こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
市場の動きについてお伝えしていますが、今日は視点を変えて、アメリカの『ジェネレーションX』の動きに注目していきます。
アメリカではミレニアル世代、Z世代、Gen Xの三世代は、それぞれ異なる時代背景や価値観を持ち、不動産市場やライフスタイルにも独自の影響を与えています。
ミレニアル世代(1981年~1996年頃生まれ)は、インターネットやスマートフォンの普及期に成長したデジタルネイティブの先駆けであり、高い教育水準を持つ一方で、学生ローンの負担が大きく、リーマンショックによる経済的困難を経験した世代です。
賃貸志向が強いとされてきましたが、最近では住宅購入者としての存在感も増しています。
Z世代(1997年~2012年頃生まれ)は幼少期からインターネットやSNSに慣れ親しんだ完全なデジタルネイティブであり、環境意識や社会問題への関心が高いことが特徴です。安定した収入を求める傾向が強く、副業やフリーランスにも積極的で、若年層として初めて住宅購入を考え始める段階です。
そして一方、Gen X(1965年~1980年頃生まれ)は、アナログからデジタルへの移行期に成長したテクノロジー適応世代であり、キャリアの中核を担う高収入層として、住宅所有率が高くエクイティ(住宅資産)を蓄積しています。
日本ではこのあたりの年齢層がYahooの記事にコメントするマジョリティの世代として知られているのだとか。
さらに、サンドイッチ世代として親と子どもを同時に支える立場にあり、多世代世帯での生活が広がるなど、特有の課題にも直面しています。
これら三世代はテクノロジーとの接触の仕方、経済状況、そして社会的価値観において明確な違いを持ち、各世代の特徴がアメリカの不動産市場やライフスタイルの選択に大きな影響を与えているのです。
そこでこの世代間の違いを背景に、今回は不動産市場で注目されるべき存在、ジェネレーションX(Gen X)について注目したいと思います。
一般的にはベビーブーマーやミレニアル世代、Z世代が取り上げられがちです。
けれどもその中間世代であるGen Xの存在感を見逃すわけにはいきません。
1965年から1982年に生まれたGen Xは、人口規模では他の世代より少ないものの、アメリカ不動産市場において重要な役割を果たしているのです。
Gen Xの市場での存在感
最新の全米不動産業者協会(NAR)の報告によると、Gen Xは米国人口の19%にすぎません。
けれども最近の住宅購入者の24%を占めるという、驚くべき割合を示しています。
さらにGen Xの約60%が住宅を所有しており、その多くがCOVID-19パンデミック前に購入した物件の価値上昇から恩恵を受けています。
Gen Xの経済的背景
2023年のデータによれば、Gen Xは平均年収12万6,900ドルを稼ぐ高収入世代です。
キャリアを積み上げ、エントリーレベルの職からシニアポジションに昇進しており、この収入を背景に広い住宅を所有しています。
彼らの平均住宅面積は1,940平方フィートで、世代別で2番目に大きな住居規模だとか。
けれども経済的成功の一方で、Gen Xは他の世代に比べて最も多くの負債を抱えています。
例えば、学生ローンの平均残高は4万5,557ドル、住宅ローン残高は27万8,935ドルにも上ります。
ただしこの負債は一見不利に見えますが、2000年代から2010年代初頭の低金利時代に固定金利を設定しているため、多くのGen Xは平均4%という低金利で住宅ローンを維持しているのが現状です。
とはいえ、この低金利は両刃の剣です。
現在の金利が7%前後に達する中で、Gen Xは「金利ロックイン」の状態にあり、低金利の住宅ローンを手放す選択をしにくい状況にもあります。

サンドイッチ世代としてのGen X
また、Gen Xは「サンドイッチ世代」としても知られています。
高齢の親と成人した子どもを同時に支える立場にあるからです。
2022年のピュー研究所の調査によると、Gen Xの54%が親や子どもを経済的に支援していると答えています。
このサンドイッチ世代の責任は、同世代の住宅購入や住宅ローン返済の妨げになることがあります。
また、この世代が直面する課題の一つとして、多世代世帯の増加が挙げられます。
NARのデータによれば、Gen Xの購入者の19%が多世代世帯向けの住宅を探しているとのこと。
同時にRealtor.comの調査によると、Gen Xの30%が親や子どもから経済的援助を受けて住宅を購入しているというのです。
高い住宅価格と厳しい就職市場の影響で、若い世代が親の家に戻り、親世代と近くに住む傾向が強まっていることが分かります。
Gen Xの選択:住み替え、アップグレード、またはダウンサイジング
Gen Xが50代後半から60代に差し掛かる中で、多くが「住み替え」や「アップグレード」、さらには「ダウンサイジング」を検討しています。
その選択は、ライフスタイルや財務状況に大きく依存するものです。
幸いにも、エクイティの蓄積により多くのGen Xは財務的に有利な立場にあります。
ある人は多世代世帯を考慮してより大きな住宅を購入し、ある人はリタイアメントを見据えてコスト削減のために小さな住宅に移る選択をしているといった具合です。
概ね、平均的な感覚として知られているのは
「Gen Xの多くがまだより大きな家を求めている」
というもの。
この世代は一度購入した住宅に長期間住む傾向があり、地域の中でも「ブティック物件」を好む傾向があるとも指摘されています。
一方で、購入をためらう理由の一つに「完璧なタイミングを待つ心理」です。
もちろん株式投資と同じで、不動産投資もまた
「購入するのに完璧なタイミングはない」
というのが答えで、金利が下がるのを待つことで、需要増加による価格上昇という逆の結果に直面する傾向があるのも同世代です。
。。。
Gen Xは不動産市場でその存在感を静かに、しかし確実に示す世代です。
高い収入と蓄積されたエクイティを背景に、Gen Xは住宅所有や市場の安定において重要な役割を果たしています。
その一方で親や子どもを支える「サンドイッチ世代」としての課題や、金利上昇による「ロックイン」の状況も避けて通れません。
それでもなお、Gen Xは多世代世帯の増加やアップグレードの需要を通じて、不動産市場における変化を推進している世代なのです。
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