こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
多くの投資家が気になる「次の景気後退と不動産市場」について触れておきたいと思います。
不動産投資をしていると、常に「景気後退(Recession)」の可能性を頭の片隅に置いておく必要があります。
過去6回のアメリカの景気後退を振り返り、それぞれのケースで住宅価格がどのように動いたかを整理しました。
過去の景気後退は、大きく以下の3種類に分類できます。
- 金融引き締め型(Tightening Monetary Policy)
- バブル崩壊型(Bubble Pop)
- ショック型(Shock)
「金融引き締め型」の景気後退ではインフレ抑制のため金利が引き上げられ、不動産市場が最初に冷え込みます。
ただし金利が下がり始めると、真っ先に回復するのもまた不動産市場です。
つまり不動産は『First-in, First-out』の資産であると言えます。
1970年代~1980年代の不動産市場がこの典型例でした。
1973年のスタグフレーションでは住宅価格がインフレ調整後で約4%下落。
1980年の金利引き締め時は、住宅価格が約8%も下落しています。
住宅ローン金利は当時17%という今では想像できない水準でした。
そして次の「バブル崩壊型」の景気後退についてですが、2001年のドットコムバブル崩壊では不動産価格への影響は限定的でしたが、2008年の住宅バブル崩壊では住宅価格は史上最大規模の下落を記録しました。
特に2008年のケースではレバレッジを多用した過剰な投機が問題を深刻化させ、住宅市場は激しい調整を経験しました。
そして最後は「ショック型」の景気後退です。
これは戦争やパンデミックなど、突然の社会的混乱に起因します。
このタイプでは不動産は『安全資産(Safe Haven)』として認識され、価格が安定または上昇する傾向があります。
実際、2020年のコロナショック時には、住宅価格は過去最速の伸びを記録しました。
その一方でオフィスビル市場は深刻な調整を受けたため、不動産の「種類」によって影響が大きく異なりました。
ここで投資家が気になるのは「次の景気後退はどのタイプか?」ということです。
現状を見ると2022~2024年にかけての金融引き締めはまだ景気後退を招いていないものの、米国消費者信頼感指数(Consumer Confidence Index)は直近で急落し、トランプ氏による報復関税導入(Reciprocal Tariffs)発表をきっかけに株式市場が急落しています。
もし次の景気後退が「バブル崩壊型」だとしたら、現在最も疑わしいのは住宅市場よりもむしろ株式市場です。
現在の米国株式市場は、過去100年で3番目に高いCAPEレシオ(株価収益率)となっています。
株式市場が調整に入れば、不動産市場はむしろ相対的に安定する可能性があります。
その一方で次の景気後退が「金融引き締め型」なら、1970~80年代のように住宅価格の伸びは停滞、もしくは一時的に小幅下落する可能性があります。
ただ、金利が下がり始めると再び住宅市場が真っ先に回復するのではないでしょうか。
またインフレ率が高止まりしたまま経済が停滞する『スタグフレーション』が再来する可能性も考えられます。
このシナリオでは、住宅価格の調整が比較的長引くことになるかもしれません。
過去の事例をまとめると、インフレ調整後の住宅価格は
- 1973年スタグフレーション期:約4%の下落
- 1980年の金利引き締め期:約8%の下落
- 1990年の景気後退期:約6%の下落
- 2001年ドットコム崩壊:住宅価格はむしろ上昇
- 2008年住宅バブル崩壊:大幅下落
- 2020年コロナショック:住宅価格急上昇
という動きを見せています。
現在の状況を考えると、特に『株式市場の調整』『高止まりする金利』『持続的なインフレ(Sticky Inflation)』という要素が絡む「スタグフレーション型」が最も現実味があるかもしれません。
そこで不動産投資家にとって大切なことは、『レバレッジを控えめにし、キャッシュフローを重視しておくこと』です。
例えば3.5%という低頭金でのFHAローンを使うなら、その物件が自己資金なしで収支が成り立つことが必須条件です。
景気後退の形がどうであれ「耐える力」を備えておけば、不動産は長期的に見て確実にインフレ調整後の資産価値が上昇する資産です。
市場の動きを完全に読み切るのは不可能ですが、だからこそ、柔軟に対応できる投資戦略を心掛けていきたいものです。
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