こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
現在アメリカの住宅市場では、売主が買主に「売却時の譲歩(Seller Concessions)」を提供するケースが急増しています。
「売却時の譲歩」とは、売主が買主の購入費用を軽減するために修繕費用やクロージングコスト(Closing Costs)、住宅ローン金利の一時的な引き下げ(Mortgage Rate Buydown)などの費用を負担することです。
2025年第1四半期のデータによると、全米の住宅売却取引の44.4%で売主が譲歩を行っており、これは昨年の39.3%から大きく増加しています。
特にシアトルでは71%もの売主が譲歩を提供しており、昨年の36%から約2倍に増加しました。
この背景には住宅価格の高騰、住宅ローン金利の高止まり、経済の不確実性が影響しています。
特に初めて住宅を購入する買主にとって、譲歩は購入可能性を高める重要な交渉ポイントです。
「買主はかつて修繕費など細かい部分で譲歩を求めていたが、現在は住宅購入そのものを可能にするために譲歩を要求するようになっている」
という傾向が、全米のどの市場でも見られる傾向となっています。
また住宅市場における在庫が過去5年間で最も高い水準となり、売主間の競争が激しくなったことも譲歩増加の要因です。
この状況は特にシアトルやポートランドなど西海岸の都市で顕著、その一方でニューヨークやフロリダ州のマイアミ、テキサス州のサンアントニオでは譲歩率が減少しています。
フロリダやテキサスなど一部地域では市場の冷え込みが進行し、価格設定が当初から低めに行われているため、追加的な譲歩が不要になっている状況。
ただし、気になる点として、契約が締結寸前でキャンセルされるケースも増加しています。
2025年3月には、全米で13.4%もの住宅売買契約がキャンセルされました。
弊社が仲介に入る取引の場合、キャンセルのほとんどは
「融資審査を通過しなかった」
ことが原因ですが、高い金利やそれなりの頭金が必要な昨今、購入者の経済的な不安定性が住宅購入決定に与える影響を示しています。
そうすると、この市場動向を投資家としてどう捉えるべきでしょうか?
まず「売却時の譲歩」が多い市場では、物件取得時の実質的なコストを抑える絶好のチャンスがあると言えます。
特に買主が少ない現在は交渉力が強まり、優良物件をより有利な条件で購入できる可能性が高まっています。
ただし契約キャンセルのリスクも高まっているため、購入前の資金計画や市場分析を慎重に行う必要がありそうです。
不動産投資において、市場のトレンドを先読みして行動することが何よりも重要であり、現在の市場状況は慎重な投資家にとってはむしろ好機となる可能性があると思います。
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