こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
今回は、アメリカの不動産取引で時折目にする "Escalation Clause(エスカレーションクローズ)" について触れてみたいと思います。
Escalation Clause(エスカレーションクローズ)とは何か、その利用のメリットとデメリット、そして実際の取引でどのように活用されるのかを具体的に見ていきましょう。
実際にはアメリカ現地の取引でも使われることは多くなく、というより、ほとんどの買主はEscalation Clause(エスカレーションクローズ)の使い方はおろか、その存在もよく知らないものです。
エージェントもめったに使うことがないため、
「ここではEscalation Clause(エスカレーションクローズ)を使ってみては」
と提案する発想も起きない、というのが実際のところです。
けれども物件購入を実際に検討している方々にとっては、自身の交渉力を高める上で知っておいてもよいルールだと思います。
その詳細を見ていきましょう。
Escalation Clause(エスカレーションクローズ)とは
Escalation Clause(エスカレーションクローズ)とは、競争が激しい不動産市場において買い手が他の競合オファーに自動的に対応し、提示価格を調整するための契約条項です。
この条項は買い手が特定の条件下でオファー価格を上げることを許可し、競争を有利に進める手段として利用されます。
例えばある物件に対して30万ドルのオファーを出す場合、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)を利用すると競合他社のオファーがこれを上回った際に一定の増加幅で価格を調整し続ける仕組みです。
これにより、買い手は自分の予算内で物件取得の可能性を高めることができます。
この契約条項にはいくつかの基本的な構成要素が含まれます。
初期オファー価格: 買い手が最初に提示する金額
増加幅: 競合オファーを上回るために価格をどれだけ上乗せするかを示す額
上限価格: 買い手が支払う意思のある最大金額
たとえば買い手が30万ドルでオファーし、2,000ドルの増加幅を設定、上限価格を31万ドルとした場合、競合オファーが提示されるたびに自動的に調整されます。
けれども設定した上限を超えた場合、それ以上の入札には参加できません。
Escalation Clause(エスカレーションクローズ)は買い手が競争に巻き込まれつつも、予算を超えない形で取引に臨むための重要なツールです。
この仕組みはシンプルに見えますが、実際には利用の際は慎重な計画と詳細な検討が必要になるものです。
例えば、ある物件に対して30万ドルのオファーを出す場合、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)を利用すると、競合他社のオファーがこれを上回った際に一定の増加幅で価格を調整し続けることになります。
- 初期オファー価格
- 競合オファーに対する増加額
- 価格の上限(例: 最大310,000ドルまで)
これらを組み合わせることで、買い手は競争力を維持しつつ自身の予算を超えない形で物件取得の可能性を高めることができるというわけです。
Escalation Clause(エスカレーションクローズ)の具体例
例えば、買い手Aが30万ドルのオファーを提出し、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)を設定します。
条件: 競合するオファーがあれば2,000ドルずつ増額し、最大31万ドルまで引き上げる。
競合者Bが30万3,000ドルを提示した場合、買い手Aのオファーは30万5,000ドルに自動的に上昇します。
けれども競合者Cが31万1,000ドルを提示した場合、買い手Aの設定上限を超えるためにAは競争から脱落します。
このようにEscalation Clause(エスカレーションクローズ)は競争を明確化しつつも、買い手が過剰な価格競争に巻き込まれるリスクを軽減するわけです。
メリットとデメリット
そんなEscalation Clause(エスカレーションクローズ)には明確な利点があります。
メリット
- 買い手の意思を売り手に伝える
- 複数オファーの中で競争力を維持できる
- 入札戦争で予算超過を防ぐ
- オファーが1つだけの場合、元の価格で成立する
デメリット
- 価格の上限が売り手に知られる
- 売り手がカウンターオファーでさらなる高値を要求する可能性
- 銀行査定額を上回る場合、買い手が差額を現金で補填しなければならない

売り手にとっての影響
また売り手側から見ても、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)には一長一短があります。
メリット
- 買い手の本気度が明確になる
- 契約プロセスが迅速化される
- 高値の可能性が提示される
デメリット
- 交渉の柔軟性が低下する
- 他のオファーを誘導する力が失われる
- 物件の銀行査定額が買い手のオファー額に届かない場合、契約が成立しないリスク
利用のタイミングと注意点
結果として、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)は特定の市場状況で効果を発揮します。
特に競争の激しい市場で有効です。
たとえば売り手が入札を受け付ける期間を限定し、「最高額と最良条件」を求める状況では、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)が非常に役立ちます。
一方で売り手が「最初の最高額を基に改めて最良のオファーを求める」手法を採用する場合、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)が逆に不利になることもあります。
このような場合買い手は上限額を知られることで競争力を失う可能性があるため、エージェントと十分に相談して攻め方を十分に練る必要があるのです。
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かくして、Escalation Clause(エスカレーションクローズ)は競争が激しい不動産市場で非常に効果的なツールですが、その利用には慎重な判断が求められます。
適切なタイミングと戦略を理解し予算やローン承認の条件を踏まえた上で活用することで、理想的な物件取得に近づけることも事実。
そしてエージェントの経験や市場知識を活かすことで、このツールの効果を最大限に引き出すことができるはずです。
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