こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
全米の不動産価値の推移について、興味深い結果が発表されています。
米国における住宅所有のメリットの一つは、世代を超えて引き継がれる資産を築く機会が得られることです。
特に近年、その価値が飛躍的に向上しています。
その理由は予想がつくかと思いますが、コロナ期間とその後における資産価値の増大です。
本項ではアメリカの物件所有者がどのようにして資産を増やしてきたのか、その背景にある市場動向をみながら今後の展望を考えてみましょう。
過去5年間の資産増加
全米不動産業者協会(National Association of Realtors, 以下NAR)の最新四半期報告によると、住宅所有者は2019年以降、約15万ドルの住宅資産を築いています。
これは年間およそ3万ドル(約450万円)に相当します。
この増加は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時期に始まり、現在も続いている住宅価格の急激な上昇が要因です。
例えば、2024年第3四半期(7月から9月)の既存一戸建て住宅の中央値は41万8,700ドルに達し、前年同期比で3.1%の上昇を示しました。
調査対象となった226の都市圏のうち196の都市で価格が上昇し、そのうち15の都市では10%以上の急増がみられています。
資産価値の増加メカニズム
住宅資産(エクイティ)は、住宅の市場価値から住宅ローンの残高を差し引いた金額で計算されます。
市場価格が上昇することで、住宅所有者が実質的に所有する割合が増加するのです。
2024年初頭のデータによると、住宅所有者が保有する総エクイティはなんと17兆ドルに達し、そのうち11兆ドルが現金化可能なエクイティ(キャッシュアウトリファイナンスやホームエクイティローン、クレジットラインなどを通じて換金可能)であるといいます。
このような資産増加は、所有者に多くの選択肢をもたらすことになり、たとえば債務返済や投資のためにエクイティを活用することが可能になります。
ただしその一方で、購入希望者にとっては住宅の手頃さが課題となっていることも事実です。
購入者にとっての課題:高額な価格と金利
NARのエコノミストは、
「市場の崩壊の可能性は最小限」
と述べています。
その理由としては、前述のように大規模なエクイティの蓄積です。
例えばモーゲージの返済が難しい局面になったとしても、住宅を売却することで差し押さえを回避できる可能性は高まります。
あるいはそれ以前に、物件価格が大幅に下落することがあったとしても十分なクッションが出来ているとも言えるため、全体として市場が崩壊する可能性は極めて低いという論になるのです。
その一方、購入希望者にとっては高金利が変わらぬ課題です。
2024年のほとんどの期間30年固定金利の住宅ローン金利は7%前後で推移しましたが、夏には連邦準備制度理事会(Fed)の利下げを見越して6%台前半に下がりました。
ただしその後金利は再び上昇し、現在は6.79%に達しています。
このあたりは来年のモーゲージ動向を見守る必要がありますが、金利はまだまだ高い水準にあることは間違いありません。

地域別価格上昇率の分析
このようなエクイティの増加は特定地域に限らず、全米で見られる傾向です。
都市順に並べてみると、以下の都市では特に高い価格上昇率が記録されています:
ラシーン(ウィスコンシン州) - 13.7%
ヤングスタウン(オハイオ州) - 13.1%
シラキュース(ニューヨーク州) - 13%
ピオリア(イリノイ州) - 12.4%
スプリングフィールド(イリノイ州) - 12.3%
バーリントン(バーモント州) - 11.7%
シュリーブポート(ルイジアナ州) - 11.5%
ロックフォード(イリノイ州) - 11.1%
ディケーター(イリノイ州) - 10.9%
ノーウィッチ(コネチカット州) - 10.6%
これらの地域ではパンデミック以降の需要増加が顕著であり、価格上昇に拍車をかけているようです。
今後の市場展望と住宅所有者への影響
2025年以降の価格動向ですが、現在の市場動向から判断すると、住宅価格が大幅に下落する可能性は低いとされています。
市場崩壊が避けられる理由として、
大規模なエクイティの蓄積:住宅所有者が売却や資金調達を選択できる柔軟性
需要と供給の不均衡:住宅の供給不足が価格を支える
といった点が挙げられます。
購入希望者にとっては価格と金利の上昇が二重の壁となっている一方で、所有者にとってはこれまで以上に価値の高い資産を保有している状況です。
同時に住宅所有は単なる居住の手段を超えた資産形成の一環として、ますます重要性を増しています。
住宅価格の上昇が続く限り所有者のエクイティはさらに増加し、財務的な柔軟性が広がると予想されるわけです。
一方で購入者は慎重な計画を立て、市場動向に目を光らせる必要があります。
一つだけ間違いなく言えることは、住宅所有は世代を超えた財産形成の基盤であり続けるということです。
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