こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ経済のかじ取りが、ますます難しくなってきたようです。
10月末、連邦準備制度理事会(FRB)は今年2回目となる利下げを決定しました。
景気の冷え込みと雇用市場の鈍化に歯止めをかける狙いですが、その一方でインフレの再燃リスクがくすぶり続けています。
まさに、霧の中を慎重にハンドルを切るような状態です。
パウエル議長は記者会見で
「霧の中を運転しているときはどうしますか?スピードを落とすんです。」
との発言。
今回の0.25%の利下げによって、企業や個人の借入コストはやや下がる見込みです。
けれども同時に、物価上昇を再び刺激する可能性も否定できません。
FRBが掲げる「雇用の最大化と物価の安定」という二つの使命の両立が、いまほど難しい時期はないのかもしれません。
アメリカ経済は一見すると成長を続けています。
国内総生産(GDP)は年率4%近くの伸びを示し、株式市場も史上最高値を更新。
AI(人工知能)関連の投資ブームがこの上昇を牽引しています。
とくに半導体大手のNVIDIAが時価総額5兆ドルに達したニュースは象徴的です。
けれどもその裏側では、雇用の鈍化が深刻化しています。
失業率自体は4.3%と歴史的に見れば低い水準であるものの、再就職までの期間は平均6か月近くに伸びており、採用活動の停滞が続いています。
政府の一部閉鎖(シャットダウン)もこの状況をさらに悪化させ、統計データの更新さえ滞っている状態です。
インフレ率は9月時点で3%と、FRBの目標である2%を上回ったまま。
しかもトランプ大統領による関税政策が企業コストを押し上げており、価格上昇の要因が根強く残っています。
こうした状況のなか、FRBは「リスク管理的な利下げ」を選びました。
これは、景気後退の兆しを先取りして早めに手を打つ予防的な一手ともいえます。
けれどもパウエル議長自身が「12月に再び利下げするとは限らない」と明言したように、次の一手はまったく読めません。
FRB内部でも意見は割れており、「追加利下げ派」と「様子見派」が拮抗しています。
「経済成長が鈍化して労働市場に歩調を合わせるか、あるいは労働市場が回復して経済に追いつくか、どちらかが起こる」
との見解が主で、いまのアメリカ経済は「強い成長」と「弱い雇用」が同時に存在する奇妙な状態です。
AI関連投資が株価を押し上げている一方で、一般企業の採用は縮小。
景気の“熱と冷”が混在する異例のフェーズにあります。
もしFRBが過度に利下げを続ければ再びインフレが加速し、住宅ローンや生活コストが上昇するおそれがあります。
けれども利下げを控えすぎれば、企業活動や消費が冷え込み、雇用が一層悪化するかもしれません。
かくしてFRBは、まさに綱渡りの政策運営を迫られています。
住宅市場への影響
この流れから住宅市場への影響も無視できません。
FRBの金利が下がれば、一般的に住宅ローン金利も時間差で低下します。
ただし現在の市場ではインフレ懸念や国債市場の不安定さから、金利が思ったほど下がらない可能性もあります。
すなわち買い手にとっては「住宅ローン金利が下がることを前提に待つ」という戦略が、必ずしも得策とは限らないのです。
その一方で、不動産投資家にとっては新たなチャンスが生まれつつあります。
AIバブルの影で商業用不動産市場では調整が進み、優良物件が値下がりしている地域も見られます。
FRBの姿勢がより緩和的に転じれば資金調達コストが下がり、買い手優位の局面が再び訪れる可能性もあると思うのです。
パウエル議長いわく、
「リスクのない道は存在しない」
だからこそ私たち投資家や不動産オーナーはリスクの正体を見極めながら、次の波に備える必要があります。
今後の焦点は12月10日のFOMC(連邦公開市場委員会)です。
ここでの決定が来年の住宅ローン金利、市場の投資マインド、さらにはアメリカ経済全体の方向を決定づけることになります。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。