こんにちは。 アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日までは親類に対する強制退去の手順についてお伝えしました。
けっこうありがちなパターンですが、当然ながら、それ以上に多いのは他人様がテナントである場合の強制退去パターンです。
ただし強制退去も何も、ある意味その正反対で
「家賃を未払いのまま逃げていく」
というテナントもいます。
そこで今回はアメリカで賃貸物件を運営しているオーナーにとって大きな課題となる
「家賃未払いで勝手に退去されたテナントから家賃を回収する方法」
についてみていきましょう。
テナントが退去後に家賃を支払わずそのままいなくなってしまうケースは、特に感情的にも経済的にもオーナーにとって大きな負担となります。
ここでは必要な法的なプロセスと、具体的な対応方法を例を交えながらお伝えします。
あるオーナーの例:アンダーソンさんの場合
アンダーソンさん(仮名)は、カリフォルニア州で賃貸物件を2軒所有しているオーナーです。
ある日、1つの物件に住むテナントであるクリスさん(仮名)が、最後の3か月分の家賃を未払いのまま退去してしまいました。
クリスさんは最初の1年間契約どおりに家賃を支払っていましたが、契約更新後に徐々に支払いが遅れ始めました。
アンダーソンさんは何度も連絡を取りましたが、クリスさんは「すぐに支払う」と約束しながらも期日を守ることはありませんでした。
最終的には連絡が取れないままクリスさんが退去してしまい、物件も損傷を受けた状態で放置されていたのです。
アンダーソンさんはこの状況を前に、「このまま諦めるべきか、それとも家賃を回収できる方法があるのか」と悩んでいました。
未払い家賃を回収するための有効な手段
このような時、家賃を回収するには法的手段を利用することが重要です。
テナントが退去してしまった場合でも、オーナーには未払い家賃を請求する権利があります。
以下は、具体的なステップと有効な手段です。
ステップ1:証拠を集める
未払い家賃を回収するためには、テナントとの契約や支払い状況を示す証拠をしっかりと揃える必要があります。
アンダーソンさんの場合、以下の証拠を集めることが最初のステップでした。
- 賃貸契約書:テナントが支払うべき家賃の額や支払期日が記載されたもの。
- 支払い記録:これまでの家賃の支払履歴(銀行の取引明細や家賃管理システムの記録)。
- 未払いの通知:家賃未払いに関する通知を送った場合、そのコピー。
こうした証拠は、後の法的手続きで非常に重要になります。
ステップ2:テナントに連絡を取る
次に、可能であればテナントに直接連絡を取ります。
アンダーソンさんはまず、クリスさんの連絡先を通じてメッセージを送り、家賃の未払いについて話し合いを試みました。
この段階では、感情的にならず、事実に基づいた冷静な対応を心がけることが重要です。
連絡が取れた場合、次のような内容を伝えます。
- 未払い額とその明細
- 支払い期日
- 支払いが行われない場合の法的措置についての通知
もし連絡が取れない場合、次のステップに進む必要があります。
ステップ3:コレクションエージェンシーの活用
テナントが退去して音信不通になった場合、コレクションエージェンシー(債権回収会社)を利用することが有効な手段となります。
コレクションエージェンシーは、未払い家賃を回収する専門家であり、テナントの新しい住所や連絡先を特定することにも長けています。
アンダーソンさんもコレクションエージェンシーに依頼し、クリスさんの所在を突き止めることができました。
その後、エージェンシーがクリスさんに連絡を取り、未払い家賃についての交渉を開始しました。

ステップ4:スモールクレームコート(小額裁判所)で訴訟を起こす
コレクションエージェンシーを通じても解決しない場合、スモールクレームコートで訴訟を起こすことが次の選択肢です。
スモールクレームコートは、比較的小規模な金銭的トラブルを迅速かつ低コストで解決する場として活用できます。
アンダーソンさんは、クリスさんに対して未払い家賃3か月分を請求し、裁判所でその正当性を証明しました。
結果として裁判所は、クリスさんに未払い分の支払いを命じる判決を下しました。
ステップ5:給与差し押さえ(Wage Garnishment)
ここまで来ると法的手続きの厳格さが増しますが、裁判所の判決後も支払いが行われない場合、給与差し押さえを申請することが可能です。
これはテナントの雇用主を通じて給与の一部を差し押さえ、未払い家賃に充当する方法になります。
アンダーソンさんの場合も、最終的にクリスさんの雇用主を通じて未払い家賃を回収することができました。
。。。
たとえ話で進めましたが、誰だって訴訟までいくような展開は避けたいものです。
そこで未払い家賃の問題を防ぐためには、事前の対策が大切になります。
- 慎重なテナント審査
テナントの信用情報や収入証明をしっかりと確認し、信頼できる人物に物件を貸し出すようにしましょう。
- デポジットの設定
十分な金額のセキュリティデポジットを設定することで、家賃未払いのリスクを軽減できます。
- 明確な契約条件
賃貸契約書に未払い家賃が発生した場合のペナルティや退去条件を明記しておくことが重要です。
未払い家賃の回収は困難な場合もありますが、適切な手続きと冷静な対応で解決の道を見つけることができるものです。
なかなか心に負担のかかる作業でもありますが、適切に解決することでテナントにも不必要なトラブルを避ける助けになります。
そう考えると、心を鬼にして動く必要もあると思うのです。
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