こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
政府閉鎖が3週目に入り、アメリカ経済への影響がじわじわと広がっています。
連邦政府の一部機能が停止し、約90万人の公務員が自宅待機、さらに70万人が無給で勤務している状況です。
結果として住宅ローンの審査や公的住宅支援、税務処理などの業務が滞り、特に不動産市場に依存する州で深刻な影響が出ています。
今回、影響が最も大きいとされるのは
- フロリダ
- デラウェア
- アリゾナ
- ハワイ
- ネバダ
の5州です。
これらの州は経済全体の中で不動産が占める割合が非常に高く、「不動産が経済を動かす州」とも呼ばれています。
けれどもその強みがいま、政府閉鎖によって逆に弱点になりつつあるわけです。
たとえばフロリダでは、不動産関連の経済規模が3,814億ドルに達し、州全体の国内総生産(GSP)の約24%を占めています。
実際、ここから住宅ローンの発行や税務処理を担う機関の業務が停止することで、取引全体が一時的にストップしてしまう恐れがあるのです。
フロリダの住宅市場は全米における取引量の大きな部分を占めており、買い手の動きが少し鈍るだけでも、全米の販売件数や在庫数に目に見える影響が出てきます。
一方、ハワイも深刻です。
観光地としてのイメージが強いハワイですが、実は不動産が州経済の23%近くを占める重要産業です。
その市場規模は248億ドルにのぼり、州内の雇用や所得の多くを支えています。
けれども住宅ローンの申請が滞る今、購入予定者の多くが手続きを進められず、契約延期やキャンセルが増加しているとみられます。
さらに注目すべきは、ワシントンD.C.の状況です。
連邦政府機関が集中するD.C.では、全雇用の25%以上が政府関連職。
そのため給与の支払いが止まれば、家賃や住宅ローンの支払いに影響する世帯が急増します。
2023年には不動産業が181億ドル、GSPの10%を占めていましたが、長期化すれば住宅の売却や人口流出が加速する可能性があります。
このように、政府閉鎖の影響は単なる行政機能の停止にとどまりません。
不動産という地域経済の根幹を揺るがし、雇用・消費・移住など、社会全体に波及していくのです。
実際、農務省(USDA)はローン申請の受け付けを完全に停止し、住宅都市開発省(HUD)も大幅な人員削減を実施。
特にフェアハウジング(公平住宅)部門で多くの職員が解雇されたことで、住宅相談や地域開発支援の現場にも混乱が広がっています。
政府閉鎖が長引けば、住宅ローン金利の動向や不動産取引件数にさらなる悪影響を及ぼすのは避けられません。
買い手も売り手も、取引の見通しを立てにくくなり、フロリダやハワイのような観光・移住型市場では、心理的な冷え込みも広がると予想されます。
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かくも、アメリカ不動産は地域によって経済構造が大きく異なります。
その中で「不動産が経済の柱」となっている州ほど、今回のような政治的リスクの影響を強く受ける傾向があるのです。
政府閉鎖という政治の停滞が、住宅市場の停滞をも引き起こしている現実。
私たちが学ぶべきことは、どんなに強固に見える市場であっても、外部要因に左右されるリスクを常に考慮する必要があるという点です。
投資家も住宅購入者も、こうしたマクロリスクを念頭に、資金の流れと時期を慎重に見極めていくことが求められていると言えます。
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