こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
住宅市場の動向で、数字として興味深い事実があります。
「アメリカ経済の底は割れ始めている」
「アメリカ不動産の大暴落は近い」
そんな風にまことしやかな話がささやかれ続けています。
とりわけ翌年の市場を占う話に絡め、この手のアメリカ不動産大暴落説は出やすい時期です。
このあたりの市場に関する最新情報は常々意識して当ブログでは継続的に上げていますので、私(佐藤)と一緒にアメリカ市場の今を見続けてくださっている方々はお分かりと思いますが、上のうわさに対する答えは
「2007年~2008年に起こったレベルの大暴落が再発する可能性は極めて低い」
です。
その裏付けとして、最近発表された最新動向の中でも注目したいのが
「住宅所有者の大幅な資産増加」
と
「増加しつつある住宅ローン債務」
という二面性です。
本項では
⇒ 住宅所有者の資産価値が急増
⇒ 住宅ローン債務も増加
⇒ 住宅所有者のエクイティが高水準
⇒ 将来的な住宅価格下落の影響
という4つのポイントを中心に見ていきましょう。
結論としては
「住宅所有者にとっては依然として明るい兆しが見えつつも、慎重な見通しも必要」
ということになります。
住宅所有者の資産価値が急増
2024年第3四半期、アメリカの住宅市場は驚くべき成長を見せました。
住宅所有不動産の総価値は「48.2兆ドル」に達し、これは前年からなんと3兆ドルの増加です。
10年前の住宅市場を振り返ると、この数値はわずか「20兆ドルから22兆ドル」程度でした。
つまり、住宅資産の総価値はこの10年間で2倍以上に増加したことになります。
一方で、インフレ率は10年間で33%上昇しています。
この数字と比較しても、不動産価値の成長がいかに著しいかが分かるのではないでしょうか。
エコノミストによれば、この急成長は住宅価格の上昇だけでなく「住宅在庫の拡大」も寄与しているとのことです。
かくして、住宅所有者にとっては不動産がこれまで以上に強力な資産となっているのです。
住宅ローン債務も増加
そして住宅価値が急増する一方で、「住宅ローン債務」の増加も見逃せません。
2024年第3四半期時点で、住宅ローン債務は13.3兆ドルに達しました。
これは前四半期から「1049億ドル」増加し、前年同期比では「3346億ドル」増えたことになります。
そしてここで重要なのは「債務の増加ペース」です。
エコノミストは、債務は増加しているもののその増加率はわずか2.6%に鈍化していると指摘します。
さらに住宅ローン債務と住宅価値のバランスを示す「債務対エクイティ比率」は0.38にとどまっています。
この数値は、2008-2009年の金融危機時に記録された1.04とは大きく異なり、完全に不動産市場の健全性を示すわけです。
結果として、住宅ローン債務は増加傾向にあるものの、そのリスクは比較的抑えられていると言えることになります。

住宅所有者のエクイティが高水準
次に注目すべきは、住宅所有者が持つ「エクイティ」の水準です。
2024年第3四半期、住宅所有者のエクイティ総額は35.0兆ドルに達しました。
前四半期と比較して「0.3兆ドルの減少」が見られたものの、前年同期比では「2.6兆ドルの増加」です。
エクイティ比率は72.5%と、1960年以降で「2番目に高い」水準にあります。
これは2012年の「45.8%」と比べると著しい改善です。
平均的な住宅所有者は26万6千ドルのエクイティを持っており、住宅価格が10%下落してもエクイティ比率は「69.5%」にとどまることになります。
これが「住宅所有者の財政的クッション」となり、不透明な経済状況下でも安心材料になるのです。
将来的な住宅価格下落の影響
最後に、「もし住宅価格が下落した場合」の影響について考えましょう。
エコノミストの分析によると、住宅価格が今後「20%下落」したとしても、エクイティ比率は「65.6%」に維持されると予測されています。
この水準は2019年と同程度であり、十分な安全圏だと言えるものです。
また住宅価格が緩やかに下落した場合、新たな住宅ローンの供給が抑制されエクイティの減少も限定的になる可能性が高いことになります。
。。。
かくして、住宅市場は今後の変動に対しても安定性を維持する要素が揃っているのです。
1.住宅所有者の資産価値は急増し、48.2兆ドルに達した
2.住宅ローン債務は増加したものの、リスクは比較的低い
3.住宅所有者のエクイティは高水準を維持している
4.将来的な価格下落が起きても、エクイティは安全圏内にある
これらの要素が示すのは、住宅所有者にとって現在の市場が「財政的に有利」であり、将来的にも安定性を維持する可能性が高いことに他なりません。
こうやって最新動向を見ても、住宅は単なる居住の場ではなく、確固たる資産としての価値を再確認させてくれるのです。
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