こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
今日は、Z世代の学生寮から生まれた「ラグジュアリー基準」が、社会人になってからの賃貸市場にどの程度影響を与えているかについて、見ていきましょう。
かつてのアメリカの学生寮といえば、寝袋と歯ブラシさえあれば十分というシンプルな生活が当たり前でした。
けれども今の大学生は、まるでブティックホテルのような空間を自分の部屋として整えるのがスタンダードになりつつあります。
この変化を象徴するのが、豪華なアメニティを備えた学生用アパートです。
プールにカバナ、カフェバー、ゴルフシミュレーター、映画ラウンジや専用自習室まで完備されている物件が、全米の大学近郊に次々と建設されています。
親が家賃を負担するケースも多く、利便性とライフスタイルを兼ね備えた住環境にはプレミアムな賃料が支払われています。
調査によると、成人した子どもの家賃をサポートしている親は50%以上にのぼるとのこと。
そのため学生時代に「リゾート型生活」を経験した若者が社会に出ると、普通の賃貸住宅に対しても「最低限では満足できない」という感覚を持つようになるものです。
一方で、全米の家賃相場はこの2年間で下落傾向にあります。
2025年7月には24か月連続の前年比下落を記録し、全米50大都市圏の平均募集家賃は1,712ドルとなりました。
けれども実際には2019年比で依然として19%も高く、ワンベッドルームの平均は1,590ドル、ツーベッドルームは1,898ドルと、賃金の伸びを大きく上回っています。
そうすると、学生時代に親に支えられて豪華な寮生活を送った世代が、社会人になって自分の財布で賃貸契約を結ぶときに、理想と現実のギャップを痛感するのです。
このギャップをさらに広げているのが「健康志向」と「SNS文化」です。
現在の学生寮では寝具や家具にも「有害物質を含まない」ことが求められ、空気清浄機や防カビ対策といった要素まで注目されています。
親にとっては、子どもが健康に学業に励むための投資でもあります。
またInstagramやTikTokといったSNSで部屋を公開する文化が広まり、部屋は「住む場所」であると同時に「自己表現の舞台」として機能しています。
誕生日パーティー、卒業祝い、日常の一コマまでもが撮影され、シェアされる時代において、住まいのデザイン性はますます重視されるのです。
こうした背景を踏まえると、今後の賃貸市場には新たな課題が出てきます。
すべての物件がルーフトッププールやゴルフシミュレーターを設置する必要はありません。
けれども空気の質を改善したり、共有スペースを工夫したり、手の届きやすい価格帯でスタイリッシュな仕上げを導入することは家主にとって求められる雰囲気は出てくるかもしれません。
そのポイントは「高級感」と「手ごろさ」のバランスです。
今のZ世代は「健康」「利便性」「デザイン性」を求めますが、同時に限られた予算内で選ばざるを得ません。
となると、スマートな設計やコミュニティを育む仕組みを持つ物件が今後の賃貸市場で競争力を発揮していのかもしれません。
そうであるとすれば、Z世代の「ラグジュアリー基準」を満たしつつも無理のない家賃設定を実現できる物件が、これからの賃貸市場の勝者となりそうです。
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