こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
米国の住宅市場で重要な役割を果たす政府支援企業、Fannie Mae(ファニーメイ)とFreddie Mac(フレディマック)が、再び大きな議論を巻き起こしています。
これらの企業は、2008年のリーマンショックによる金融危機の際に経営が危機的状況に陥り、連邦政府の管理下に置かれることとなりました。
この「保全措置(conservatorship)」は当初、リーマンショック問題を一時的に解決するための緊急策でしたが、その後15年以上にわたり政府の管理が続いています。
この間Fannie MaeとFreddie Macは政府支援企業として市場の流動性を確保し、多くのアメリカ人が住宅ローンを利用できる仕組みを支えてきました。
けれどもトランプ政権はこれらの企業を民営化し、政府管理から解放することを目指しました。
この動きの背景には、保全措置が長期化する中で、政府が納税者のリスクを背負い続ける現状への懸念があります。
政府が住宅ローン市場のリスクを引き受けている現状では、もしFannie MaeやFreddie Macが再び危機に陥れば、その損失は最終的に納税者が負担することになる可能性が高いのです。
トランプ政権下でこの議論が再燃したのは、金融市場の競争力を高め、政府の関与を縮小するという保守的な経済政策の一環でした。
政府支援の下で安全性が保証されている現状では、Fannie MaeとFreddie Macが市場を独占している状況に近く、新たなプレーヤーの参入や市場競争が制限されていると批判する声もあります。
そのため民営化を通じて市場に競争を促し、リスクを政府ではなく民間企業に移すことがトランプ政権の目指す改革の核心だったのです。
その一方で、民営化には多くの課題とリスクが伴います。
Fannie MaeとFreddie Macは米国の住宅ローンの約70%を保証するほど市場で大きな役割を果たしており、その構造を変えることは市場全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。
住宅ローン金利の上昇や市場の不安定化につながる懸念が広がる中、この政策提案は住宅購入者や貸し手にとって歓迎されるものではありませんでした。
政府管理のまま安定性を優先するか、民営化による競争促進を目指すか。
このことはアメリカ不動産市場にとってもかなり大きな意味合いを持つことになります。
住宅市場の基盤を支えるFannie MaeとFreddie Mac
Fannie MaeとFreddie Macは、全米住宅ローンの約70%を保証する政府支援企業(GSE)です。
これらの企業は、貸し手から住宅ローンを購入し、それを証券化して投資家に販売することで市場の流動性を保つ重要な役割を果たしています。
具体的には、GSEが住宅ローンを引き受けることで銀行や貸し手は資金を回収し、新たなローンを発行する余裕を持つことができます。
これにより多くのアメリカ人が長期固定金利の住宅ローンを利用できる仕組みが維持されているのです。
けれども2008年の金融危機の際に両社が経営危機に陥り、政府が両者を管理下に置く「保全措置(conservatorship)」が取られました。
この状況が続く中で、民営化を求める声とその影響についての議論が再燃しているのです。
民営化を支持する立場からは、以下のような主張が挙げられています。
- 納税者リスクの削減
政府管理下にある現在の仕組みでは、Fannie MaeとFreddie Macが再び経営危機に陥った場合その負担は納税者に及ぶ可能性があります。
民営化はこのリスクを軽減することになります。
- 市場競争の促進
GSEを民営化することで民間企業間の競争が進み、より効率的な住宅金融システムが構築されるという期待があります。
その一方で、民営化には大きなリスクが伴うとする批判も根強くあります。
- 借り手負担の増加
政府保証がなくなることで、投資家は住宅ローン担保証券(MBS)への投資に慎重になる可能性があります。
その結果、利回りが上昇し、それがローン金利の上昇に直結する可能性が指摘されています。
- 住宅価格への影響
「住宅価格が大きく下落し、30年固定金利の住宅ローンが7%を超える可能性がある」
との懸念が指摘されています。
この金利上昇は、すでに限界に近い住宅の手頃さをさらに悪化させるものです。
現在の住宅ローン金利と市場の動向

同時に、すでに住宅ローン金利は上昇傾向にあります。
フレディマックのデータによれば、2024年11月21日時点で30年固定金利の平均は6.84%に達しており、これは過去数ヶ月で最も高い水準です。
金利の上昇は住宅購入者に直接的な負担を強いるだけでなく、住宅需要の低下を引き起こす可能性もあります。
その結果、住宅価格の下落や市場の停滞が懸念されているわけです。
とはいえ、Fannie MaeとFreddie Macの民営化は、米国住宅市場全体を揺るがす可能性があります。
短期的には以下のような影響が予測されます。
- 住宅ローン金利の上昇
政府保証がなくなることで、住宅ローン市場におけるリスクが高まり、金利がさらに上昇する可能性。
- 住宅価格の調整
金利上昇により住宅購入者が減少し、需要が低下することで、価格が調整されるリスク。
- 借り手への負担増
特に低所得層や初めての住宅購入者にとっては、手の届く住宅が減少する可能性が高い。
一方で民営化が進むことで市場の競争が促進され、新たなプレーヤーや革新的な金融商品が登場する可能性も期待されています。
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かくして、Fannie MaeとFreddie Macの民営化は、米国住宅市場における重要な転換点となり得ます。
政府管理下でのリスク軽減と市場の安定性を維持する一方で、民間企業による競争の促進を図る必要があるからです。
けれども素人でも分かるように、これには慎重なアプローチが求められます。
特に住宅ローン金利の上昇や市場の不安定化がもたらす影響を最小限に抑えるための政策的な対応が不可欠です。
この改革は、借り手、貸し手、そして全体の住宅市場にとって新たな課題と機会をもたらす可能性を秘めるもの。
2025年以降、トランプ政権の再出発に伴い、トランプ政権の再出発と同時に政策動向と市場の反応に注目する必要がありそうです。
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