昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ全土の住宅事情は、2024年の11月に結構な変化を見せました。
Redfinの報告によると、住宅供給量が過去4年で最高に達したとのこと。
近年、とりわけコロナ以降に物件価格が高止まりしていた要因の一つが「供給不足」です。
市場に物件が出てきにくい理由は様々ですが、いずれにせよ物件購入も何も、ハコモノが市場になかなか出てこないことが問題の一つでした。
需要に対して供給が少ないわけですから、相対的に価格は落ちる傾向にはなりません。
それが、昨年11月には過去4年間で供給量が最大になったというのです。
ただし、それではこの傾向が物件価格の落ち着きにつながるかといえば、そうとは単純には言えなさそうです。
その実、市場に出てきた物件は「市場に出ても売れない物件」がほとんどを占めていたからです。
ここでいう売れない物件とは、ボロボロで誰も買おうとは思わない物件という意味ではなく、
「高すぎで購入できない」
「市場に出てきても(価格面から)対象外」
という物件だったのです。
本項ではこの点を深掘りしてみましょう。
住宅供給増加の背景
Redfinの調査では、2024年の11月における住宅供給量が2020年以来で最高を記録したとのことですが、この住宅供給増加は1ヶ月前に比べては0.5%、前年同期に比べては12.1%の増加を見せました。
「市場に全然いい物件が出てこない」
と悶々していた購入希望者にとっては吉報だったはず。
けれどもこの数字の裏には、「購入したくとも価格的に買えない」物件が多々混じっているようです。
率直に、大量の物件が販売されない原因は「高すぎる価格」です。
特に11月には54.5%の物件が60日以上の時間を販売に要し(市場在庫が60日以上)、これだけの在庫日数は2019年以来で最大となりました。
この流れは49.9%だった前年同期と比較しても明らかに増えており、売却が進まずに在庫として市場に残る物件を持つ売主が増えていることを如実に示しているわけです。
仲介業者の目線で言えば、
「高すぎる物件は買い手から避けられ、長い間マーケットに留まる」
という事実以上でも以下でもありません。
特に価格が65万ドル以下の物件はまだ買い手にとってより手が届きやすいとされている一方、今の市場では65万ドル以上の物件が相当数に上ります。
価格が高いということは
⇒ より高額な頭金が必要
⇒ モーゲージ金利が高い背景から毎月の返済も高額
ということに他ならず、結果としてこのような物件は売れ残り物件として市場に留まる期間が長くなる傾向があるわけです。
地域別に見るトレンド
そこでこのような
「高額の為に売れにくい物件」
の分布を地域別に見てみると、とりわけフロリダ州とテキサス州は、スタールインベントリー(市場価値が低下した在庫)の数が最大の地域として挙げられます。
マイアミは63.8%、オースティンは62.4%の物件が60日以上マーケットに留まり、これらの地域では「高額の為に売れにくい物件」の割合が特に高いことが明らかになっているのです。
これに対してロードアイランド州プロビデンスやウィスコンシン州ミルウォーキーなどの地域は回転が非常に早く、3割弱の物件しかマーケットに長期に留まらないのが実情です。
また中古物件が大量に市場残る他の要因として、
- 地域単位の大規模な建設
- 高額化した補助金(住宅購入の補助金が実質減少)
- 自然災害の増加
等も影響しています。
フロリダ州タンパでは前年比計で在庫率が1割上昇しており、地域の経済状況はもとより、根本的な問題の解決が必要とされるところです。
![](https://wedgerc.com/wp-content/uploads/2024/12/trend_from_2024.jpg)
2025年に向けた予測
そこでこれらの2024年のデータをもとに、2025年の住宅市場動向について予測することができます。
まず、間違いない流れとしては「売りたくても売れない物件」はこのまま増加傾向が続くと考えられます。
そのように言えるのは、市場の背景として金利の上昇やインフレ圧力による買い手の購買力低下がそれほど変わらない比率で継続すると予想されるからです。
特に中価格帯(50万ドルから65万ドル)の物件が、今後はさらなる供給過剰に直面する可能性があります。
65万ドル以下は比較的売れやすいはずが、このあたりを購入する人々は少なくなるにつれて、中価格帯の物件が市場に残りがちになるわけです。
その一方で、投資家の需要が高い低価格帯の物件や修繕可能な物件は引き続き安定した需要を維持することが出来るのではないでしょうか。
このセグメントでは買い手が競争力を持ちやすいため、引き続き取引が活発になると予想されます。
この流れで、地域別にはフロリダやテキサスなどの過剰建設が進むエリアでは、引き続き売れ残り物件が増加すると思います。
一方、供給が限られているカリフォルニアや北東部の都市では、住宅価格の安定化または微増傾向が見られる可能性が高いはずです。
またトランプ新政権による牽引により、政府や自治体が住宅市場の停滞を改善するための政策を導入する可能性もあります。
特に住宅ローンの金利優遇や、買い手向けの補助金制度などが注目されるのではないでしょうか。
。。。
かくして、2024年の住宅市場は供給過剰と需要減少という相反する動きが特徴的でした。
この傾向は2025年においても引き続き影響を与えると考えられます。
売り手と買い手のバランスを取るためには価格設定の見直しや政策支援が不可欠であり、今後の市場動向を注視しつつ、適切な対応をどのように施行されるかをモニタリングしていく必要がありそうです。
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