こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本日は不動産投資の視点から、最近話題となっている「トランプ政権のカナダ産木材への関税引き上げ」が住宅市場に与える影響について解説してみます。
2025年現在、アメリカが輸入している木材の約70%はカナダ産で占められています。
ところが最近、トランプ大統領がカナダ産木材に対し新たな関税を導入し、その合計関税率が約40%にまで上昇しました。
この関税増加によって木材価格が急上昇し、現在の価格はここ2年半で最も高い水準となっています。
具体的には、2025年初めの時点で木材先物価格は年初から既に14%以上も上昇しています。
なぜこのような状況になったのでしょうか。
トランプ大統領は国内の木材産業を保護・強化するため、カナダ産木材が市場に「ダンピング」(不当に安く販売)されていると判断し、追加の反ダンピング関税を導入しました。
そのため、これまで存在した反ダンピング関税14.5%に加え新たに25%の関税が追加され、総計で約40%となっています。
一方、こうした措置は住宅建設業者や消費者にとっては厳しいものです。
全米住宅建設業者協会(NAHB)の会長、カール・ハリス氏は、今回の関税引き上げに強い懸念を示唆。
「関税が引き上げられることで建設費が上昇し、新築住宅価格が上がり、住宅購入の負担が増大する」
とのこと。
実際、連邦準備制度理事会(FRB)が発表したベージュブック(全米経済調査報告書)でも、木材やその他建築材料の価格上昇への懸念が指摘されています。
特に
- リッチモンド
- セントルイス
- カンザスシティ
- サンフランシスコ
の各地域では住宅建設や投資活動において材料コスト上昇リスクを踏まえた契約交渉が行われており、金融機関も融資審査の際に材料費上昇リスクを重視し始めています。
そうすると、不動産投資家にとってこの状況はどのような影響を及ぼすのでしょうか?
まず最も直接的な影響は、「建築コストの上昇」による新築住宅価格の上昇です。
特に木材は住宅建築において重要な材料であるため、その価格が上がれば住宅価格もそれに伴って上昇します。
新築物件の価格が上がれば、投資家が得られる利回りが下がる可能性があります。
一方で、既存住宅やリノベーション物件を投資対象としている方には価格上昇が相対的に有利に働く場合もあります。
新築住宅が割高になり、消費者が比較的安価な既存住宅やリノベーション済み物件に注目し始めることで、これらの物件の需要が高まる可能性があるからです。
さらに今回の関税が長期化すればカナダ産木材への依存度を減らし、アメリカ国内の木材産業が活性化する可能性もあります。
とはいえ、アメリカ国内産業の生産量がすぐに追いつくわけではないため、短期的には木材価格の高騰が続くことが予想されます。
かくして、不動産投資を検討する際はこの木材価格の上昇が住宅市場に与える短期的・長期的な影響をしっかりと考慮し、適切な戦略を立てる必要がありそうです。
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