性があります。
。。。
かくして、ジョンソンさんは、最終的にケビン君との話し合いで解決。
強制退去という最悪の結末は回避し、ケビン君に退去の必要性を理解してもらうと同時に、住まい探しのサポートを提供しました。
結果として法的手続きを回避し、円満に問題を解決することができたわけです。
このように退去手続きは感情的にも精神的にも負担が大きいですが、適切な準備と冷静な対応でスムーズな解決を目指すことが可能となります。
何かの参考になりましたら。
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