こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
特別企画として、アメリカ投資全般についてお伝えしています。
本企画であげる情報は、アメリカ投資に関して広く浅くお伝えするレベルです。
それぞれの投資手法について、そのより深い点はそれぞれの専門家にお譲りするところですが
「アメリカ不動産投資のみならず、アメリカ投資はこんな風になっている」
そんな、全体像を俯瞰する情報としてお役に立てれば幸いです。
今日は、投資初心者の方でも分かりやすく理解できるよう、 デリバティブ、その中でも特にオプション取引について見ていきましょう。
デリバティブ(Derivative)
デリバティブ(Derivative)とは何でしょうか。
デリバティブ(Derivative)を簡単に言うと、 株式や債券といった「元となる資産(原資産)に基づく金融商品」です。
株や不動産を直接売買するのではなく、 その価格の変動を利用して利益を得る仕組みだと思ってください。
とすると、デリバティブ(Derivative)では具体的にどのようなコストやメリット、リスクがあるのでしょうか。
ここから、デリバティブ(Derivative)の類でも典型的なオプション取引(Option Trade)について深堀してみます。
オプション取引のコストについて
オプション口座を開設すること自体には費用はかかりません。
ただし通常の証券口座よりも少し手続きが複雑になります。
まず、オプションを買う場合(ロングポジション)、 唯一のコストはプレミアム(オプション購入時に支払う金額)と、 証券会社の手数料だけです。
オプションは通常、証拠金取引(マージン)を利用できないために 借入金利が発生することもありません。
そしてオプションを売る場合(ショートポジション)、 この時はプレミアム収入が得られます。
けれども売るオプションが「担保なし( ネイキッドコール、Nakid Call)」の場合、 証拠金が必要になることもあります。
「先渡取引や先物取引のコストはどうなの」
と思うところですが、これらはもっと複雑ですのでここでは割愛しておきます。
オプション取引のメリット
そこでデリバティブ(Derivative)には多くのメリットがありますが、 特に以下のポイントが重要です。
1. レバレッジ効果
オプションを使うと、少額の資金で大きな投資をコントロールできます。
例えばRST社の株を1株58ドルで100株購入する場合、 合計で5,800ドル必要です。
一方、RST社の55ドルコールオプションを1枚購入する場合は プレミアム6ドルで600ドルの投資だけで済みます。
仮に株価が70ドルまで上がったとすると、 現物株投資では20.7%の利益(12ドルの利益÷58ドル)が出ます。
けれどもオプションでは150%の利益(9ドルの利益÷6ドル)が得られることになります。
とはいえ、レバレッジは両刃の剣です。
株価が55ドル未満に下がると オプション購入者は全額損失になりますが、 現物株投資では小さな損失で済むというわけです。
2. リスク軽減
しかしながらオプションは正しく使うことで、投資リスクを軽減することもできます。
その代表例が「カバードコール(Covered Call)」です。
カバードコール(Covered Call) は株を保有しながらコールオプションを売る戦略です。
例えばBさんがABC株を1株50ドルで100株購入し、 同じ株の50ドルコールオプションを1枚売ったとします。
このオプションでプレミアム4ドル(400ドル)を得ています。
- 株価が47ドルに下がる場合: オプションは期限切れになりますが、 プレミアム400ドルが損失300ドルを上回り、+100ドルの利益。
- 株価が50ドルのままの場合: オプションは行使されず、+400ドルの利益。
- 株価が60ドルに上がる場合: 株を50ドルで売る義務が発生します。 プレミアムを含めた実質的な受取額は54ドルですが、 株価60ドルで売る機会を逃してしまいます(機会損失)。
このように株価が横ばいか下落する場面では利益を得やすく、 急上昇する場合には限界がある、という特徴があるのです。
3. 空売りの代替
株価が下がると予想した場合「空売り」を利用する手法がありますが、これには無限損失リスクが伴います。
その一方でプットオプションを購入する場合、 支払うプレミアム以上の損失はありません。
4. ヘッジ(リスク回避)
カバードコール(Covered Call)以外にも、 オプションを活用して価格変動のリスクを抑える方法があります。
例えば保有株の価格下落をプットオプションでカバーする、といった使い方です。
オプション取引のリスク
かくして、どんな投資にもリスクはつきものですが、 オプションには特有の注意点があります。
ここでは典型的な注意点を押さえましょう。
無限の損失リスク
ネイキッドコール(Naked Call)を売る場合、理論上損失は無限になる可能性があります。
例えばABC株が50ドルの時に ネイキッドコールを売り、 プレミアムとして3ドル(300ドル)を得たとします。
その後株価が100ドルに上昇すると 50ドルで売る義務があるため、100ドルの市場価格で株を購入して差額50ドル×100株=5,000ドルの損失が発生するのです。
理論上、株価が上限なく上がれば損失も無限に増える可能性があるという、空恐ろしいリスクがあります。
タイムディケイ(時間価値の減少)
オプションには有効期限があるため、 時間が経つにつれてその価値が減少します。
例えばRST社の株価が変動せず、 55ドルコールオプションをプレミアム6ドルで購入した場合は時間の経過とともにこの価値は減り、 オプションの期限が近づくとほぼゼロになる可能性があります。
タイムディケイは特に価格変動が少ない市場では大きな影響を及ぼすことになります。
短期課税
オプション取引で得た利益は、 短期キャピタルゲインとして課税されます。
例えばRST社のコールオプションをプレミアム6ドルで購入し、 株価が70ドルまで上昇した時に9ドルの利益を得た場合、 この9ドルは短期利益として通常所得税率で課税されるのです。
長期投資の利益よりも高い税率が適用される点に注意が必要です。
。。。
ここではざっくりとお伝えしましたが、デリバティブは適切に活用すれば 投資の幅を広げ、リスクを管理する強力なツールです。
けれどもここで見たようにその仕組みやリスクを理解せずに利用すると、 大きな損失を招く可能性もあります。
率直に、本項の内容は実践を意図しておらず、特に初心者にお薦めできるものではありません。
あくまでも金融知識として
「そんな手法があるんだ」
という、視野を広げる程度に留めておかれた方がよいと思います。
明日に続けます。
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