こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカの最低賃金労働者と居住費の関係について、興味深い統計が出されています。
都市ごとに家賃や最低賃金は違いますが、その差が生活に与える影響は実に大きいものです。
例えば、デンバーやサンフランシスコのような都市では最低賃金が高めに設定されています。
けれども家賃も同時に高いため、働く時間を考えると必ずしも楽とは言えません。
一方で、テネシー州のナッシュビルやメンフィス、テキサス州のダラスやオースティンでは家賃が比較的低いものの、最低賃金が連邦基準の7.25ドルに留まっています。
結果として、家賃を払うためには長時間働く必要があるのです。
本項では各地のデータをもとに、それぞれに地域の傾向について見てみましょう。
グラフから分かる最低賃金と居住費の関係
具体的にデータを並べてみます。
順位 | 都市 | 中央値家賃 | 最低時給 | 必要世帯年収 |
1 | コロラド州デンバー市 | $1,808.00 | $18.29 | $72,320.00 |
2 | テネシー州メンフィス市 | $1,186.00 | $7.25 | $47,440.00 |
3 | テネシー州ナッシュビル市 | $1,542.00 | $7.25 | $61,680.00 |
4 | テキサス州オースティン市 | $1,486.00 | $7.25 | $59,440.00 |
5 | カリフォルニア州サンフランシスコ市 | $2,711.00 | $16.00 | $108,440.00 |
6 | テキサス州ダラス市 | $1,453.00 | $7.25 | $58,120.00 |
7 | カリフォルニア州サンディエゴ市 | $2,726.00 | $16.85 | $109,040.00 |
8 | アリゾナ州フェニックス市 | $1,503.00 | $14.35 | $60,120.00 |
9 | アラバマ州バーミンガム市 | $1,236.00 | $7.25 | $49,440.00 |
10 | テキサス州サンアントニオ市 | $1,242.00 | $7.25 | $49,680.00 |
デンバー市(コロラド州)では中央値家賃が1,808ドル、最低時給は18.29ドルです。
この都市で家賃を支払うためには、年間72,320ドルの世帯収入が必要です。
一見すると最低時給が高いため、労働者にとって良い環境に見えるかもしれません。
けれども家賃の高さがその利点を打ち消しています。
次にサンフランシスコ市(カリフォルニア州)です。
サンフランシスコは最低時給が16ドルと高めですが、家賃がなんと2,711ドルにも上ります。
そのため必要な世帯年収は108,440ドルと、非常に高い水準になります。
ここで働く労働者が生活を維持するにはかなりの時間働くか、複数人で家賃を分担する必要があるということです。
これとは対照的に、メンフィス市(テネシー州)では中央値家賃が1,186ドルです。
最低時給は7.25ドルと低いですが、必要な世帯年収は47,440ドルと比較的抑えられています。
ただし最低時給の低さが問題となり、フルタイムで働いても十分な収入を得ることは難しいです。
またナッシュビル市(テネシー州)も似た状況です。
家賃は1,542ドルですが、最低時給は7.25ドルに留まり、年間61,680ドルの収入が求められます。
最低賃金が低いため、生活を維持するには長時間働かざるを得ません。
そしてテキサス州に目を向けると、オースティン市やダラス市の状況が分かります。
オースティンでは家賃が1,486ドル、ダラスでは1,453ドルです。
とはいえ最低時給が連邦基準の7.25ドルに据え置かれているため、労働者には負担がかかり、必要な世帯年収はそれぞれ59,440ドルと58,120ドルです。
同じテキサス州のサンアントニオ市では家賃が1,242ドルと低めですが、最低時給は7.25ドルのままです。
その結果、必要な年収は49,680ドルとなります。
西海岸のサンディエゴ市(カリフォルニア州)も興味深い例です。
サンディエゴでは最低時給が16.85ドルと高めに設定されています。
けれども家賃は2,726ドルで、必要な年収は109,040ドルにもなります。
このように最低時給が高くても、家賃の水準がそれを上回ることで労働者の負担が大きくなるわけです。
アリゾナ州のフェニックス市では家賃が1,503ドル、最低時給は14.35ドルです。
必要な世帯年収は60,120ドルと中程度ですが、他の都市に比べて時給と家賃のバランスが取れている方かもしれません。
最後に、アラバマ州のバーミンガム市です。
家賃は1,236ドルと比較的低く、必要な年収も49,440ドルです。
最低時給が7.25ドルであるため、依然として労働者には厳しい状況が続きます。
。。。
こうして見てみると最低賃金が都市ごとに異なり、家賃とのバランスが生活に大きな影響を与えていることが分かります。
最低賃金が高くても家賃が非常に高い都市では、労働者は長時間働く必要があります。
その一方で、家賃が低めの都市でも最低賃金が低いと、同じように労働者の負担は大きいままです。
そんな中、これから最低賃金の引き上げが予定されている都市もあります。
例えば、セントルイスやカンザスシティでは、最低賃金の上昇によって週4時間ほど働く時間が削減される見込みです。
一方で最低賃金の引き上げが行われない都市では、労働者が長時間働かざるを得ない状況は続くのではないでしょうか。
最低賃金労働者にとって住宅費がどの程度負担になるかは、家賃だけでなく都市ごとの最低賃金が大きく関係しています。
そのバランスが取れていない限り、労働者の生活は厳しいままなわけです。
かくして、最低賃金労働者と住宅費の負担は間違いなく都市ごとの課題と密接に結びついているのです。
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