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非市域(unincorporated area)に家を買うという選択

非市域(unincorporated area)に家を買うという選択

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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

家を購入するとき、多くの人は「どの街に住むか」「通勤時間」「学校区」「税金」といった条件を考えます。

けれども意外と見落とされがちなのが

「その家が市の管轄内なのか、それとも郡(County)の管轄にあるのか」

という点です。

この「非市域(unincorporated area)」と呼ばれるエリアに家を買うと、ルールが少なく自由度が高い一方で、サービス面での負担や注意点も多くあります。

今日は、そんな「非市域(unincorporated area)に家を買う」という選択について、メリットとリスクを整理してみたいと思います。

非市域とは何か

まず、「unincorporated(非市域)」とは、市や町の境界線の外に位置する土地を意味します。

つまり市長や市議会、公共事業部門などの自治体ではなく、郡政府が直接管理しているエリアのことです。

たとえばテキサス州ハリス郡(Harris County)は全米で3番目に大きな郡で、約500万人が住んでいます。

そのうち約240万人はヒューストン市内に住んでいますが、残りの約200万人は市の外、つまり非市域に暮らしているのです。

その一方でニューヨーク州のキングス郡(ブルックリン)は全てが市の範囲内で、非市域の住民は存在しません。

この違いは、行政サービスに直接影響します。

非市域では道路整備や警察、消防、建築許可などを郡が担当しますが、資源が限られているため、都市部に比べてサービスが手薄になりがちです。

ゴミ収集や街灯の維持を民間業者に依頼するケースも珍しくありません。

非市域の姿は州によって大きく異なります。

たとえばカリフォルニア州では、メンローパークやベルモント、バーリンゲームなどの一部エリアが市境界の外にあり、住宅街の中に「郡管轄のポケット」が存在します。

アリゾナ州ではフェニックスやツーソンの郊外に「カウンティ・アイランド(County Island)」が点在し、ゴミ収集は完全に民間委託。

またテキサスやフロリダのように、広大な農地や郊外が非市域として残っている州もあります。

非市域のメリット:柔軟で自由な暮らし

最大の魅力は、何といっても「規制の少なさ」と「柔軟さ」です。

市に比べて郡の建築基準や許可プロセスは簡易的で、リフォームや増築を計画している人には嬉しい環境です。

こうした柔軟さは、生活の小さなストレスを減らしてくれます。

また非市域の住宅は、区画が広く、歩道やフェンスなどの制約が少ないため、よりプライベートで個性的な住環境を作りやすいのも特徴です。

カリフォルニア州メンローパークにある住宅などは、市外の静かな住宅地にありながら、スタンフォード大学やショッピングセンター、ゴルフ場にも近く、都市の利便性と郊外の静けさを両立しています。

道路に歩道がないのが非市域らしい点ですが、それ以外は市内とほとんど変わらない暮らしが可能です。

非市域のデメリット:サービスと費用の不確実性

けれども、自由には責任が伴います。

非市域では、市が提供する上下水道・ゴミ収集・道路整備などを自分で契約する必要があるのです。

アリゾナ州フェニックス郊外に住むある住宅の場合、ゴミ収集を民間業者に依頼していましたが月額料金が76ドルから3年間で202ドルに跳ね上がりました。

契約を解除しようとしたところ、自動更新条項により1,200ドルの違約金が発生。

このように競争のない地域では民間業者の料金が高止まりしやすく、住民の負担が増えることがあります。

さらにインターネットや携帯電波が不安定だったり、除雪や道路補修が後回しにされるケースもあります。

郊外や農村部では、消防や救急の到着時間が都市部の2倍になることもあるという報告もある程です。

けれどもカリフォルニア州のメンローパークのような地域では、サービスの質に大きな差がないことも多く、一概には言えません。

非市域なら税金が安い。

そんなイメージを持つ人もいますが、実際は必ずしもそうではありません。

確かに市税がかからない分課税対象は少なくなりますが、郡や州、学区の税金は引き続き支払う必要があります。

また市税がない代わりに、ゴミ収集や消防のための「特別区(Special District)」に別途負担金を支払うケースもあります。

さらに郡が広範囲のインフラを支えるため、非市域の方が税率が高くなることもあります。

結局のところ、「税金で得をする」よりも「サービス契約や維持費で差が出る」と考えた方が現実的です。

そこでもし非市域の物件を検討しているなら、次の点を必ず確認するとよいと思います。

・サービス契約を精査する
 ゴミ・上下水・道路維持を民間業者が担う場合、料金改定や自動更新条項を確認。

・緊急対応の体制を確認する
 消防・救急・警察の担当機関と平均到着時間を調べる。

・建築・用途制限を確認する
 郡によってはADU(付属住居)の建築やリフォームが容易な場合もあるが、申請窓口を事前に確認。

・特別区や非公式な負担金の有無を確認する
 HOAがなくても、地域維持のための協定や負担金が存在することがある。

。。。

かくして、自分の暮らしを自分で設計したい人にとって「非市域(unincorporated area)」の家は理想的な選択かもしれません。

投資面でいえば、

「市税がかからないために固定資産税が安い」

というのは事実です。

けれどもそこでは自治体に頼らず、自らが小さな「管理者」として暮らしを守る覚悟が必要です。

「非市域(unincorporated area)」の暮らしとは、自由と責任を引き換えに生活(もしくは投資活動)を行う場といえます。

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