こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
近年、「スターターホーム」と呼ばれる初めての持ち家が、ほとんどの州で100万ドルを超える価格となり、若い世代には遠い存在になってしまいました。
本来スターターホームは、資産形成への第一歩として設計されているものです。
けれども今では頭金だけで25万ドル、世帯年収は22万5千ドル、月々の住宅ローン支払いは6,400ドルが必要だといわれています。
この条件を満たす「物件初買いの家族」がどれほどいるでしょうか。
全米不動産協会の調査によれば、2024年の物件初買い者の割合はわずか24%。
これは過去最低水準です。
そんな中、注目を集めているのが「工場で造る住宅」。
いわゆる、モジュラーホームやマニュファクチャードホーム(製造住宅)です。
多くの人がこれらの住宅に対して抱くイメージは、いまだに「古いトレーラーハウス」かもしれません。
けれども1976年以降に建てられた現代の製造住宅は、まったく異なる存在です。
連邦住宅基準(HUD Code)や州ごとの建築基準をクリアし、設計・検査・融資のすべてが制度化されており、製造住宅(Manufactured Home)は鋼製の基礎フレームの上に組み立てられ、HUD基準に基づいて造られます。
土地を所有していれば不動産として登記可能ですが、土地を借りている場合は「チャテルローン(動産ローン)」での融資となります(この融資形態の違いは将来の資産価値にも影響します)。
そしてモジュラーホーム(Modular Home)は、建築コードが異なります。
州や地域の建築基準(IRCまたはIBC)に準拠し、現地で建てられる「在来工法の住宅」とほぼ同じ構造。
モジュラーホームは建築コードも品質も在来住宅と同じで、違うのは「どこで組み立てるか」という点だけです。
要するに現代の工場建築住宅は「質の低い代用品」ではなく、むしろ合理的に作られた住宅形態なのです。
資産価値の推移
興味深いのは、こうした住宅の資産価値の推移です。
2000年から2024年の間、在来住宅の価格は212.6%上昇しています。
対して製造住宅も211.8%上昇となり、ほぼ同じペースで価値を伸ばしています。
特に過去10年間では、製造住宅の方がむしろ上昇率が高い地域もあるのです。
ただし、これは「土地を所有している場合」に限られます。
土地を借りている場合地代の上昇や買い手層の制限により、資産価値の伸びは抑えられる傾向にあります。
アメリカでは2012年に36%だった土地の価値比率が、2023年には57%を超えました。
土地を持つか持たないかが、住宅の価値を大きく左右する時代になっているのです。
そうすると、建設コストの面ではどうでしょうか。
全米住宅建設業者協会によると、2024年の新築一戸建ての平均販売価格は約66万5千ドル。
そのうち64%が建築費で、1平方フィートあたり162ドルと過去最高水準です。
その一方でモジュラーや製造住宅はその半分、あるいはそれ以下のコストで建てられることが多いのです。
さらに建築期間も短縮されます。
工場での生産は現場建設よりも2~4倍早く、天候リスクも少なく、そして時間もコストも抑えられる。
もちろん、このトレンドが長く続くかは政策や金融環境にも左右されます。
特に重要なのは
・住宅ローンの条件
・ゾーニング(地域用途制限)の緩和
・土地所有の有無
の三点です。
ここで政府が製造・モジュラー住宅へのFHAやVAローンを広く認めれば、買い手層が拡大し、価格も安定します。
逆にチャテルローンしか使えない場合、転売が難しくなり、流動性が下がることになります。
また、地域のゾーニング規制も鍵を握ります。
もし各自治体がモジュラー住宅や小規模区画での設置を認める方向に動けば、市場の選択肢は一気に広がるはずです。
その一方で除外的なゾーニング(高級住宅地にしか建てられないなど)が続けば、成長は抑えられてしまいます。
。。。
かくして、これらの住宅は「新しいスターターホーム」として現実的な選択肢になりつつあります。
土地を所有し、適切な融資を受けることで、製造住宅も十分に資産を築ける可能性を秘めているのです。
かつモジュラーホームであれば、在来住宅と同等の評価・融資条件を得ながら、より早く、より安く「自分の家」を手にすることができます。
かつての「夢の持ち家」は工場の中から再び生まれ、「仮の家」ではなく次のステップへとつなぐ新しいスタート地点となりえるのです。
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