こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
去る1月29日、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を4.25%~4.50%に据え置く決定をしました。
今回の会合では、金利を4.25%~4.50%のまま据え置く決定がなされましたが、これは昨年の3回連続の利下げを経て4会合ぶりの据え置きとなります。
市場では、一部の投資家や経済アナリストが早期の利下げを期待していましたが、パウエル議長は
「金融政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」
と発言。
特に、最近のインフレデータが落ち着きを見せているものの、FRBの2%インフレ目標にはまだ到達していないことを理由に挙げています。
これまでの声明では
「インフレは2%目標に向かって進展している」
と表現されていたものが、今回の声明では
「依然としてやや高い水準にある」
と慎重なトーンに変更された印象です。
これに対してドナルド・トランプ大統領は激しく反発し、SNSでFRBとパウエル議長を名指しで批判しています。
かくして、今回のFRBの決定が今後の金融政策や不動産市場にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
あわせて、トランプ政権の経済政策と金利動向についても押さえていきます。
トランプ大統領の反応
FRBの決定を受け、トランプ大統領は自身のSNS
「トゥルース・ソーシャル」
でパウエル議長を批判しています。
「ジェローム・パウエルとFRBは自ら作り出したインフレの問題を止めることに失敗した」
と述べ、自らが金利を下げる環境を整えると宣言。
また
「FRBがDEI(多様性、公平性、包括性)やジェンダーイデオロギー、『グリーン』エネルギー、そして『偽の気候変動』に時間を費やしていなければ、インフレは問題にならなかった」
とも発言。
つまりトランプ氏の主張は「インフレの原因はFRBの政策ミスであり、金融政策よりも政府の規制緩和やエネルギー政策の改革が重要」ということです。
さらにトランプ大統領は
「私はFRB当局者よりも金利について詳しい」
と述べ、
「金利を即時に引き下げるべきだ」
と主張しています。
FRBの独立性と市場の反応
ここで注目すべきなのは、FRBの独立性です。
アメリカでは、大統領が金融政策に直接介入することはなく、中央銀行であるFRBが独立して政策を決定する仕組みとなっています。
それを踏まえてパウエル議長も
「FRBはこれまで通り、独立した立場で仕事を続ける」
と明言し、トランプ氏の発言には一切コメントしていません。
また、今回の金利据え置き決定を受けて、米国株式市場は一時的に下落し、投資家の間でも慎重なムードが広がりました。
これは、高金利が長引けば企業の借入コストが増え、経済成長が鈍化するとの懸念が影響したためです。
トランプ政権の経済政策と金利への影響
そのような背景の中、トランプ大統領は今後の経済政策として以下の4つを掲げています。
- アメリカのエネルギー生産の活性化(化石燃料産業への支援)
- 規制の削減(企業活動の自由化)
- 国際貿易の再調整(中国・メキシコなどへの追加関税)
- アメリカの製造業の再興(国内雇用の増加)
これらの政策は短期的には景気を押し上げる可能性がありますが、一方で物価上昇(インフレ圧力)が高まるリスクもあります。
特にトランプ氏は「関税政策」を再強化すると公言しており、これが輸入品価格の上昇を招けば、結果的にインフレを加速させるはずです。
FRBの金融政策は、こうした政府の財政・貿易政策の影響も考慮しながら決定されます。
もしインフレが再び上昇すればFRBは金利を引き下げるどころか、据え置きや追加の引き締めを検討せざるを得なくなるかもしれません。
不動産市場への影響
ここから不動産市場の話ですが、このまま金利が高止まりすると、住宅ローンの金利も高い水準で推移します。
そうなると住宅購入のハードルは高いままで、不動産市場の停滞が続く可能性があります。
現在の米国の住宅ローン金利は30年固定で約6.5%前後となっており、2021年の3%台から倍増です。
この金利環境では、現金購入が可能な投資家が有利になり、特に高額物件の取引では、現金購入者が市場を主導する傾向が続くのではないでしょうか。
また、住宅価格の下落は限定的であるため、借入コストの増加が一般の購入者にとっては依然として大きな負担となります。
先日もクライアント様に
「今のタイミングで購入に踏み切るべきでしょうか」
と尋ねられましたが、現時点では高金利環境が続くため、一般投資家にとっては様子見が無難でしょう。
少なくとも、ここまでにお伝えした背景を踏まえると、不動産市場においては、以下の点が重要になると言えるでしょう。
今回の金利据え置きやトランプ政権の政策を踏まえると、今の不動産投資は「慎重な選別」がカギになります。
- 高金利に負けない高利回りの物件を探す
- 現金購入できるなら有利な交渉が可能
- 長期保有・賃貸経営の方針が適している
- 物流施設・データセンターなどの成長市場を狙う
- オフィス・小売業向け不動産は慎重に
このあたりを心がけつつ、今後の金利動向とトランプ政権の政策を注視しながら、リスクを抑えた堅実な不動産投資を心がけることが吉となるのではないでしょうか。
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