こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
全米リアルター協会(NAR)が発表した最新レポートによると、初めて住宅を購入した人の割合がわずか21%と、過去最低を記録したようです。
かつて「住宅購入=アメリカンドリーム」
と言われた時代から、確実に時代は変わりつつあります。
しかも初回購入者の平均年齢は40歳で、これは史上最高齢です。
かつて30代前半で家を買い始めた世代が、いまや10年遅れてようやく住宅市場に入ってきているということになります。
そしてその背景には深刻な現実があります。
手頃な住宅在庫の不足こそが、初回購入者の減少を引き起こしているのです。
2007年のリーマンショック前と比べて、初回購入者の割合はなんと半減。
つまり若い世代は「家を買う力」そのものを失ってきていることになります。
その一方で、すでに住宅資産を持っている人々は高額の頭金を入れたり、現金で購入したりしています。
ここ最近繰り返しお伝えしていますが、富の分断が不動産市場でも鮮明に表れているのです。
たとえば、初回購入者が準備できる頭金の中央値は10%。
これは1989年以来の高水準です。
自己資金のほか401(k)や株式などの資産を取り崩したり、家族や友人からの援助を受けるケースも増えています。
それに対して、購入リピーターの平均年齢は62歳。
頭金は23%、そして30%が現金で購入しています。
このデータだけでも、住宅市場の構造的な変化が見えてくるというものです。
かつては30代で家を買い、子育てをしながら住宅ローンを返済していくのが典型的なライフプランでした。
しかし今や、そのスタートラインが10年後ろ倒しになっていることになります。
結果として、資産形成にも影響が及びます。
住宅購入を40歳まで遅らせると、30歳で買った場合に比べて約15万ドルの資産を失う資産になるからです。
住宅価格が高止まりしローン金利も高水準で推移している中では、当然のことかもしれません。
とはいえ、これは単なる買えない人の問題でもなく、米国社会全体が将来的な資産格差を拡大させる危険信号でもあるのです。
そうすると、どうすればこの問題を改善できるのでしょうか。
興味深いのは、日本でも同様の課題が進行しています。
若者が都市部で住宅を購入できず、親世代の家に戻るケースが増えていると聞きます。
アメリカでもマルチジェネレーション(多世代同居)住宅が注目されており、購入者の14%がこのタイプを選んでいるのです。
その理由としては「親の介護(41%)」「コスト削減(29%)」「成人した子どもの帰宅(27%)」などが挙げられます。
高齢化、教育費、インフレ。
これらの社会要因が絡み合い、家族の形や住宅のあり方を変えているわけです。
さらに、売主側の動きにも変化が見られます。
家に住み続ける期間は中央値で11年と過去最長。
つまり人々が家を手放さなくなっており、この「売り控え」が在庫不足をさらに深刻化させています。
ちなみに、そんな厳しい市場環境の中でもリアルター(不動産エージェント)の存在感はむしろ高まっています。
購入者の88%、売却者の91%がエージェントを利用しており、これは記録上最高水準です。
この点は交渉や契約の知識だけでなく、購入者や売却者の心理的サポートまで求められる時代。
それは正にAIやオンライン情報が発達しても、人間の専門家の価値が失われないことの証。
。。。
かくして、アメリカの住宅市場は「買える人と買えない人」に完全に二極化しています。
けれどもその中で依然として「家を持つ」という夢は強く生き続けているわけで、これからの課題はいかにしてその夢を次の世代にも届けられるかです。
アメリカの不動産市場はここから、そのための政策と仕組みづくりが問われてくることになるかと思います。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。