こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
今年の春の不動産市場は投資家にとって非常に重要な局面を迎えています。
2025年春、不動産市場には多くの住宅が新たに売りに出される兆候が見られる様子。
具体的には、2月の既存住宅販売数は昨年比17%増加し、3月の新規リスティング数も前年同月比で10%増えているのです。
こうした動きは、これまで住宅ローン金利が高騰したことで生じていた「ロックイン効果」(低金利時代に住宅を購入した人々が引っ越しを控える現象)が緩和されつつある証拠でもあります。
さらにオフィス勤務への回帰が進んでおり、都市部への移動需要が高まっています。
これにより市場にはより多くの選択肢が提供され、買い手側の交渉力が向上する可能性が出てきました。
その一方で売主にとっては競争が激しくなり、価格設定において柔軟な対応を求められるケースが増えるのではないでしょうか。
実際、今年3月には販売中の物件のうち17%以上が価格を引き下げており、これは2016年以来3月としては最も高い割合となっています。
けれども現在の経済状況を考えると、慎重になるべき要素も存在します。
住宅ローン金利は平均で6.65%となっており、これは1月から若干低下したとはいえ依然として高水準です。
さらに連邦準備制度理事会(FRB)は、今年後半までは金利の引き下げを見送る方針を示しており、金利はしばらくこの水準で推移すると予想されています。
また住宅価格自体も過去5年間で中央値が47%も上昇しており、購入へのハードルは高くなっています。
多くの専門家は、市場の変動が住宅ローン金利を下げる可能性があることを指摘しています。
これは、住宅ローン金利が主に10年物の米国債利回りに連動しているためであり、経済への懸念が高まれば金利が低下する可能性があるからです。
けれども同時にインフレを伴う政策や関税などの影響で、住宅ローン金利が高止まりする要因も存在しています。
こうした経済的な不透明感は住宅購入意欲を冷やしており、実際に契約中の住宅(Pending listings)の数は、3月に前年同月比で5.2%減少しています。
特に、雇用の安定性に不安を感じる人々は大きな頭金を必要とする住宅購入を避ける傾向があり、現在の高額な住宅市場においては慎重になっています。
また、以前は比較的安定していた住宅保険料やHOA費用が急激に高騰している地域もあり、購入への不安材料となっています。
さらに注目すべき大きな変化として、昨年の全米リアルター協会(NAR)との和解により、不動産エージェントの報酬体系にも重要な変更がありました。
これまでは売主が買い手側エージェントの手数料を負担するのが一般的でしたが、現在は交渉の原則が強調されています。
特に買い手は物件を見学する前にエージェントの報酬契約書に署名することが必須となり、これまで以上に手続きが複雑になっています。
これが理由で、自ら物件を見たい場合はオープンハウスを訪れるか、エージェントを介さず売主のエージェントと直接交渉するパターンも増えているようです。
結論として、この春の市場は「チャンス」と「リスク」が入り混じった状況と言えます。
価格調整や市場変動を冷静に見極めつつ、この時期をどう活用するか、慎重かつ積極的な戦略が求められそうです。
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