「最低賃金労働者が家賃を払うために必要な労働時間ランキング

こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

今日は、「最低賃金で働く人々が家賃を払うために必要な労働時間」について触れておきたいと思います。

最近の調査によると、最低賃金で働く人にとって家賃は単なる生活費の一部ではなく、もはや「もう一つのフルタイムジョブ」になっています。

たとえばフィラデルフィアでは、最低賃金7.25ドルで働く人が平均的な賃貸物件をルームメイトとシェアする場合、家賃をまかなうために週94時間の労働が必要とされます。

これは一日13時間以上を週7日続ける計算であり、住居を確保するための負担がいかに重いかが分かります。

けれどもこの現実は、ボストンのように家賃が高額な都市だけに限られていません。

比較的生活費が安いと思われがちなミルウォーキーやアトランタでも、同じように80時間以上働かなければ家賃をまかなえないという結果が出ているのです。

その背景には、地域ごとの最低賃金が据え置かれている一方で、賃貸価格だけが上昇しているという構造的な問題があります。

一方でシアトルやデンバーのように最低賃金が15ドルから20ドル台に設定されている都市では、家賃水準が高くても週40時間前後の労働で済むという結果。

つまり、家賃負担の重さを決めるのは単なる物件価格の高低ではなく「最低賃金と家賃のバランス」にあるのです。

ここで基準となるのは「30%ルール」です。

家賃は収入の3割以内に抑えるのが健全な水準だとされます。

けれども今回の調査結果では、多くの都市で最低賃金労働者がこの基準を大きく超えてしまっていることが証明されました。

たとえばダラスやオースティンでは週77時間、ナッシュビルやシャーロットでは週81時間、ラーレイやピッツバーグでも79時間が必要です。

これはフルタイム労働のほぼ2倍に近い数字、ということになります。

逆に、ミネアポリスやデトロイトのように最低賃金が比較的高い、または家賃が抑えられている都市では36〜40時間で収まります。

最低賃金と家賃のバランスこそが住宅問題の核心であり、これは都市経済にも大きな影響を与える要素なのです。

今後は全米の半数以上の大都市で最低賃金引き上げが予定されており、賃貸市場も供給過多によってやや軟化する見込みではあります。

ただし、それでも「30%ルール」に収まる水準にまで改善するのは容易ではないのではないでしょうか。

最後に、

• 家賃を払うために必要な労働時間が最も長い都市
• 家賃を払うために必要な労働時間が最も短い都市

の二つの切り口で最低賃金に対する必要労働時間を見ておきましょう。

政策と市場の両面からのアプローチが求められている昨今、米国民の生活は大きく二極化が加速していきそうです。

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家賃を払うために必要な労働時間が最も長い都市

都市	最低賃金（時給）	家賃中央値（0–2ベッド）	必要労働時間（ルームメイトあり）
Philadelphia, PA	$7.25	$1,771	94時間
Milwaukee, WI	$7.25	$1,662	88時間
Atlanta, GA	$7.25	$1,576	84時間
Charlotte, NC	$7.25	$1,519	81時間
Nashville, TN	$7.25	$1,531	81時間
Pittsburgh, PA	$7.25	$1,490	79時間
Raleigh, NC	$7.25	$1,498	79時間
Boston, MA	$15.00	$2,993	77時間
Austin, TX	$7.25	$1,460	77時間
Dallas, TX	$7.25	$1,458	77時間

家賃を払うために必要な労働時間が最も短い都市

都市	最低賃金（時給）	家賃中央値（0–2ベッド）	必要労働時間（ルームメイトあり）
Denver, CO	$18.81	$1,783	36時間
Minneapolis, MN	$15.97	$1,514	36時間
Seattle, WA	$20.76	$1,999	37時間
St. Louis, MO	$13.75	$1,347	38時間
Phoenix, AZ	$14.70	$1,491	39時間
Kansas City, MO	$13.75	$1,404	39時間
Portland, OR	$16.30	$1,693	40時間
Detroit, MI	$12.48	$1,297	40時間
Chicago, IL	$16.60	$1,785	41時間
Sacramento, CA	$16.50	$1,889	44時間