こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産市場は中所得者層向け住宅市場に改善傾向ですが、やはり供給不足が課題となっています。
中所得者層が買える住宅の数はここ最近でわずかに増えましたが、それでもまだまだ不足しているのが現状。
いわゆる、「中所得パラドックス(Middle-income Paradox)」と呼ばれる現象です。
その意味合いについて、見ていきましょう。
最近発表されたアメリカ不動産協会(NAR)とRealtor.comの共同レポートによると、アメリカ全体の住宅供給量は1年前に比べて約20%増加したとのこと。
このこと自体は良いニュースです。
けれども実際には「中所得者が買える手頃な価格帯の住宅」は依然として圧倒的に不足しています。
中所得者とは、アメリカの平均的な収入である年収75,000ドル(約1,100万円)前後の人たちです。
具体的な数字で見てみましょう。
中所得者層が手の届く価格帯の住宅は、2024年3月には市場全体の20.8%でしたが、2025年3月には21.2%に増加しました。
一見すると改善していますが、2019年のパンデミック前には約49%あったので、まだその半分以下しか回復していません。
つまり、理想的な市場環境(均衡市場)と比べると約27%も不足している状態です。
これを数字で言うと、約41万戸の住宅が不足しています。
これがいわゆる「中所得パラドックス」と呼ばれるもので、中所得者が買える住宅は増えたけれども実際にはまだまだ買える住宅が足りていない、という矛盾した状況なのです。
他の所得層についても少し触れておきます。
● 上位中所得者層(年収約10万ドル)
購入可能な住宅は市場の約37%まで改善していますが、理想とされる市場と比較するとまだ36万戸以上不足しています。
● 低所得者層(年収5万ドル以下)
この層については状況がさらに深刻で、年収5万ドル(約750万円)の世帯が買える住宅は市場のわずか8.7%しかなく、むしろ前年より減少しました。
ここから分かるポイントは次のとおりです。
- 全体の住宅在庫は増えましたが、価格が手頃な物件の供給が追いついていない
- 特に中所得者向け住宅が最も不足しており、市場のギャップは非常に大きい
- 小型の住宅を増やすなどの工夫が必要
今後の市場はどのように変化していくのでしょうか?
最近のトレンドとして、小規模住宅(Smaller Homes)の建設が徐々に増えていることにも注目です。
これは非常に良い兆候で、特に都市部や中所得者が集中する地域でこうした手頃な価格帯の住宅が徐々に供給され始めています。
また政府や地域の取り組みとして、ダウンペイメント(頭金)を支援するプログラムや、融資の柔軟化、地域のゾーニング規制の緩和などが行われる話も出ています。
投資家としての視点で見ると、
- 中所得者向け住宅への投資は、安定した需要が見込める
- 地域によっては供給が追いついていないため、物件が完成すれば比較的早期に入居が決まりやすい傾向
- 特に供給不足が深刻なカリフォルニア州やハワイ州、マサチューセッツ州などの都市圏では、小型住宅プロジェクトへの投資機会
等のポイントは押さえておきましょう。
よりバランスの取れた市場を求める場合、アイオワ州やオハイオ州、インディアナ州、イリノイ州、ウェストバージニア州などが狙い目です。
まとめると、
● アメリカでは全体的な住宅供給量が増えつつあるが、中所得者が購入できる価格帯の住宅は依然不足。
● 小型住宅の増加や支援プログラムなどにより、中所得者層向け住宅の投資チャンスが今後広がる可能性。
かくして市場の動きを冷静に見極めつつ、需要が安定している中所得者層向けの住宅投資に積極的に取り組んでいきましょう。
不動産投資家としては、間違いなくここが住の供給どころです。
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