こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカに住んでいる、もしくは賃貸物件を所有されている方は「HOA(Homeowners Association=住宅所有者協会)」という言葉をよく耳にするかと思います。
共用エリアの管理や景観の維持などHOAには便利な面もありますが、その一方で「理不尽なルール」に悩まされるケースも少なくありません。
けれどもHOAが定めたルールすべてが絶対というわけではなく、州法や連邦法の観点から「無効=unenforceable」とされる規則もあります。
そこで今日は「HOAが強制できない10のルール」と、その対処法を見ていきましょう。
まず押さえておきたいのは、HOAは「法律の上に立つ存在ではない」ということです。
理事会の判断がどれほど強引に見えても、州法や連邦法と矛盾する場合はそのルールは法的効力を持ちません。
そこでもし不当なルールに直面した場合、「本当に強制力があるのか?」と冷静に確認することが大切です。
例を挙げて「強制できないルール」をいくつか見ていきましょう。
民事裁判の権利
例えば、HOAは住民が裁判を起こす権利を奪うことはできません。
理事会が一方的に「これは最終決定だから異議申し立てはできない」と主張しても、住民は裁判所に訴える道が残されています。
実際に庭の手入れをめぐってHOAと争い、裁判で勝訴した事例もあります。
また、HOAが関わっている訴訟については住民に開示する義務があります。
詳細まですべて知らせる必要はありませんが、最低限の情報は共有されなければなりません。
もし「理事会が何か隠しているのでは?」と感じたら、州法やCC&Rs(契約・規約集)を確認することが有効です。
差別の禁止
さらに重要なのが差別禁止です。
連邦の「Fair Housing Act(公正住宅法)」は、人種・宗教・家族構成などを理由にした差別を明確に禁止しています。
HOAが「子どもがいる家庭は制限する」といった規則を設けた場合、それは無効になります。
加えてカリフォルニア州など一部の州では性的指向や性自認を守る規定もあり、これもHOAの権限を超える部分です。
敷地への立ち入り
そして意外に多いのが「敷地への立ち入り」に関する問題です。
HOAが住民の許可なく勝手に自宅に入ることはできません。
例外として、緊急時や修理点検など正当な理由があり、かつ事前通知がある場合のみ許されます。
「突然、理事会の人が家に入っていた」という状況は基本的に違法です。
日常のルール
日常生活に直結する身近な例もあります。
例えば「洗濯物の外干し禁止」という規則。
現在、約19の州では「太陽光乾燥(solar drying)」の権利が法律で保護されており、この規則は効力を持ちません。
電気代節約や環境配慮の観点からも、住民の権利として守られているのです。
また同じく「衛星アンテナ禁止」も無効となります。
これは連邦通信委員会(FCC)のルールによって、テレビ受信の自由が保障されているからです。
この為、「景観を乱すから撤去しろ」とHOAに言われても法律的には拒否できます。
ネイティブプランツ
エコ意識の高まりから注目されるのが「ネイティブプランツ(在来植物)の庭づくり」です。
一部の州(テキサス、カリフォルニア、フロリダなど)では、HOAが在来植物を禁止することはできません。
この動きは持続可能な暮らしを後押しする州法の一環であり、自然と調和した庭づくりを希望する住民にとって大きな味方と言えます。
住民の声を聞く
そして忘れてはいけないのは「住民の声を届ける権利」です。
HOAのルールが不当だと感じたら、必ず正式な手続きを踏んで異議を申し立てましょう。
期限を守り、証拠を揃え、理事会の会合に出席することが大切です。
かつ同じ思いを抱えている近隣住民と協力すれば、選挙で理事を入れ替えることも可能です。
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とどのつまり、HOAのルールは万能ではありません。
「裁判を禁止する」「差別的な規定」「立ち入りの乱用」「洗濯物やアンテナの禁止」「在来植物の制限」などは、法律の観点から無効とされる場合が多いのです。
その一方でHOA側も住民の無知につけ込み、あたかも強制力があるかのように主張してくることがあります。
そこでHOAに振り回されないためには「法律とCC&Rsを確認する」「手続きを守って異議を申し立てる」「仲間を集めて声を上げる」ことが最も有効な武器です。
今現在HOAの管理下にある方は、一度は自分の住む州の法律とHOAの規約を一度読み返してみるとよいかもしれません。
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