こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
ここ数日のニュースから、カリフォルニア不動産市場に少しだけ明るい兆しが見えてきました。
9月は販売件数が回復し、州全体の中央値も2か月連続で上昇。
金利もここ3年で最も低い水準に近づき、買い手の関心を再び呼び戻す可能性があります。
その一方で中小企業の景況感はやや後退し、依然として経済全体の不透明さが残る状況です。
詳細をみていきましょう。
カリフォルニア住宅販売:9月に軒並み回復
9月のカリフォルニア州の住宅販売は、前月比・前年同月比ともに小幅な上昇を見せました。
カリフォルニア不動産協会(C.A.R.)によると、既存一戸建て住宅の販売件数は前年比6.6%増となり、5か月連続の減少傾向から反転しました。
販売件数は年間通算でもわずかに昨年を上回り、再びプラス圏に戻っています。
ただし全州で30万件の大台を下回る状況は36か月連続で続いており、依然として回復の道のりは長いと言えます。
契約中の売買取引も前年同月比で0.1%増加しており、10月も小幅な伸びが期待されるところ。
金利は9月中旬の12か月ぶりの低水準からやや反発したものの、依然として過去3年で最も低い水準付近となっており、年末にかけて販売は微増が続くと見られますが、年間トータルでは2024年とほぼ横ばいになる見込みです。
州全体の住宅価格中央値、2か月連続で上昇
カリフォルニア州全体の住宅価格中央値は7か月ぶりの低水準ながらも、前年比で2か月連続の上昇を記録しました。
9月の中央値は88万3,640ドルで、前月比1.7%の下落。
この減少幅は過去平均の1.8%とほぼ同じで、季節要因によるものと考えられます。
一方で、前年同月比では1.8%の上昇を維持。
特に高価格帯の住宅市場が全体を下支えしているようです。
カウンティ別に見ると、53郡中27郡が前年比プラス、24郡がマイナス。
つまり地域差は依然として大きいですが、全体的には価格の安定傾向が続いています。
現在住宅ローン金利が6%台前半で落ち着きを見せていることもあり、経済不安がやや和らげば、様子見を続けていた買い手が市場に戻ってくる可能性も考えられます。
市場の課題が続く中、建設業者の信頼感が上昇
住宅建設業者の信頼感も上向きました。
全米住宅建設業者協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴによる10月の住宅市場指数(HMI)は、前月から5ポイント上昇し「37」に到達。
これは4月以来の高水準であり、金利の低下と販売回復が追い風になったようです。
今後6か月の販売見通し指数は9ポイント上昇の「54」と、1月以来の高さを記録。
また、購入検討者の来場者数も増え、指数は「25」と半年ぶりの水準に戻っています。
課題としては、資材費などの供給サイドのコスト上昇、さらに政府閉鎖による経済不安は依然として建設業界の重荷です。
調査によれば全体の38%の建設会社が販売促進のために値下げを実施し、その平均値下げ幅は6%と、過去数か月より拡大しました。
それでもHMIの上昇はポジティブな兆候です。
今後6か月以内にFRBがさらなる利下げを行うとの見方が強まる中、住宅建設業者の信頼感は今後も回復基調をたどる可能性があります。
2か月連続の上昇後、中小企業の楽観指数が低下
その一方で、中小企業の景況感はやや悪化しました。
全米独立事業連盟(NFIB)の「小規模企業楽観指数」は、2か月連続で100を上回っていましたが、9月は「98.8」へと低下。
それでも52年間の平均値(98)よりは高く、依然として堅調な水準を保っています。
今回の低下には、10月初めの政府閉鎖への懸念が影響したと見られています。
不確実性指数は前月比7ポイント上昇の「100」と、過去51年間で4番目の高さに到達。
将来の売上増を予想する企業は減少し、販売増を見込む経営者の割合はネット8%へと4ポイント減少。
サプライチェーンやインフレ圧力も依然として課題で、31%の企業が「今後3か月以内に価格を引き上げる」と回答しているようです。
経済が好転すると考える企業の割合も8月の34%から23%に落ち込み、全体の慎重ムードを映し出しています。
住宅ローン金利、3年ぶりの低水準に接近
住宅ローン金利はここ3年で最も低い水準に近づいています。
10月初旬は政府閉鎖の影響もあり金利はほぼ横ばいで推移しましたが、その後、米中間の貿易摩擦が再燃したことで再び下落。
モーゲージ・ニュース・デイリーによると、30年固定金利は10月1日の6.37%から20日には6.22%へと低下しました。
安全資産への逃避で国債が買われ、金利が押し下げられた格好です。
もっとも、今後の米中交渉の進展次第では再び上昇する可能性もあります。
また今週金曜に発表される9月の消費者物価指数(CPI)の内容によっても、金利が上下に振れる展開が予想されます。
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かくして、9月から10月にかけての市場動向は「慎重な楽観」を示しているようです。
販売の回復、価格の安定、そして低金利。
これらが続けば、年末にかけて静かな反発が起きるのではないでしょうか。
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