こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
2025年が始まって早々、アメリカの経済指標がいくつか発表されました。
今回のデータを見ると、消費やインフレ、雇用、建設といった分野でそれぞれ異なる動きが見られます。
市場の反応もさまざまで、これからの展開をどう見るかが重要になりそうです。
詳細を見ていきましょう。
1月の小売売上高は前月比-0.9%と予想を大きく下回る結果となりました。
これは約2年ぶりの大幅な減少です。
一方で、12月の売上高は0.4%増から0.7%増へと上方修正され、9月から12月にかけて毎月0.6%以上の伸びを記録していました。
この動きをどう見るか。
12月までの好調な消費が「前倒し需要」だったとすれば、1月の落ち込みは自然な調整の可能性があります。
年末のホリデーシーズンに消費が集中し、その反動で1月に財布の紐が引き締まるのはよくある話です。
けれども、もし今後も消費が低迷し続けるなら、景気減速の兆候として警戒する必要があるのではないでしょうか。
個人的には、短期的な調整と見るのが妥当ではないかと思います。
というのも、1月の小売売上高は前年比で4.2%増と依然として力強い成長を見せています。
加えて雇用環境が大きく悪化していないことも考えると、消費の基盤はまだしっかりしている可能性が高いです。
インフレ再燃の兆し? それともピークアウト?
1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.0%、前月比+0.5%と、市場予想を上回る伸びを記録しました。
特に住居費(+4.4%)や自動車保険(+12%)の上昇が目立ちます。
一方で、卸売物価指数(PPI)はやや落ち着いた動きを見せており、インフレ圧力がすぐに加速するわけではなさそうです。
今後のポイントは、米連邦準備制度(FRB)がこれをどう受け止めるかです。
市場では2024年末から「2025年には利下げが来る」と期待が高まっていましたが、今回のCPIの結果を見る限り、FRBが急いで利下げに動く可能性は低そうです。
むしろ、年後半まで様子を見ながら慎重に判断するのではないかと思います。
個人的には住宅関連コストの上昇が続く限り、インフレの鈍化は簡単ではないと見ていますが、特に、住宅価格の上昇が続く中で、賃貸市場の動向は今後も要注意です。
中小企業の楽観度が低下、不確実性の高まり
そして1月のNFIB中小企業楽観指数は102.8と、前月比-2.2ポイントの下落となりました。
特に経済の先行きに対する期待感が低下し、不確実性指数が急上昇(+14ポイント)した点が注目されます。
これは、最近の関税政策や規制強化への懸念が影響していると考えられます。
中小企業にとって政府の政策変更は事業計画に大きな影響を与えるため、慎重なスタンスに転じるのも無理はありません。
とはいえ、楽観指数は依然として51年平均(98)を上回っており、極端な悲観論に傾いているわけではないのも事実です。
これが実体経済にどう影響するかを見極めるには、今後の消費動向や企業の採用意欲をチェックする必要があります。
仮に採用が鈍化すれば、消費にも影響が及び、景気全体が冷え込むリスクが高まります。
雇用環境と家計の見通しは不安定
ニューヨーク連銀の調査によると、労働市場の見通しは依然として不透明です。
失業の可能性が高まっていると感じる人が増えた一方で、新たな仕事を見つける自信を持つ人も増加しました。
また1年後の家計支出見通しは4.4%増と、2021年以来の最低水準まで低下しています。
つまり、消費者の多くが「今後の家計は厳しくなる」と考え始めていることを示しているのです。
特に注目すべきは、
「今後12カ月で自分の財務状況が悪化する」
と答えた人の割合が21%に上昇したことです。
これは、金利高止まりやインフレの影響がじわじわと家計に負担を与え始めている証拠かもしれません。
住宅建設市場の今後
一方で不動産市場に目を向けると、建設支出は2024年通年で前年比+6.5%と、堅調な伸びを見せました。
特に単世帯住宅(Single Family)の建設は3カ月連続で増加し、1月も健全な推移が期待されます。
その一方で、多世帯住宅(Multifamily)の建設は前年比-10.5%と低迷が続いています。
このトレンドは今後も継続する可能性が高いです。
住宅ローン金利が高止まりする中、アメリカでは「住宅を購入するよりも借りる」という流れが強まっています。
これによりアパート建設が本来増えてもおかしくないのですが、金利負担や資材コストの高騰が新規プロジェクトの採算を圧迫しています。
そのため、多世帯住宅の建設は短期的には停滞が続くかもしれません。
。。。
まとめると、
・1月の小売売上高の落ち込みは、一時的な調整の可能性が高い
・インフレは予想以上の伸びを見せたが、すぐに加速するとは限らない
・中小企業の不確実性が高まり、景気の先行きに慎重な見方が増えている
・労働市場の見通しは不安定で、家計負担の増加を懸念する声が増加
・住宅市場は単世帯住宅が好調だが、多世帯住宅は引き続き低迷
全体的に見ると、経済の方向性はまだはっきりしていませんが、消費とインフレが今後どのように推移するかによって、FRBの政策や市場の動向が決まってくることになります。
特に不動産市場に関わる身として、住宅建設と住宅ローン金利の動向を引き続き注視していきましょう。
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