こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
ご存知の方も多いかと思いますが、近年アメリカでは自然災害による被害が増加し、それに伴い住宅保険の保険料が急激に上昇しています。
しかるに、これはまだ序章にすぎない様子です。
新たな分析によると、今後30年で特定の都市ではさらに劇的な保険料の上昇が予測されています。
気候リスク分析会社 First Street の調査によると、2055年までに最も保険料が上昇すると予測される都市は以下の通りです。
- マイアミ (FL):322% 上昇
- ジャクソンビル (FL):226% 上昇
- タンパ (FL):213% 上昇
- ニューオーリンズ (LA):196% 上昇
- サクラメント (CA):137% 上昇
これらの地域をみるとよく分かりますが、いずれもこれらの都市はそれぞれ異なる災害リスクを抱えています。
- マイアミ、ジャクソンビル、タンパ、ニューオーリンズ ⇒ ハリケーンのリスク増加
- サクラメント ⇒ 山火事のリスク増加
特にハリケーンについては、今後30年間でアメリカ東海岸のより北部まで影響が及ぶと予測されているのです。
保険市場の歪みと価格調整の必要性
そして現在、気候リスクに対して住宅保険の価格が十分に反映されていないケースが多くあります。
その理由は、州政府による保険料の引き上げ規制です。
例えば、
- カリフォルニア:年間 7% 以上の保険料上昇には州の承認が必要
- フロリダ:年間 15% 以上の保険料上昇には州の承認が必要
とされていますから、結果として現在の保険料が適正価格が反映されておらず、保険会社は赤字を抱えながら運営を続けている状態です。
実際、保険業界は 2020年以降、毎年支払保険金が収入を上回って2023年には損失率が 10.5% に達しました。
このままでは、
- 将来的に急激な保険料の上昇が発生する
- 保険会社が市場から撤退し、住宅保険に加入できない地域が増える
のいずれかのシナリオが避けられず、佐藤が利用していた保険会社がカリフォルニア州から撤退する様も目のあたりにしています。
通常、洪水保険は特定の浸水リスクの高い地域でのみ義務付けられていますが、今後の気候変動により洪水被害の増加が見込まれると思います。
First Street のモデルによると、2055年までに洪水による被害額は平均 28% 増加するとされており、特に以下の都市では深刻な影響が予測されています。
- ニューオーリンズ (LA):533% 増加
- アトランティックシティ (NJ):296% 増加
- フォートローダーデール (FL):122% 増加
これに伴い、洪水保険の負担も大きくなることは避けられません。
そうすると、このような保険料の上昇は住宅市場にも大きな影響を与えてくるだろうことは論を待ちません。
それは
- 住宅価格への圧力:保険料の高騰により購入後の維持費が増加し、不動産価格の下落を引き起こす可能性。
- ローン審査の厳格化:保険料の上昇によって住宅ローンの支払い能力に影響が出るため、融資基準が厳しくなる可能性。
- 投資家の撤退:保険料が上がりすぎることで投資としての魅力が低下し、一部のエリアでは空室率が上昇。
といった面で反映されてくるのではないでしょうか。
特にカリフォルニアやフロリダのような自然災害リスクの高い地域では、住宅市場の変化がより顕著になると予想されます。
そこで今後の住宅保険のコスト増加に備えるため、以下の点を検討することが重要です。
- 保険会社の比較:州ごとに異なる規制があるため、適切なプランを見つけるには複数の保険会社を比較する必要。
- 耐災害性の向上:家の耐風・耐火性能を高めることで、保険料の割引を受けられる場合があり。
- 代替の保険選択肢を検討:民間保険以外に、州が提供する保険プログラムを利用する選択肢。
- 投資先の見直し:投資用不動産を所有している場合、保険料の上昇リスクを考慮し、地域ごとのリスク評価を行うことが重要。
。。。
かくして、今後30年で住宅保険の保険料は大幅に上昇すると予測されています。
特にフロリダやカリフォルニアのような自然災害リスクの高い地域では、保険市場の歪みにより、一気に価格が高騰する可能性があります。
これにより、不動産市場にも影響が及び、投資判断や住宅購入の決断はより慎重に行うべきです。
率直に、住宅保険の未来は決して明るいものではありません。
けれども適切な知識と戦略を持つことで、リスクを抑えながら資産を守ることは可能なのです。
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